(本記事は、浅田 すぐる氏の著書『トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術』=日本実業出版社、2022年9月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
STEP1:問題を明確に定義する
まずは、問題を見つけ、明確にするところからスタートです。
多くの類書にも同じことが書かれていますが、問題には「発生型」や「設定型」などのタイプ分けが存在します。
「発生型」問題解決とは、こちらから発見しにいかなくてもすでに問題が発生、すなわち明らかとなっているケースです。
一方、本書でフォーカスを当てたいのはもう1つの「設定型」問題解決のほうで、その理由は、「問題の明確化が大事と言われても、そもそも何が問題かよくわかりません……」「問題は発生したらそのつど対処するものであって、自分で見つけるなんて正直ピンとこないです……」等々。
こういった考えに陥りがちな人に、ぜひ参考にしてほしい考え方だからです。
問題「解決」の前に、まずは問題「発見」
このことについて、たとえば、『トヨタの問題解決』(㈱OJTソリューションズ/KADOKAWA)といった参考文献を紐解くと、トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏による、次のような言葉が引用されています。
困らんやつほど、困ったやつはいない
これは、「困らんやつ=問題を発見できない人」に堕落してはならないという意味で、まさに「設定型」問題解決能力の重要性を説いた金言です。
あるいは、トヨタでは「改善」ではなく「カイゼン」とカタカナで表記する人が数多くいて、私もできるだけ後者の表記を尊重するようにしています。
カタカナ表記の理由は諸説あるのですが、私自身が一番しっくりきている説明は、次の通りです。
・「改善」は、「すでに発生している問題」を受動的に善よ くしていく
・「カイゼン」は、「自ら問題を設定」して能動的に善くしていく
一見すると「問題=悪いところ」が見当たらないような状況でも、自ら能動的に問題を見出しカイゼンしていく。
カタカナのカイゼンは、「設定型」問題解決も含んだ言葉なのです。
みなさんはどの程度、能動的に問題を見つけようとしているでしょうか?
それとも、発生した問題にそのつど受動的に対処するほうが強いでしょうか?
ひとしきり向き合ったうえで、次の項目に進むようにしてください。
「問題とは何か? 」を定義する
問題を自ら見出しカイゼンしていく姿勢については、これでわかってもらえたと思いますが、実践時の最大の問題は「どうやって問題を見つけるか?」です。
TBPのSTEP1では、問題を次のように定義しています。
問題=「あるべき姿」と「現状」の「ギャップ」
試しに、みなさんの担当業務に関する「あるべき姿=理想の状態」を考えてみてください。次に「現状」を考え、「あるべき姿」と比較してみましょう。
もし、何かしらの「ギャップ=差、乖離(かいり)」が生じているのであれば、それが解決に向けて取り組むべき「問題」となります。
ただ、「急にあるべき姿を考えろと言われても……」という感じで困ってしまう人も多いかもしれません。
その場合は、「2つ上の役職で考えてみること」をやってみてください。
たとえば、自身が担当者であれば、係長の上である「課長」の立場で。
あるいは、現在の役職が課長なのであれば、その2つ上の「部長」の立場で何が理想か考えてみるということです。
じつは「2つ上の目線で考えてみる」もトヨタの口ぐせのひとつで、私自身は最初にお世話になった課長から、この話を聞く機会がよくありました。
研修・講演・独自開講のスクール等、累計受講者数は10000名以上。大企業・中小企業問わず、登壇実績多数。2017年には海外中国・広州登壇、2018年にはルーツであるトヨタとパナソニック合同の管理職研修への登壇も実現。
2015年からは、作家としてのキャリアもスタート。デビュー作『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』は年間ビジネス書ランキング4位、海外5カ国翻訳のベストセラー・ロングセラーに。これまでに7冊、文庫化も加えれば9冊を上梓し、著者累計は45万部超。独立当初から配信し続けているメールマガジンは通算1000号以上。読者数20000人超。
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