トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術
(画像=Kenishirotie/stock.adobe.com)

(本記事は、浅田 すぐる氏の著書『トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術』=日本実業出版社、2022年9月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

トヨタの問題解決は「紙1枚」にまとめられる

TBPの8つのSTEPの研修講師が先輩社員に代わってからは、具体的な事例を使ったケーススタディ方式で進行していきました。

ここでユニークだったのが、最終的なケースのまとめを、A3サイズの「紙1枚」にまとめて提出する課題です。

具体的なイメージとして、拙著『説明0秒! 一発OK! 驚異の「紙1枚!」プレゼン』(日本実業出版社)に掲載した図版を引用しておきます。

図版の下半分が、問題解決をテーマにしたA3資料です。

『トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術』より
(画像=『トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術』より)

各項目は左上から順番に、「問題の明確化」「現状把握」「目標の設定」「真因分析」「対策立案」「実施結果」「今後に向けて」となっています。

資料なのでより端的な表現になっていますが、これは「STEP6:実行」以外の7項目が、1枚のビジネス文書に反映されているのだと理解してください。

ただ、実際にはこの項目以外にも、たとえば「背景」といった要素が「問題の明確化」の前に登場したり、「今後に向けて」と書かれた7つ目の項目が削除されたり、1つ前の「実施結果」と合わせて1項目になったりもします。

実態としてはさまざまなバリエーションが存在しますので、この例が絶対不変のテンプレートというわけではありません。

問題解決を目的としたA3資料に関しては、『トヨタ式A3プロセスで仕事改革』(ジョン・シュック 著/成沢俊子 訳/日刊工業新聞社)といった参考文献もありますので、詳しく学びたい方は拙著も組み合わせながら、さらに認識を深めていってください。

「紙1枚」と「視える化」の関係性

今でこそこのような仕事をしていますが、当時の私の正直な印象としては、「これが有名な〝トヨタのA3〞か!」と感激はしつつも、「A3サイズの資料なんて学生時代は一度も見たことがなかったし、つくるのも大変だから、これは研修レポートのときしか使わない代物なんだろうな」と感じていました。

ところが、研修後に配属先で実際に働いてみると、その認識は一変しました。

たしかに、日常的な資料はさきほどの図版の上部にあるようなA4サイズが大半でしたし、研修で習ったTBPの8STEPに沿ったフォーマットをそのまま使っている人は、実際ほとんどいませんでした。

一方で、情報量が多いテーマについては、A4ではなくA3サイズの資料もたしかに存在していたのです。

たとえば、部の年度方針をグループごとに一覧でまとめたA3資料。

あるいは、グループ員のスケジュールを2カ月分記載した業務スケジュール。

さらには、部署の予算消化の状況をまとめた月次の管理表、等々。

他にも、多くの部署が関わるような大規模プロジェクトの企画書なども、A3で作成されているケースが多々ありました。

いずれのサイズにせよ、あるいはどんな規模の業務にせよ、その共通点は「紙1枚」による可視化にあります。

口頭ではなく、「見せて伝える」を根っことした視覚的なコミュニケーションスタイルが、たしかに文化として根づいていたのです。

トヨタには「カイゼン」と並んで有名な用語として「視える化」というキーワードがあります(これで「みえるか」と読みます)。

オフィスワーカーにとっての「視える化」とは、「紙1枚」資料を日々ビジュアル・エイドとして作成し、コミュニケーションを視覚化することだったのです。

トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術
浅田 すぐる
「1枚」ワークス株式会社代表取締役。「1枚」アカデミアプリンシパル。動画学習コミュニティ「イチラボ」主宰。作家・社会人教育のプロフェッショナル。名古屋市出身。旭丘高校、立命館大学卒。在学時はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学留学。トヨタ自動車入社後、海外営業部門に従事。同社の「紙1枚」仕事術を修得・実践。米国勤務などを経験したのち、グロービスへの転職を経て、独立。現在は社会人教育のフィールドで、ビジネスパーソンの学習を支援。
研修・講演・独自開講のスクール等、累計受講者数は10000名以上。大企業・中小企業問わず、登壇実績多数。2017年には海外中国・広州登壇、2018年にはルーツであるトヨタとパナソニック合同の管理職研修への登壇も実現。
2015年からは、作家としてのキャリアもスタート。デビュー作『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』は年間ビジネス書ランキング4位、海外5カ国翻訳のベストセラー・ロングセラーに。これまでに7冊、文庫化も加えれば9冊を上梓し、著者累計は45万部超。独立当初から配信し続けているメールマガジンは通算1000号以上。読者数20000人超。

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