ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方
(画像=stokkete/stock.adobe.com)

(本記事は、別所 宏恭氏の著書『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』=クロスメディア・パブリッシング、2021年9月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

先進7カ国で最下位の労働生産性

生産性という観点から、「高く売る」ことを考えてみましょう。

1時間当たりの労働生産性(以下、とくに記載のない場合は、「労働生産性」は1時間当たりのものを表す)は、国単位のマクロ的な視点では次の式で求められます。

1時間当たり労働生産性
=労働の成果(GDP)/労働投入時間(労働者数×平均労働時間)

図表6は、OECDの加盟国における1時間当たり労働生産性と順位の推移をグラフに表したものです。

『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』より
(画像=『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』より)

労働生産性は、グラフの推移を見ると、順調に右肩上がりで成長しているようにも見えますが、とくに2015年以降は横ばい傾向で、順位については20位台が続いています。

この日本の状況は、アメリカやフランスなど、ほかの主要国と比べるとどうでしょうか?

主要先進7カ国(G7)の1時間当たり労働生産性を、2000年と2019年とで比較してみると、残念ながら日本はこの20年、G7ではずっと最下位に沈んでいる状態です〈図表7〉。

『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』より
(画像=『ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方』より)

そもそも産業構造や就業者数(失業者の定義や解雇のしやすさなども関係する)など労働生産性の算出のベースになる数字の定義が国によって違い、日本では非正規雇用(パートタイマーやアルバイト)の割合が高いので日本の数字は低く出ているのだと指摘する人もいます。確かにそうした側面はありますが、同じ期間の労働生産性の伸びも、イタリアと並んで最下位グループに甘んじてしまっています。

図表を見ておわかりのように、G7のトップ集団との差はこの20年でさらに開いており、現在の労働生産性はフランスが日本の約1.62倍、アメリカが約1.61倍、ドイツが約1.56倍。少なくとも労働生産性を今の1.6倍くらいに引き上げないと、トップ集団にはいけません。ただ、今の日本は低い分、向上の余地は大きいともいえるでしょう。

その際、従来の日本企業のように、安いものをたくさんつくって労働生産性を上げるのではなく、欧米のように、最初から高いものをつくって、最初に「高く売る苦労」をすべきです。

わかりやすい例は、EV(電気自動車)メーカーであるテスラ。まず、市場規模が小さなスポーツカーで「テスラは高価だが先進的でかっこいいというイメージ」を消費者に心の中にしっかりとつくってから、より販売量が見込めるモデルを発売していきました。こうすることで、のちのモデルで高く売る苦労を軽減することを可能にしたのです。

一方で日本のホンダは、スペシャリティカーであるNSXを2022年11月で生産終了とするなど、高価格商品では販売不振が続いています。東京・青山にあるホンダ本社の前に展示してあるのは、スーパーカブや軽自動車ですが(F-1も時々飾っているようですが)、私なら建物のドアや壁を壊して再整備してでも本社の前にホンダジェットを置くでしょう。なぜか? ホンダの本社が面している青山通りには、フェラーリやマクラーレン、レクサスなどあらゆる高級車の展示がありますが、プライベートジェットより高価な車、速い車はありません、ブランディングとしては一人勝ちができるはずです。

ネクストカンパニー 新しい時代の経営と働き方
別所 宏恭
レッドフォックス株式会社 創業者
1965年兵庫県宝塚市生まれ、西宮市育ち。
横浜国立大学工学部中退。
独学でプログラミングを学び、大学在学中からシステム開発プロジェクトなどに参画。
1989年レッドフォックス有限会社(現レッドフォックス株式会社)を設立し、代表に就任。

モバイルを活用して営業やメンテナンス、輸送など現場作業の業務フローや働き方を革新・構築する汎用プラットフォーム「SWA(Smart Work Accelerator)」の考え方を提唱。 2012年に「cyzen(サイゼン/旧称GPS Punch!)」のサービスをローンチ、大企業から小規模企業まで数多くの成長企業・高収益企業に採用される。

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