デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門
(画像=Tierney/stock.adobe.com)

(本記事は、長尾 一洋氏の著書『デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門』=KADOKAWA、2022年10月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

中小企業はルールベ ースAIを活用すべし

基本的に、中小企業のスケールでは、機械学習(コンピュータが自動で学習し、データの背景にあるルールやパターンを発見する方法)をするレベルの量のデータを持っていることはほとんどありません。そこで、ルールベースAIと呼ばれるものが登場します。

ルールベースAIとは、周知のビジネスルールや、人や企業が持っている暗黙のルール・定石・過去の正解事例などの知見を活用するものです。

ルールベースAIは、データが蓄積される前から、ルールに沿った対応や処理をしてくれます。そこにデータが蓄積されて、その企業や人に合った適切な処理を徐々に学習して微調整していってくれます。

ルールベースAIを活用すると、どのように業務が改善されるのか、具体例で確認しましょう。

[明日の訪問予定がある営業パーソンAさん]
スケジュールに訪問予定が入っている。

AIが訪問先企業のホームページを読み、前回訪問時以降に更新の履歴があった場合には前日に教えてくれる。

AIが訪問先と自社との過去の経緯・履歴を学習し、これまでの商談件数やクレーム件数、その内容などを教えてくれる。

さらに、必要に応じて見積書の提案や過去の見積データの提示なども行ってくれる。

これらは、もちろん人間が行うことも可能ですが、大変な労力と時間がかかります。顧客ごとに違う納品条件や請求書発行のタイミングなども、AIに一度覚えさせれば間違えることもありません。件数が増えると、人間の記憶力ではとても覚えきれませんし、勘違いや抜け漏れも生じてしまうことがあります。ですが、AIなら正確かつ確実で、安心です。

デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門
(画像=『デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門』より)

他にも、次のようなお知らせや警告をAIが行ってくれます。

「最近忙しすぎて顧客フォローができていない」
「明日はC社の創立記念日」
「D社からクレームが入っている」
「問い合わせがあったE社への回答が完了していない」

取り扱うデータ量が増えれば増えるほど、生身の人間には処理しきれなくなってミスが増えていきます。しかし、AIの場合は、どんどん賢くなり抜け漏れなくサポートをしてくれます。

会社業務においては、AIが「なんでもできる」「なんでも教えてくれる」必要はありません。自社の事情、業務内容、ルールを理解し、自社にとって適切かつ具体的な答えを出して、自動処理してくれることの方がずっと大切なのです。

AI導入を考えている中小企業は、ルールベースAIから検討するといいでしょう。

デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門
長尾 一洋
株式会社NIコンサルティング代表取締役。中小企業診断士。自社開発のITツール「可視化経営システム」は、9000社を超える企業に導入され、営業力強化や業務改革をローコストで実現している。また、2500年前から伝わる兵法『孫子』の知恵を現代企業の経営に活かす孫子兵法家としても活動。著書に『コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書』『営業の見える化』(KADOKAWA)、『AIに振り回される社長 したたかに使う社長』(日経BP)、『普通の人でも確実に成果が上がる営業の方法』(あさ出版)、他多数。

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