ランチェスター戦略 〈圧倒的に勝つ〉経営
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(本記事は、福永 雅文氏の著書『ランチェスター戦略 〈圧倒的に勝つ〉経営』=日本実業出版社、2022年9月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ソフトバンク創業期の「弱者の戦略」と「強者の戦略」

ソフトバンクは1981年、パソコンソフトの卸売業から始まります。当時のパソコンソフトはマニア向けのニッチ市場でした。メーカーが直接、電器店に販売していたところ、市場の成長を確信していた孫正義(そんまさよし)社長は卸売業として市場参入します。他にない事業を立ち上げることは差別化であり、ニッチ分野への一点集中主義です

同社が卸売業として営業機能を果たしたこともあり、市場がニッチから大市場へと成長していきます。同社は物量を投入しメーカーと電器店の流通網を確立します。市場の成長に伴い、ソフトバンクは飛躍していきます。4年後にはメーカー500社、販売店7200店の全国の流通網を確立し、シェア50%のナンバー1になります。強者の総合主義に転じたことによる成果です。

翌82年にはパソコン雑誌の発行事業を立ち上げます。70年代後半からパソコン雑誌は存在していました。アスキーをはじめ10誌ほどの雑誌があるなか、ソフトバンクは後発参入します。

この市場ではソフトバンクは弱者の戦略をとります。当時のパソコンがメーカー別に互換性がなかったことに着目し、NECのパソコン専用のパソコン雑誌、シャープ用の雑誌を発行します。この一点集中主義が市場に支持されます。富士通、エプソン、東芝、ソニーの各社から専用雑誌をつくって欲しい旨の依頼がきます。2年後には6誌で月間50万部以上売り上げ、合計すると1位になります。一誌一誌は一点集中主義ですが、発行元全体としては総合主義でパソコン雑誌市場の強者になったのです。

■ 弱者の局地戦、強者の広域戦……地域に対する2つの考え

経営資源の少ない弱者が一点集中すべきことの第一に地域が挙げられます。地域を狭い範囲に集中することや、島や盆地のような他の地域と分断された市場規模の小さな地域を重視することを弱者の局地戦といいます。

経営資源の豊富な強者は地域も総合主義で考えればよいです。地域を限定せずに全国さらにはグローバルで事業を行なうことや、大都市圏や平野部のような市場規模の大きな地域を重視することを強者の広域戦といいます。

局地戦・広域戦については第4章の地域戦略で詳しく解説します。

ランチェスター戦略 〈圧倒的に勝つ〉経営
福永 雅文
ランチェスター戦略コンサルタント。戦国マーケティング株式会社代表取締役。1963年広島県呉市生まれ、86年関西大学社会学部卒。マーケティング関係の仕事を経て99年にコンサルタントとして独立。小が大に勝つ「弱者逆転」を使命とする。「特定市場(地域、顧客層、商品)でナンバー1になることが企業の永続的な繁栄のために最も有効である」との考えのもと、企業の戦略づくりの方法を指導する。
営業部門・拠点ごとに市場占有率を把握し、シェアと売上・利益を向上させる目標・戦略・行動計画を策定してPDCAを回す仕組みを導入。集客・営業の「武器」づくりのノウハウを提供する。

2005年よりNPOランチェスター協会で講座の内容とテキストの責任者を務め、後進のインストラクターの養成を行なう。同会常務理事。HIS創業者の澤田秀雄氏が立ち上げた起業家や政治家を育成する澤田経営道場の運営母体で理事を務めるほか、さいたま市の外郭団体や南アルプス市商工会などで若手社長の育成機関で講師を務める。歴史に学ぶリーダーシップ(戦略的思考と人間的魅力)についても著述や研修を行なう。
『小が大に勝つ逆転経営 社長のランチェスター戦略』(日本経営合理化協会)、『新版ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則』『ランチェスター戦略「営業」大全』(以上、日本実業出版社)ほか著書多数。

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