(本記事は、広江 朋紀氏の著書『問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30』=翔泳社、2022年6月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
開始後90秒以内に仕掛ける
プレゼン開始90秒以内に、「PUNCH」の効いたオープニングで相手と場の心をガッチリつかむ。
PUNCHでつかむ
人はオープニングの第一印象でプレゼンの価値の大半を決めてしまうものです。冒頭でどうすれば聞き手の心と場の関心をガッチリつかむことができるのか、頭を悩ませている人は多いはずです。そんなときに参考になるのが、プレゼンの専門家であるガー・レイノルズが提唱するPUNCHという5つのツカミです。PUNCHとは、Personal(個人的)、Unexpected(予想外)、Novel(斬新)、Challenging(挑発的)、Humorous(ユーモラス)の頭文字に由来します。私が実際に使ったせりふも合わせて具体的に紹介していきます。
Personal(個人的)
テーマに即した個人的なエピソードや参加者の共感を得られる個人的なストーリーを語ることです。
例:「先日、御社の電動工具を使って我が家にハンモックを取りつけたんです。そうしたら、息子に工具の使い方を教えてくれと頼まれて、父と息子の絆が深まるとっても豊かな体験になりました」
電動工具メーカーの社員向けプレゼンにて、同社の製品を実際に使用した個人的な感想を述べました。すると、それまで無表情だった参加者の皆さんの表情が瞬時に笑顔に変わりました。
Unexpected(予想外)
予想外の事実を披露することです。
例:「今日は、なんとスペシャルゲストに来ていただいてます! さあ、ゲストはこの方です」
自社のキックオフミーティングの冒頭に、普段会えない社長に来てもらい、参加者への期待を直接伝えてもらうサプライズを演出しました。すると、「オー!」「エーッ!」というような歓声が場に起こりました。
Novel(斬新)
斬新な発言をしたり、珍しいものを見せたりすることです。
例:「突然ですが、この絵は何に見えますか?」(図10-1)
ダイバーシティがテーマのプレゼンで視点を変える必要性を訴えるためにだまし絵を使い、問いかけました。すると、少々の無言の後に「分かった!」というような何かを発見した興奮を伝える反応が表出しました(このだまし絵には「若い女性」と「老婆」が見えます)。
Challenging(挑発的)
社会通念に異議を唱え、聴衆の思い込みを打ち破ることです。
例:「社外プレゼンでは、聴衆はあなたのことを知りませんよ」(図10-2)
個人投資家向けのプレゼンを控えている社長へのトレーニングの冒頭に挑発的なメッセージを発しました。すると、それまで伏せていた顔を上げて明らかにこちらに意識を向けてくれるように変化しました。
Humorous(ユーモラス)
ユーモアを利用することで聴衆の心をつかむことです。
例:「個人的な話なんですが、社会に出て最初に入った会社が 4 か月で倒産したんです。ベンチャーだと見込んで入った会社がベンチャーではなくてアドベンチャーだったんですね(笑)」
個人のキャリア形成がテーマのプレゼンの冒頭に、自分の失敗をユーモアを交えて開示することでツカミにしました。すると、「ドッ」と笑いが起こり、和やかな空気に変化しました。
プレゼンの冒頭にこれら5つのうち、1つでも入っていればインパクトのあるツカミとなります。
資格等
■ CRR Global 認定 組織と関係性のためのシステムコーチ(ORSCC)
■ 米国 CTI 認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)
■ ハーバード大学 教育大学院 ロバート・キーガン教授 認定
Immunity to Change ® ファシリテーター
主要著書
『今日から使える ワークショップのアイデア帳』、『そのまま使える オンライン場づくりのアイデア帳』(ともに翔泳社)、『場をつくる』(明日香出版社)。その他、論文寄稿、複数の大学での特別授業、NewsPicks+d、日経M J 本誌、月刊人事マネジメントへの連載寄稿等多数。
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