2017年に創立した日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)は、2019年度から日本酒の輸出量増加を狙い、日本酒と魚介類の相性を訴求するために、ペアリングを推奨するプロモーション活動を欧米、中国、香港で行っている。2022年度はアメリカのニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの3都市でプロモーションを実施し、現地系の飲食店計30店のレストランで日本酒のペアリング体験を提供した。
今回は同団体の各種プロモーション事業を率い、日本酒の普及にも注力するに中山勇COOに、2022年の取り組みの特徴や成果、今後の見通しを聞いた。
――これまで行ってきた取り組みについて
まず予算や人員が限られている中で、注力する品目には、訴求点があり、十分な量が確保でき、サプライチェーンが整備されている品目を選ばなければいけない。アメリカにおける日本酒はそのポイント全てをクリアしており、2018年から取り組み続けている。
これまで5年間、アメリカで日本酒の魅力を訴求してきたが、軸は日本酒が持つ魚介類の臭みをマスキングする特徴および、旨みを増幅させる「機能的価値」を押し出してきた。プロモーションを実施する店も日本料理店ではなく、現地で長く親しまれているシーフードレストラン。白ワインに代わる選択肢としてプロモーションを推し進めてきた。
――2022年の取り組みは
従来から訴求してきた機能的価値に加えて、情緒的価値も併せて訴えた。どうやって造られたのか、だれが造ったのか。日本文化とどうつながっていくのか。といったものだ。商品の背後にあるストーリーを知ってもらうことで、日本酒に対する興味・関心を高める仕立てとした。
こうしたきっかけとしては、これまでの取り組みでは「情報の深みが足りなかった」という反省点も踏まえてのこと。また、発信者および、実施する店舗も発信力や影響力がより強い方や店を選定した。これまでに比べるとより深い取り組みとなった。
――具体的な施策は
ニューヨークのマンハッタンやカリフォルニアのサンフランシスコ・ロサンゼルスの計30店の飲食店で、「日本酒と非和食魚介料理の相性の良さを、日本酒が持つ機能的・情緒的価値と共に」を訴えるプロモーションを実施した。中にはミシュラン星付きの店も入っている。
料理としてはあっさりとした前菜のようなメニューと共に楽しんでもらった。アメリカではよく食べられる生ガキや白身魚のムニエル、セビーチェ(中南米風マリネ)などだ。また、魚卵との相性は現地のシェフが高く評価していた。
実施店舗には日本酒をサーブする温度や保管方法、お客様に提供する際のハンドリングのほか、ソムリエには料理と日本酒のペアリングを学んでもらい、日本酒をおいしく楽しめる仕組みづくりに努めた。また、キャンペーンを実施した後も継続的に日本酒を取り扱っており、従来の施策よりも長期的な関係性の構築にも成功した。
ライバルとして白ワインを意識した取り組みだったが、体験してもらった方の評価は高く、SNSでは「最高の組み合わせ」「オイスターの最高の食べ方」「試してみたい」と好意的なコメントが集まった。5年間の取り組みは間違いなかったと再認識し、今後もコンセプトは変えずに取り組みを進めていく。
――東海岸と西海岸での違いはあるか
今回は東海岸ではニューヨーク、西海岸ではカリフォルニアで実施したが、西も東も提供する食事に大きく違いはなく、アメリカで広く親しまれているシーフードとの組み合わせを楽しんでもらった。
〈酒類飲料日報2023年4月24日付〉