「DX」「〇〇2.0」使ってませんか? 相手に伝わる正しい言葉の扱い方
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(本記事は、広江 朋紀氏の著書『問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30』=翔泳社、2022年6月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

はやり言葉ではなく、自分の言葉を使う

はやりの言葉、キーワードに逃げない。誰にでも伝わる言葉で話す。

問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30
(画像=『問いかけて心をつかむ 「聞く」プレゼンの技術 緊張をほぐす・共感を得る・行動してもらうために役立つスキル30』より)

借り物の言葉では伝わらない

個人投資家向けのプレゼンがうまくいかないと悩まれる社長がいました。プレゼンの動画を拝見したところ、このように話されていました。

「おかげさまで当期の業績はグロース傾向にあり、マーケットのニーズにマッチするソリューションが期待できます。来期はよりDXを加速し、ウィンウィンのカスタマーサクセスをバリューアップさせることにコミットします。ぜひ、当社の将来性にご期待ください」

滑舌も良く、朗々とカメラ目線で話されていて、プレゼンス(印象)にもデリバリー(伝え方)にも、一見問題はありません。ただひとつ、カタカナや外来語が多く、話の内容が全く頭に入ってきませんでした。

ビジネス用語で活用される外来語やキーワード、ないしは流行語大賞で注目されるような言葉は、その時代の世相を反映し、人の気持ちや想いを惹きつける力が確かにあります。しかし、その力が強いほど、トレンドが変わると急速に意味が伝わらなくなるのも事実です。

かつて一世を風靡した「Web2.0」「ユビキタス」「マルチメディア」といった言葉は、もはや死語となっています。はやりの言葉や専門用語、カタカナ用語を使うなとは言いませんが、最も伝えたいメッセージに使うのは控えるのが賢明です。

また、業界の専門用語や会社特有のジャーゴンと呼ばれる「内輪の用語」を使うことも避けましょう。自分たちにとっては、当たり前の用語が異なる業界の人にとっては、全く伝わらない、あるいは意味の異なるものとして伝わってしまうリスクがあります。

知識の呪い

スタンフォード大学のエリザベス・ニュートンによって明らかにされた知識の呪い(The curse of knowledge)と呼ばれる実験があります。自分が知っていることは相手も知っているはずだと思い込んでしまうことです。

実験は、被験者を「タッパー(曲のリズムの叩き手)」と「リスナー(曲名を当てる聴き手)」に分けます。次に、タッパーに対して「ハッピーバースディ」のような誰もが知っている複数の曲のリズムを机で叩いて刻むように依頼します。リスナーは、机を叩いて刻まれるリズムを聴き、その曲名を当てます。

タッパーにリスナーが曲を当てられる正答率を予測してもらったところ、「ハッピーバースディ」「ジングルベル」「メリーさんの羊」のような誰もが知っている曲名だったので、2回に1回は当たるはずだとして、「50%」と答えました。しかし、実際には「2.5%」(120回のうち当たったのはわずか3回)でした。

まさに、知識の呪いと言って良いでしょう。自分が伝えたいメッセージが本当に相手に伝わるか、謙虚に見つめ直してみることが必要です。

アインシュタインは、「簡明に説明できなければ、それを十分に理解したとは言えない」と言いました。理解しないまま説明しようとすると、文章が長く、歯切れも悪くなり説得力に欠けてしまいます。

易しい言葉を使っても、メッセージの質を落とすことにはならず、複雑な概念を易しい言葉で言い表せてこそ、信頼と敬意を勝ち取ることができるのです。

劇作家の井上ひさしさんも次のように言っています。

むずかしいことをやさしく、
やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく、
おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに、
そしてゆかいなことはあくまでゆかいに

言葉を見直す際は、以下の項目を確認して伝えるようにしましょう。

□誰にでも伝わるような開かれた言葉を使っているか?
□「知識の呪い」から解き放たれているか?
□業界特有の内輪用語に偏っていないか?

book
広江 朋紀(ひろえ・とものり)
組織・人事領域のエキスパートとして、採用、育成、キャリア支援、風土改革に約20年従事、上場企業中心に1万5,000時間を超える研修やワークショップ、プレゼンテーションの登壇実績。最近は、経営者やリーダー向けのプレゼンスキルアップ・コーチングも大好評。育休2回。3児の父。休日の楽しみは「キャンピングカーにカヤックを積み、地方の湖で子供たちとツーリングをすること」。

資格等
■ CRR Global 認定 組織と関係性のためのシステムコーチ(ORSCC)
■ 米国 CTI 認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)
■ ハーバード大学 教育大学院 ロバート・キーガン教授 認定
Immunity to Change ® ファシリテーター

主要著書
『今日から使える ワークショップのアイデア帳』、『そのまま使える オンライン場づくりのアイデア帳』(ともに翔泳社)、『場をつくる』(明日香出版社)。その他、論文寄稿、複数の大学での特別授業、NewsPicks+d、日経M J 本誌、月刊人事マネジメントへの連載寄稿等多数。

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