丸紅は、食のカーボンフットプリント(CFP)の見える化が消費者の環境意識、消費行動の変容や企業の削減インセンティブになると考え、サステナブル食材のマーケティングとして、CFPのメニューへの掲示を実験的に実施している。
CFPは、ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス(GHG)の排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みだ。日本のGHG排出量に占める食の割合は約1割を占め、肉類、穀類、乳製品の順で高いと試算されている。
丸紅では2月27日~3月1日にかけて、本社の社員食堂「○cafe」で第3回「サステナブルフードDAYs」を開催し、大豆ミート使用のキーマカツカレーをはじめとしたメニューに炭素版カロリーを表示して提供した。第2回から炭素版カロリーの表示を開始したが、アンケートでは意義を感じた人が9割以上を占め、環境に価値を感じ、追加でコストを負担できるかという設問には、9割以上が払えると回答した。
丸紅は、2022年7月の第2回「サステナブルフードDAYs」を機に、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の技術提供を受け、社食メニューの一部にGHGを掲示し、消費行動や意識変容に及ぼす影響調査を共同で実施してきた。サステナブルフードのメニューの1つとして、業務提携しているDAIZ社の植物肉原料「ミラクルミート」を使用したメニューを毎回用意しているが、第3回はキーマカツカレーを提供した。
低環境負荷食品のマーケティング上、効果的なGHGの表示を検討したといい、第2回と同様にランチメニュー3品の炭素版カロリーを表示、本社付近の竹橋駅から東京駅までタクシーで何回行くのと同等かを示した。例えば、「ミラクルミートのキーマカツカレー」はメインのキーマカレーとカツの炭素版カロリー1.354kg-CO2e、約4回行くのと同じくらいといった具合だ。さらに今回は、一般的なスマートフォンを1年間使用した際の排出量(約60kg-CO2e)についても参考となる指標として併記した。
〈大豆ミートの新メニューを継続して開発中、GHG可視化アプリは無料なら8割が使いたい〉
「○cafe」は、1日に1,300~1,500人の社員が利用する。第2回実施後のアンケートでは、「また大豆ミートが食べたい」という声が多かったという。 食品原料部フードサイエンスチームの大田守浩氏は、「一番人気はから揚げだったため、現在開発を検討している」と明かす。
CFPの表示について食料第一本部食料第二本部戦略企画室企画課兼サステナビリティ推進部の藤本希担当課長は、「食品メニューでGHGを可視化し掲示するのは海外を含めてほとんど例がなく、この分野は進んでいない。現状では算定の段階からできておらず、消費者に情報として提供されていないこともあり、食の選択では価格、味、産地などが重視され、環境の要素は低い」と説明する。実際、第2回のアンケート結果では、食において優先する項目は、食味、量、価格、健康などと比べて低く、最下位となった。
丸紅・食料第一本部食料第二本部戦略企画室企画課兼サステナビリティ推進部の藤本希担当課長と、食品原料部フードサイエンスチームの大田守浩氏 一方で、炭素版カロリーを表示することについて意義を感じた人は9割以上を占めた。「あくまで社内のアンケートのため、実際に消費者の反応はもっと低くなる可能性が高い」(藤本担当課長)としながらも、環境にも価値を感じ、どのくらい追加コストを払えるかについては、「支払えない」という人はほぼいなかった。概ね「1%まで」から「10%まで」の範囲の回答に落ち着き、「5%まで」という回答が最も多く47%を占めた。意識の高い人は「15%以上支払える」と回答している。
GHG排出を可視化できるアプリも無料ならば7~8割が使いたいとしている。付いていると嬉しい機能は、健康管理機能が最も高かった。「ポイント獲得制度よりも健康機能管理だったのが興味深い」(藤本担当課長)。食品原料部の青野圭祐フードサイエンスチーム長は、「カロリーとGHGは相関する。健康と一緒に管理できるようにすれば面白いかもしれない」と語った。
〈大豆油糧日報2023年3月7日付〉