プレゼンが劇的に伝わりやすくなるジェスチャーの基本
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(本記事は、広江 朋紀氏の著書『問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30』=翔泳社、2022年6月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ジャスチャーはおへそから上を縦に使う

はっきりと意図的にジェスチャーを使うことで、プレゼンに気持ちがこもり、伝わりやすくなる。

問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30
(画像=『問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30』より)

振る舞い方で印象を強くする

時にジェスチャーは、言語では伝えきれないメッセージを伝えることができます。特にオンラインでプレゼンする際には、画面一杯に話し手の姿が映し出されるため、ジェスチャーが重要になってきます。ジェスチャーを考えるにあたり、アメリカの心理学者ポール・エクマンとウォレス・V・フリーセンの理論が参考になります。

ジェスチャーは、動作と対応する意味が一般化されている「エンブレム」と、一般化されていない「自発的なもの」と大きく2つに分かれているとしています。

エンブレム(動作と対応する意味が一般化されているもの)

主に以下のようなものがあります。

  • 会釈やOKサイン、手招き
  • 胸に手を当てる(安堵をあらわす心理状態)
  • 縦に首を振るイエス、横に首を振るノー
  • 強調を示す際に人差し指を突き出す

エンブレムで特に意識して使うと効果的なのは、最後の「強調を示す際に人差し指を突き出す」です。このメッセージは、伝えたい「ここぞ!」というところで、グッと身を乗り出してみる、人差し指を立てて「注目いただきたいのは……」と言ってみるとアテンションが高まります。

自発的なもの(動作と対応する意味が一般化されていないもの)

主に指示、変化、演技、形態があります。

指示:指で方向、場所、事物を指し示す。

例:「今日は、北は北海道、南は沖縄の皆さんまでご参加いただいています!」
(位置関係を示す際に、片方の手を上げて北海道の位置を示し、もう片方の手を下げて沖縄の位置を示す)

変化:時間、売り上げ、形状の変化を示す。大きさを示すときはゆっくり、小ささを示すときは早く動かします。また、高さを示すときはゆっくり、低さを示すときは早く動かします。

例:「このように改善されていきます」
(相手から見て右肩上がりとなるよう手を右から左へ動かす)

演技:演劇の登場人物の動作のように身体表現をする。

例:「お客さんがこうつぶやいたんです……。(せりふを述べる)」
(せりふを言う際は上下(かみしも)をつける)

形態:ものの形を表現する輪郭表現。

例:「こんな形でした」と言いながらゆっくり表面をなぞる。

なお、演技における上下(かみしも)とは、複数の人物を使い分ける落語の技法です。客席から向かって右前方を上手(かみて)、左前方を下手(しもて)と言い、これは芝居の舞台設定、つまり花道がある方が下手、座敷の方が上手からきています。話中の人物も、顔を下手に向ければ上位の人物、上手へ向ければ下位の人物を表します。

例えば、上手を向いて「こんちは」と言えば与太郎。下手を向いて「誰だい」と言えば御隠居になります。顧客は、上位の人なので、顔と上半身をやや下手(右側)に振って話すと、不思議と自分以外の人がしゃべっているように聞こえるので試してみてください。

ジェスチャーには4つのゾーンがある

続いてジェスチャーを行う4つのゾーンを紹介します。

①ダイナミックゾーン(頭部より上)

ダイナミックゾーンは、注目を集めたいときに使います。また遠い距離から後方の相手に何かを伝えたいときや注意喚起など、ダイナミックな動きが必要なときに用います。

②インパクトゾーン(両腕のつけ根から左右に腕を伸ばしたところ)

インパクトゾーンは、何かを強調したいとき、手に持っているものを参加者に見せたいとき、モノを指し示したいときなどに使用します。

③セーフティーゾーン(胸からおへそにかけて)

セーフティーゾーンは、オーバーアクションにも控えめにもなり過ぎず、程よい安心感でモノを伝えるときに有効な一番使われているゾーンです。ただ、このゾーンばかり使用していると単調になるので、時にインパクトゾーンやダイナミックゾーンを交ぜていくと有効です。

④ミステリーゾーン(おへそから下)

おへそから下は、後方の参加者からは見えづらく、何をしているか伝わりにくいため、ミステリーゾーンと言われます。なるべくこのゾーンを使用するのは避けるのが賢明です。

オンラインのプレゼンでは、画角によっては、セーフティーゾーンがミステリーゾーンと化してしまうこともあるので、プレゼン前にしっかりとカメラ位置を確認しましょう。

またオンラインでのジェスチャーは、画面の特性から横の動きよりも縦の動きを取り入れた方が「立体感」が出るのでおすすめです。

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広江 朋紀(ひろえ・とものり)
組織・人事領域のエキスパートとして、採用、育成、キャリア支援、風土改革に約20年従事、上場企業中心に1万5,000時間を超える研修やワークショップ、プレゼンテーションの登壇実績。最近は、経営者やリーダー向けのプレゼンスキルアップ・コーチングも大好評。育休2回。3児の父。休日の楽しみは「キャンピングカーにカヤックを積み、地方の湖で子供たちとツーリングをすること」。

資格等
■ CRR Global 認定 組織と関係性のためのシステムコーチ(ORSCC)
■ 米国 CTI 認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)
■ ハーバード大学 教育大学院 ロバート・キーガン教授 認定
Immunity to Change ® ファシリテーター

主要著書
『今日から使える ワークショップのアイデア帳』、『そのまま使える オンライン場づくりのアイデア帳』(ともに翔泳社)、『場をつくる』(明日香出版社)。その他、論文寄稿、複数の大学での特別授業、NewsPicks+d、日経M J 本誌、月刊人事マネジメントへの連載寄稿等多数。

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