(本記事は、舛田 光洋氏の著書『一倉定の環境整備』=日本実業出版社、2022年1月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「清潔」の実践……いらないものを捨てる。いるものを残す
規律について述べたところで、一倉式環境整備の具体的な実践に入っていきましょう。
まず最初に行うのが「清潔 」です。
一倉先生による清潔の定義を引用しましょう。
清潔とは、きれいにすることではない。
一倉定の社長学第10巻『経営の思いがけないコツ』より
清掃することでもない。
それは、
①いらないものを捨てる
②いるものを捨てない
ということである。
清潔とは、きれいにすることでもなければ清掃することでもない、という否定から始まります。初めて読んだ時には驚いてしまうでしょう。
「清潔にする」ということは、「きれいにすることであったり、清掃することではないの?」と、そのように認識している人も多いと思います。
だからこそ、一倉先生は、「勘違いしちゃいけないよ。一倉式環境整備の『清潔』は、きれいにすることを目的にしているんじゃないんだ」と、初めに釘を刺しているわけです。
その上で、①いらないものを捨てる、②いるものを捨てない、と「清潔」を定義しているのです。
また、このいらないものを捨てて、いるものを捨てないということも、読んだ限りではアタリマエのことじゃないかと思うかもしれません。
しかし、このアタリマエのことができないわけです。
いらないとわかっていながら捨てられない、いるのに捨ててしまうのです。
このような状態について、面白いたとえをもとに語った文章が『経営の思いがけないコツ』に載っています。
そこでは、「捨てられないということは、人体にたとえると便秘の状態だ」というのです。逆にいるものを捨てたら、下痢であると。
これは不健康であるということですね。このような状態が続いていけば、人は病気になってしまいます。
さらに、
「会社や家庭、公共の場であっても、要らないものを捨てずにおいたら、不潔であり、邪魔であり、腐れば悪臭を放つ。同時に悪い『オーラ』が発射されて、不愉快だけでなく、健康にも悪く、人々をイライラさせる。百害あって一理なしである」
と、たたみかけています。
いらないものを「捨てる」ことの重要性を強く訴えています。
一倉先生は、一倉定の社長学第1巻『経営戦略』の中で、「社長の決定で最も難しいのは「捨て去る」という決定である」と言っています。その部分を引用してみましょう。
私のコンサルティングのうちで、最も難しく、最も急ぐ事こそ「捨て去る」ことを納得させることなのである。
一倉定の社長学第1巻『経営戦略』より
私は、社長の決定のうちで、何が最も大切で、何が最も難しいか、という問いに対して、躊躇(ちゅうちょ)することなく「捨て去る」ことであると答えるのである。
論より証拠、優秀会社は例外なく「捨てる名人」であり、破綻(はたん)した会社は例外なく「切捨音痴」である。
社長の決定の中で最も難しいのは「捨て去る」という決定だと言い切っていますね。
さらに、一倉先生のコンサルティングのうちで最も難しく、最も急ぐことこそ「捨て去る」ことを納得させることなのだ、という告白をさらりとしています。
その理由は、優秀な会社は例外なく「捨てる名人」であり、破綻した会社は例外なく「切り捨て音痴」だということです。
多くの赤字会社を救ってきた一倉社長学の神髄の一つがここに披露されています。
赤字会社を救済するためには、社長の間違った考え方を捨てさせる「説得」こそ、瀕死の会社を救済するために最も急がなくてはならないことなのです。
環境整備において毎日、捨てることの実践をしていく中で、リーダーとしての捨て名人としての道を歩んでいく必要があるのです。
2014年からハワイでの企業コンサルタントを中心に、セミナー講演活動をする。代表作に『そうじ力であなたが輝く』(総合法令出版、25万部)、『3日で運がよくなるそうじ力』(三笠書房)、『そうじ力で自分磨き』(日本実業出版社)などがある。『3日で運がよくなるそうじ力』は、 2006年の発刊以来版を重ね2017年に112万部。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます