人生を豊かにしたい人のための日本酒
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(本記事は、近藤 淳子氏(著)、葉石 かおり氏(監修)の著書『人生を豊かにしたい人のための日本酒』=マイナビ出版、2022年9月26日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ショートケーキのような砂糖の甘さ、スパイスカレーのような香辛料の辛さなど一般的な甘辛のイメージと、日本酒の甘辛はやや違っています。

日本酒の甘口は、華やかな香りやお米のふくよかな旨味を英語でシンプルに表現すれば「SWEET」。辛口は、スッキリとのど越しが良く、軽やかな「DRY」と言えます。「飛露喜(ひろき)」で確固たる地位を築いている廣木酒造本店(福島県)の蔵元杜氏、廣木健司さんに、甘辛について解説していただきました。

「例えば、舌触り(テクスチャー)だけで言うと、日本酒度はマイナスに向かい、甘口になるほどトロリとした舌触りになり、プラスの数値が高くなり、辛口になるほどサラリとなるイメージをもっています。ただ、甘辛の定義は日本酒業界内でもいろいろな意見があり、いまだに話が尽きないテーマです。実際に人が舌で感じる甘辛は、温度や酸度などにも影響を受けるので、日本酒度はあくまで一つの目安です」

なぜ、一つの目安でしかない日本酒度が採用されているのかについて廣木さんは、「日本酒度は、日本酒に比重計を入れるだけで測定できます。計測技術の乏しかった昔は、最も簡単で効率的に発酵具合を知る測定方法だったはず。それが全国に広がり、いまだに重宝されているのではないでしょうか」と推測。

日本酒度が使用され続ける意義について、改めて考えさせられます。

ちなみに「甘辛は、酒屋にとって永遠のテーマ。『辛口をください』とオーダーされるお客様が圧倒的に多いです」とおっしゃるのは、望月商店(神奈川県)の望月太郎社長です。

日本酒を販売する際には、まず、お客様の好みを聞き、甘辛のイメージを掘り下げるという望月社長。次に日本酒の場合はキリッとしたのが辛口、米の旨味があるのが甘口などの説明を加えていくのだとか。さらに自分用、プレゼント用、年代、普段飲んでいる酒類、どんなシチュエーションで飲むのかなども伺うそうです。

最後に望月社長は「嗜好品ゆえに答えは一つではないのですが、甘辛から日本酒の好みを見つけていただくのも面白いと思います」と締めくくってくださいました。

日本酒度だけでは測れない、甘辛の奥深さを知るきっかけになりましたら幸いです。

人生を豊かにしたい人のための日本酒
執筆 近藤淳子(こんどう・じゅんこ)
一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション副理事長・マスター講師。
TBS系列北陸放送のアナウンサーを経て、現在はホリプロアナウンス室所属のフリーアナウンサーとして、日本酒イベントの司会などに携わる。また、日本酒関連のセミナーの開催、コラム執筆・監修、飲食店のコンサルティングなど各方面で活躍。2009年から女性限定の日本酒会「ぽん女会」主宰。国際NGO、海外ラグジュアリーブランド、地方自治体との日本酒コラボレーション企画を行う。著書に『現役アナウンサーが教えるあなたが輝く話し方入門』(シンコーミュージック・エンタテイメント)ほか。
監修 葉石かおり(はいし・かおり)
酒ジャーナリスト、一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション理事長、エッセイスト。
酒と料理のペアリング、酒と健康を核に執筆、講演活動を行う。2015 年一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。
国内外で日本酒の伝道師・SAKE EXPERT を育成する。
『名医が教える飲酒の科学』(日経BP)がシリーズ累計17万部のベストセラーに。近著に『おうちで簡単 日本酒×おつまみ極上ペアリング』(マイナビ出版)がある。

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