(本記事は、長尾 一洋氏の著書『デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門』=KADOKAWA、2022年10月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
企業の発信を成功に導く4要素
「情報発信して、自社の魅力を知ってもらおう」
「情報発信でファンづくりをして、未来の顧客を開拓しよう」
と、ここまでの考え方を否定する人はいないと思います。お客様あっての企業ですから、見込み客を増やすための施策として、どんなことでもやってみる心意気もあるでしょう。
ところが実際に動き出してみると、多くの中小企業が壁に突き当たります。
「あれ? 情報発信って何をすればいいの?」
「わざわざ発信したいコンテンツなんてないよ……」
というわけです。ネタがない! アイデアも浮かばない! ……さて、そんなときはどうすればいいのでしょうか。
大丈夫です。発信するべきコンテンツは必ずあります。次に挙げるのが発信コンテンツ作成の基本4要素です。
①Advantage:論理的・客観的に示す優位性
②Uniqueness:独自性・差別化
③Character:営業パーソン本人の人柄・性格・人物像
④Process:製品・商品の生成過程・つくっていくストーリー
1つずつ、具体的な例を挙げておきましょう。
①Advantage:論理的・客観的に示す優位性
(例)競合他社の製品との比較
これはテレビショッピングや雑誌の広告などでも非常によく行われる手法です。
「これまでの掃除機に比べて、吸引力が30%アップ!」
「この青汁には一般的メーカーの平均の2倍のカテキンが入っています」
といった宣伝文句は日常茶飯事のレベルで見かけます。
営業担当者は、自社の商品やサービスの他者に対する優位性を説明する際に必ず根拠を示さなければなりません。自社の商品やサービスに明確な優位性があるなら、それをしっかり発信していきましょう。
②Uniqueness:独自性・差別化
(例)「世界初」「日本初」「これまでになかった新商品」
他に比較対象のない商品やサービスを自社で開発できた場合は、そのユニーク性をわかりやすく発信していきましょう。
ユニーク性の具体例として私がすぐに思い浮かべたのは、株式会社パイロットコーポレーションが2006年にヨーロッパで(日本では2007年)販売を開始した「消せるボールペン」フリクションシリーズです。2017年には20億本を突破する大ヒット商品となりました。
それまでに存在しないものであればあるほど、顧客の側にその商品を理解する素地がありません。丁寧な情報発信が必要になります。
③Character:営業パーソン本人の人柄・性格・人物像
(例)「私は○○が得意です」「○○の話にはとても詳しいです」
商品やサービスでの差別化が難しいときは、営業担当者自身の魅力や能力、得意なことを伝える努力をしましょう。
実際、リアルな営業においても、同じような商品でも「知識量や人柄が信用できるからあの人から買いたい」「説明が丁寧なあのお店で買いたい」と思わせる人はいます。発信においても、同様の現象を目指していきましょう。恥ずかしがらずに、自分のキャラを出して、自然体で発信できるといいと思います。
④Process:製品・商品の生成過程・つくっていくストーリー
(例)農家の米づくりストーリーを動画で見せる
商品やサービスが生まれるまでの過程(プロセス)を見せることによって、安心感や信頼、好意や共感から相手との関係を築いていくことを目指します。
たとえば、農家の米づくり。1年間の作業工程を撮影したものをダイジェストで5分程度の動画に編集します。米づくりの苦労や努力がわかるとともに、その土地の自然の魅力やつくり手の笑顔や汗などを伝えることができます。ものづくりの裏側に興味や関心を抱く人は多いので、コンテンツとして非常に優れたものになります。
飛びぬけた特徴や利点がなくても、その商品がつくられていくプロセスを開示できるということは、見られても大丈夫、堂々と見ていただく、という姿勢が現れます。
もし「とてもではないが顧客にプロセスを見せられない」ということなら、発信の前にまずはそこから改善していきましょう。
これら4つの観点から自社と照らし合わせれば、発信するべきコンテンツは見つかるはずです。従来の営業では、テレアポなどでのトーク術が必要でしたが、これからの営業に必要なのは、デジタル技術を活用した「発信力」です。
単にデジタルツールを導入すれば、営業DXができるわけではないので注意してください。