(本記事は、戸田 裕大氏の著書『米中金融戦争』=扶桑社、2020年9月25日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
国際情勢を正しく理解するための情報入手術
まず「どこの誰が、どの立場で発言しているのか?」。
この確認を徹底することが極めて重要です。
たとえば、日本で対中国の安全保障に関する議論が進んでいると仮定します。その場合、一番重みがあるのは、日本の防衛大臣の直接の言葉や防衛省からのアナウンスです。一方で、テレビや雑誌で取り上げられるコメンテーターのコメントには説得力があったとしても、その言葉に拘束力はありません。また、各テレビ、メディアはそれぞれの立ち位置があるので、強調したい点を切り取って報道したりもします。
ですから、基本的にはコメンテーターの意見は参考程度にとどめておいて、本当に真実を知りたいのであれば、その題材の決定権者に極力近い人たち(防衛省)の直接の意見や言葉、公表物を参考にすべきです。
また、海外の防衛省に担当する部署が日本をどう見ているのか、直接利害関係のある対抗勢力(中国側)の意見を確認することも真実を知るうえで重要になります。
日本ではおおむね自国の見方しか報じないので、反対サイドの認識や意見がまったく報道されない分、国内の情報はコントロールされているということを日頃から認識することが重要です。
まだ銀行で為替ディーラーをしていた頃、他の証券会社のアナリストが作ったレポートばかりを読んで、自分の投資に活用している同僚がいました。
その証券会社のレポートの内容を確認すると、別の会社の情報をもとに分析を行っており、その別の会社もまた別の会社のレポートを真似して…と、もはや何をもとに考察を行ったのかがまったく不明な、情報ソースが曖昧なレポートも散見されました。
だいたい、こういう出所が曖昧な情報をもとに市場に対峙するディーラーは勝てません。
自分で判断する力、自分で情報をとる力が足りていないからです。
勝てるディーラーというのは、日銀やFRBなどの要人の発言や一挙手一投足をつぶさに確認し、そこから自分なりのシナリオを描いて投資を行うものです。
本書は、極力、情報の上流にアクセスしています。つまり、日本や中国の省庁やその他の政府機関にアクセスし、それらのデータをそのまま活用し、それに私の実体験と考え方を加えているので「情報の純度」は高いと思います。
純度が高い情報に触れることは、情報が氾濫している今の世界を生き抜くうえで、極めて重要と考えているため、手間をかけて、こだわり、徹底して作成しています。
情報の出所、皆さんもぜひ、それを意識してみてください。
2007年、中央大学法学部卒業後、三井住友銀行へ入行。10年間、外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行するとともに、日本のグローバル企業300社、在中国のグローバル企業450社の為替リスク管理に対する支援を実施。2019年9月、CEIBS(China Europe International Business School)にて経営学修士を取得。現在は若竹コンサルティング代表として、法人向けに、為替市場調査と為替リスク管理に関するコンサルティング業務を提供するかたわら、為替相場講演会に多数、登壇している。
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