(本記事は、福永 雅文氏の著書『ランチェスター戦略 〈圧倒的に勝つ〉経営』=日本実業出版社、2022年9月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
「健康を測る」から「健康をつくる」へ(タニタ)
日本で初めて家庭用の体重計を開発したタニタは、その商品名をヘルスメーターとしました。「体重を測る」機器なのだからウェイトメーターになるはずですが、そうしませんでした。体重を測ることを通じて「健康を測る」という趣旨でヘルスメーターと名づけたのです。
事業を物理的に定義するならウェイトメーターとなるが、機能的に定義するとヘルスメーターとなる。物理的定義は商品を志向したモノ売り発想です。機能的定義は顧客を志向したコト売り発想です。顧客の解決したいコトや実現したいコトといったニーズを自社の技術やサービスで解決・実現する。顧客への貢献です。ひいては社会への貢献です。
タニタはその後、世界で初めて家庭用の体脂肪計、さらには体組成計を発売します。もしも、タニタが自らを「健康を測る」ではなく「体重を測る」と定義していたら、体内脂肪ほかさまざまな健康指標を測る機器に事業領域は拡大しなかったかもしれません。事業の定義とは自社の事業や商品の成長の方向性を示すものです。
「健康を測る」タニタの社員が肥満では洒落にならないと考えた同社は社員食堂を1食500キロカロリーで満腹となるメニューにしたところ、これが話題となります。書籍が発行され、シリーズ累計420万部発行という爆発的なベストセラーとなります。この機に同社は「健康」をコンセプトとした食堂や食品や旅行のプロデュースを始めます。さらにインターネットを活用した健康管理システムも始めます。
同社は事業を「健康を測る」から「健康をつくる」に再定義したのです。体組成計単体でみると手ごわい大手ライバルメーカーがいますが、「健康をつくる」分野は独壇場です。事業を定義することはミートされづらい本質的な差別化になります。そして、社会をよりよくする理念に結びつきます。理念と戦略を橋渡しするもの、それが「事業の定義」です。
営業部門・拠点ごとに市場占有率を把握し、シェアと売上・利益を向上させる目標・戦略・行動計画を策定してPDCAを回す仕組みを導入。集客・営業の「武器」づくりのノウハウを提供する。
2005年よりNPOランチェスター協会で講座の内容とテキストの責任者を務め、後進のインストラクターの養成を行なう。同会常務理事。HIS創業者の澤田秀雄氏が立ち上げた起業家や政治家を育成する澤田経営道場の運営母体で理事を務めるほか、さいたま市の外郭団体や南アルプス市商工会などで若手社長の育成機関で講師を務める。歴史に学ぶリーダーシップ(戦略的思考と人間的魅力)についても著述や研修を行なう。
『小が大に勝つ逆転経営 社長のランチェスター戦略』(日本経営合理化協会)、『新版ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』『ランチェスター戦略「営業」大全』(以上、日本実業出版社)ほか著書多数。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます