相続人の相続分について、確認します。
①配偶者と子どもの場合1/2:1/2
②配偶者と直系尊属の場合2/3:1/3
③配偶者と兄弟姉妹の場合3/4:1/4
たとえ子どもや兄弟姉妹が複数いたとしても相続分に変わりはなく、その頭数に相続分を掛け合わせたものが法定相続分となります。
ここでは、配偶者と子の相続分について見ていきます。
配偶者と子
被相続人が死亡し遺産が1,000万円とします。
子どもが2人の場合、法定相続分は配偶者1/2、子どもは1/2×2で各1/4となります。
配偶者:1,000万×1/2=500万
子:1,000万×1/4=250万
子:1,000万×1/4=250万
原則としてこのような形で相続分を計算していきます。
この考え方は他の兄弟姉妹が相続するような場合も同じです。
問題となるケース
子とは配偶者との間に産まれた子のことです。
この子のことを実子と言います。
それでは養子はどうなるのでしょうか?養子は大きくわけて普通養子と特別養子に分かれますので、順に見ていきます。
まず、普通養子とは、養親との間で養子縁組をした子のことを言います。
戸籍課に養子縁組届を提出することによって養親子関係が成立します。
相続税の課税負担を減らすためによく利用されます。
特別養子縁組との違いは実の親との関係が消滅しない点です。
言い換えれば、普通養子は実親の相続も養親の相続も二重に相続できるのです。相続分は実子と同じく1/2です。
次に特別養子縁組について見ていきます。
特別養子縁組は6歳までの子どもを養子とする場合で、父母の監護が著しく困難等の事情がある場合に家庭裁判所が認めたものです。
この場合、養子となる子と実親との親族関係は終了します。
そのため、実親の相続権はありません。養親に対する相続権はあり、こちらは実子と同じく1/2です。
なお、特別養子縁組の子の年齢は6歳から15歳に引き上げられる法案が成立しています。
施行は公布されてから1年後を予定しています。
非嫡出子とは
それでは非嫡出子はどうなるのでしょうか?非嫡出子とは婚姻関係にない男女の間に産まれた子のことを指します。
法律用語ではありませんが、私生児と呼ばれることもあります。
従来、非嫡出子は嫡出子の相続分の1/2とされてきました。
先ほどの配偶者と子の関係で見ていくと、配偶者と子(嫡出子)と子(非嫡出子)の場合、
配偶者:1/2
子:(嫡出子)2/6
子:(非嫡出子)1/6
という形になります。
ところが、2013年の最高裁判所の判決でこの相続分を定めた民法の規定を違憲とする判決が出ました。
2013年以前にも非嫡出子の法定相続分についてはたびたび違憲の疑いがあると法廷で争われてきたのですが、裁判所は法律婚を重視するなどの立場からこの区別を合憲としてきました。
しかし、嫡出子と非嫡出子の区別は個人の努力では到底克服できるものではないこと、及び個人を尊重する立場から相続分の区別を違憲とし、この問題に一つの区切りをつけたのです。
やや長いですが、以下に判例を列挙します。
なお、元号ではなく西暦に変更を加えています。
<2012年の判例>
本件規定(民法第900条第4号但書)の合理性に関連する以上のような種々の事柄の変遷等は、そのなかのいずれか一つを捉えて、本件規定による法定相続分の区別を不合理とすべき決定的な理由とし得るものではない。
しかし、昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、
嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族の共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。
そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、
子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
以上を総合すれば、遅くともAの相続が開始した2001年(平成13年)7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。
したがって、本件規定は、遅くとも2001年(平成13年)7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。
判例の影響
この判決は2001年7月当時において、上記規定は違憲であったと述べています。
そうすると、その時点から後になされた遺産分割等は無効になるのでしょうか?そうなれば社会的に大きな混乱が起きかねないのですが、既になされた遺産分割等は有効であると判示しています。
整理すると、
2001年7月以前
→影響しない
2001年7月以降遺産分割は成立している
→確定した法律関係に影響を及ぼさない
2001年7月以降遺産分割は成立していない
→非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分と同じとしなければならない
という形になります。
異父母の兄弟姉妹の相続分
民法では父母の片方のみを同じくする兄弟姉妹についても、相続分を別異に扱っています。
先ほどの最高裁判所の判例で違憲判決が出て、民法の相続分について子どもの相続分は同等に扱う規定に改正がされましたが、異父母の兄弟姉妹の相続分については、従来通り父母双方が同じ兄弟姉妹の相続分の1/2とする扱いに変更はありません。
おわりに
これまで、主に配偶者と子の相続分について見てきました。
法改正でどこが変わり、どこが変わっていないのかを押さえ、起こりうる相続トラブルへの対処法を検討していただけたらと思います。(提供:ベンチャーサポート法律事務所)