(本記事は、メンタリストDaiGo氏の著書『超トーク力 心を操る話し方の科学』=CCCメディアハウス、2021年4月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
苦手な相手にも動じない「空席エクササイズ」
対人関係のトラブル解決法にも使える
あなたにも、こんなふうに感じている相手がいませんか?
- 苦手意識があって、言いたいことがあっても言葉を飲み込んでしまう
- どうしてもこの人の前に出ると緊張してしまって、うまく話せない
職場の先輩や上司、取引先のキーマン、通っている病院の担当医、夫や妻の両親など、身近にいて苦手だけれど、会うのを避けることができない相手。そんな人たちとのコミュニケーションを改善するエクササイズを紹介します。
これはイギリスのヨーク大学の研究チームが推奨する対話エクササイズで「空席エクササイズ」と呼ばれるもの。苦手な相手とのコミュニケーション力を鍛えるために開発されたトレーニング法で、対人関係のトラブル解決法としては一定の評価を得ています。
空席エクササイズの5つのステップ
①椅子を2つ用意し、片方の椅子に腰かける
②もう一方の椅子に、苦手な人が座っているところをイメージする
③相手との会話がどのように展開していくかを想像する
④会話の展開があなたに不利だったり、うまくいかなかったりした場合、想像の中の声のトーンや話題の振り方などを変えて、何度か試してみる
⑤ 「これは、対話をうまく展開する役には立たないだろうな」と思われるコミュニケーション(怒りをぶちまけるなど)を使ったら、相手の反応はどうなるだろう?
と想像したあと、「これが現実の会話だったらどんな結果になるだろうか?」と自問してみる
①椅子を2つ用意し、片方の椅子に腰かける(1つは空席)
椅子を2つ用意して、片方に腰をかけます。
②もう一方の椅子に、苦手な人が座っているところをイメージする
苦手な人を思い浮かべ、目の前の空席に腰かけて、向かい合っていると想像します。もし想像するのが難しければ、写真を置いてもいいでしょう。
③相手との会話がどのように展開していくかを想像する
苦手な人と交わすであろう会話を想像します。
嫌味を言われるのか、口喧嘩になるのか、言いたい放題にされて黙り込むのか、奇跡的に盛り上がるのか。「このぶっきらぼうな物言いが、いやなんだよな」「常に上から目線でマウント取ってくるのが、イラつく」「今日はよく話を聞いてくれると思ったら、最後の最後に嫌味の倍返しか」など、どんな展開になるのかを具体的にイメージしていきましょう。
④ 会話の展開があなたに不利だったり、うまくいかなかったりした場合、想像の中の声のトーンや話題の振り方などを変えて、何度か試してみる
3つ目のステップで想像した会話の中で、何が、相手のぶっきらぼうな物言いや言いたい放題のマウント、口喧嘩のきっかけになったのかを振り返ります。また、会話がスムーズに運ぶ想像ができたのなら、現実と想像では何が違ったのかをチェックしましょう。
すると、「ああ、あそこで『自分はそうじゃないと思うんですけど』のひと言を挟んだのが口喧嘩の引き金になったんだ」「場を和ませようと『部長はどうですか?』とオープンクエッションを振ったから、とめどないマウントトークが始まったんだ」と、会話のターニングポイントが見えてきます。
一方、ぶっきらぼうな物言いは相手の特性で、こちらに非があるわけではないといったことにも気づけます。
その上で、うまくいきそうなパターンをいくつかシミュレーションしていきましょう。
あくまで空席を相手にした脳内での会話ですから、もし誰かが横で見ていたらかなりシュールな光景です。ただ、何度かシミュレーションを繰り返すうち、「これなら、いやな感じにならない」「このルートならマウントも取られない」といった会話の流れのストックが増えていきます。
⑤ 「これは、対話をうまく展開する役には立たないだろうな」と思われるコミュニケーション(怒りをぶちまけるなど)を使ったら、相手の反応はどうなるだろう?
と想像したあと、「これが現実の会話だったらどんな結果になるだろうか?」と自問してみる
最後のステップは、あえてうまくいかない確率が高そうなコミュニケーションを選んだ場合、どうなるかをシミュレーションします。
「そのぶっきらぼうな物言いは、どうなんですか?」「マウントはもういいです。感じ悪いですよ」「せっかくいい雰囲気だったのに、そのひと言でぶち壊しですね」など想像の中だけでもスッキリしそうですが、実際にこれをやると火に油を注ぐ結果になるでしょう。
でも、あえてそんな会話の展開もイメージしてみることで、やってはいけない会話の流れもストックされていきます。
つまり、苦手な人との会話を今よりもマシにするパターンと、自分はスッキリするけれどナシなパターンを切り分けていき、対応を整理していくのが空席エクササイズの狙い。
ちなみに、声のトーンに関しては想像の中だけではつかみづらいところがあると思いますので、声に出してシミュレーションするのもいいでしょう。これもまた、誰かに見られたら誤解を招きそうですが……。
空席エクササイズを繰り返すと、苦手な人との会話に慣れが生じ、苦手意識を薄れさせることができます。また、そもそも知らない人と会話するのが苦手……という人は、初対面の相手とのコミュニケーションを空席エクササイズしてみましょう。
どうして会話に詰まってしまうのか、どんな感情になっているのかをシミュレーションすることで、苦手な自分でも選べる会話のルートが見えてくるはずです。