(本記事は、広江 朋紀氏の著書『問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30』=翔泳社、2022年6月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
緊張してアガらないためにはどうすればよいでしょうか?
緊張を緩和する6つの原則
結論からお伝えすると緊張をなくすことはできません。むしろ適度な緊張をした方が、パフォーマンスが高まります。
とはいえ、過度に緊張する必要はありません。過度な緊張を緩和する6つの原則をお伝えします。
第1の原則:自分だけのルーティンをつくる
ルーティンとは、どんなときも同じ段取りを踏むことでパフォーマンスを高めやすくする手法です。
タイガー・ウッズのスイング前のプリショット・ルーティンや野球選手などがバッターボックスで毎回同じ動きをすることでもおなじみです。
私は、プレゼン開始直前に自分の胸をトントントンと3回優しく叩くとスイッチが入ります。自分だけの本番に臨むスイッチを入れる儀式をつくりましょう。
例えば、窓の外に広がる景色を見てみる、自分が立っている床の模様を観察してみるといったことでも構いません。ルーティンをつくり実践することで、いつどんなときでも、平常心を持って場に臨むことができるようになります。
第2の原則:準備を徹底する
緊張を和らげる特効薬は「準備」です。
特に初めてのテーマに挑むときは入念な準備が必要です。自分が一番伝えたいところだけをまとめた簡単な台本をつくったり、時間を具体的にどう配分していくかイメージしてみるといろいろな過不足が見えてくるものです。
自分が参加者になり、自分のプレゼンを聞く相手の立場になったつもりでイメージをしてみましょう。そうした準備を重ねていくと、気持ちが落ち着いてくるのが分かるはずです。
第3の原則:最初の3分に命をかける
プレゼンのイメージトレーニングを最後まで完璧にする必要はありません。極論すれば最初の3分。ここだけ完璧なリハーサルを行います。なぜなら、最初の3分は、自分と相手と場の期待や姿勢が決まる時間帯だからです。
「第一声」「自己紹介」「プレゼンのテーマ」「ツカミのストーリー」。そこまでを徹底的に参加者の視点に立ってイメージしましょう。
第4の原則:開始前に相手と場を観察する
当日は、参加者の誰よりも早く会場に入りましょう。着いたら、資料、機材、備品物の確認を早めに済ませ、場になじんでおきます。
参加者が来たら、笑顔と挨拶で迎え入れ、温かいまなざしで観察します。参加者同士の関係性は良好か、よそよそしいか、元気がありそうか、大人しいか、影響力のありそうな人はいるか、そうして相手と場を先に観察することでプレゼンとのチューニングをしていきます。
プロの落語家が高座に上がる前に舞台袖で客席の温度感を確かめて、今日はくすぐり(ギャグ)を多めに入れようとか、お子さんが来ているので艶話は控えようとするのも同じことでしょう。
第5の原則:「うまくやろう」とする意識を手放す
最初の3分に全てを注げという話をしましたが、開始の時刻が迫ると緊張して「あれ最初に何て言うんだっけ」「どうやろうか」などと、「今、ここ」ではない「先」に思考がいきがちです。
相手や場を観察せずに、用意していたタイムテーブルを何度も見直したりするなど、心がかき乱されます。
そんなときは足元がふらつくサインなので、どんなに緊張しても意識を「今、ここ」に戻すことが必要です。自分の真下に碇(いかり)をおろすような感覚で、うまくやろうとしていることで頭が一杯になっている自分を手放します。まっさらな状態で場に立った方が良い結果を引き寄せることにつながるのです。
第6の原則:過去の絶賛アンケートから、根拠ある自信を取り戻す
百戦錬磨のプレゼンターでも落ち込んだり、登壇前に及び腰になることはよくあります。そんなときに自信を取り戻すには、過去のうまくいったときの参加者の声やアンケートのコメントを思い出すのです。
プレゼンに対しての大絶賛の声や反応、その時の目に映っていた光景を思い出すことで自己肯定感が高まり、いつもの自分で場に立つことができるようになります。
資格等
■ CRR Global 認定 組織と関係性のためのシステムコーチ(ORSCC)
■ 米国 CTI 認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)
■ ハーバード大学 教育大学院 ロバート・キーガン教授 認定
Immunity to Change ® ファシリテーター
主要著書
『今日から使える ワークショップのアイデア帳』、『そのまま使える オンライン場づくりのアイデア帳』(ともに翔泳社)、『場をつくる』(明日香出版社)。その他、論文寄稿、複数の大学での特別授業、NewsPicks+d、日経M J 本誌、月刊人事マネジメントへの連載寄稿等多数。
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