【ビッグファーム】拠点の個性を活かし多角的な支援を実現/社会保険労務士法人総合経営サービス 肥後労務管理事務所・平井俊輔氏
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個性の異なる4拠点を率いる肥後労務管理事務所の平井俊輔氏。
税理士法人での勤務経験を活かしつつ、
新たなブランディング戦略やサービスづくりに取り組んでいます。
その躍進の背景に迫ります。

税務担当者から社労士法人の代表に

私が共同代表を務める肥後労務管理事務所は、
税理士法人を中心とする総合経営サービスグループに属しています。
17年前に税理士法人に入社した私は、
もともと持っていたCFP資格(※)を活かし、
税務担当者として中小企業の経営者と向き合ってきました。
CFPを知ったのは、就職活動をしていた大学生のとき。
卒業後、いったんは金融系商社に就職したのですが、すぐに挫折。
米国では地位が確立されているものの、
日本ではまだ認知度が低いCFP取得のための勉強を理由に、退職しました。
ところが、資格は取れても、予想以上にCFPを活かせる会社が少ない。
そこで、もう一つ何か資格を取ろうと考え、取得したのが社労士でした。
※世界25の国と地域(2021年3月現在)で導入されている、「世界が認めるプロフェッショナルFPの証」

当時、すでに27歳。
順調にキャリアを積む同世代に取り残された気分のなか、
見つけたのが総合経営サービスの求人です。
未経験にも関わらずCFPと社労士の資格手当が計10万円。
運命的でした。

税務担当として経営者の多岐にわたる悩みに寄り添う仕事は、
本当にやりがいのあるものでした。
ですから、入社10年目で突然、
社労士法人の代表就任を打診されたときは、戸惑いました。
グループ内の社労士法人が別の事務所をM&Aすることになったのですが、
顧客層や文化がまったく異なるため別法人として始めたいということと、
ほかに社労士資格を持っている社員がいなかったことで、
私に白羽の矢が立ったのです。
正直かなり迷いましたが、
「育ててもらった恩に報いるには挑戦するしかない」
と腹をくくりました。


グループ文化の浸透と管理体制刷新で改革

M&Aで新しい代表がくるわけですから、やはり反発はあり、
19人いた職員のうち、辞めずに加わってくれたのは12人。
その後もさまざまな改革を行いましたが、
今も6人が残ってくれています。

代表に就任してまず取り組んだのは、グループ文化の浸透です。
最初の1年は、グループ代表の山﨑明にも参加してもらいながら、
朝礼や幹部との面談で、私が10年間学んできたことを伝えました。
次に、最大の課題だった、
事務所内の横の連携づくりに取り組みました。
それまでは、個人事業主の集まりのような組織だったのです。
個人プレーは専門性を伸ばせるメリットがあるものの、
担当者の能力の限界が提供できるサービスの限界になってしまいます。
そこで、1社に対して3名のチームで担当する形に変更。
業務の抜け漏れも減り、お客様に安心してもらえますし、
引き継ぎの負担も軽減できます。

3年目からは、「数字への意識づけと時間管理」に注力しました。
業務内容や売上、各顧客にかける時間や報酬などをすべて数値化して分析。
改善すべき点を示したのです。
これはかなり反発もありましたが、
成長には欠かせない改革だったと思っていますし、
評価制度の見直しにもつながりました。

また、常に変化する時代に対応するには、
士業の垣根を越えた連携も不可欠です。
そこで、サービス面で新たに取り組んだのは、IPO支援。
ベンチャー起業を支援する勉強会に参加し、
IPO支援に取り組む士業の先生とたくさん出会ったことがきっかけです。
もちろん、IPO支援以外の案件を紹介していただくことも多いため、
士業連携は今後も強化して行きたいと考えています。


拠点ごとの個性を活かし幅広い企業の支援を実現

現在は、東京と長野に4拠点を構え、60人超の規模に成長しました。
といっても、私はグループ代表の山﨑のような
カリスマ性は持ち合わせていません。
強いリーダーシップで導いていくのは難しく、
職員にも伝わらないと感じました。そこで考え方を変えて、
「各拠点の特色を活かし、相乗効果を高める」
という戦略をとりました。

当社は、拠点ごとに顧客層が異なります。
共同代表である白井章稔(あきとし)が率いる王子店(東京都)と
松本店(長野県)は、グループの税理士法人と連携し、
中小・零細企業の労務を税務と一体となってサポートしています。
一方、私が管轄する吉祥寺本店(東京都)は、
上場企業や外資系企業の顧問先が多くあります。

また、2021年2月には、ブランディング拠点として渋谷店を開設。
渋谷は、ITベンチャーをはじめ、若くて勢いのある経営者が集まる街。
同じ生活圏でスピード感を共有し、
伴走できる存在になりたいと考えました。

拠点ごとの特色を活かすことで、
規模も業種も異なるさまざまな企業を支援でき、
そのノウハウが社内に蓄積されることで、
さらに多様な企業のサポートができるようになります。

私たちは、2026年までに職員100名・売上10億円を目標にしています。
現在の倍の売上ですから、実現するためには、
これまでとは別次元の発想が求められるでしょう。
その足がかりとして、今年から4拠点を横断する新プロジェクトが動き出しました。
助成金や補助金などのスポット商品の受注体制強化や、
新規顧客への対応の標準化などに着手します。
前例にとらわれない仕組みづくりを進めていきたいと思います。

【ビッグファーム】拠点の個性を活かし多角的な支援を実現/社会保険労務士法人総合経営サービス 肥後労務管理事務所・平井俊輔氏
「走りながら考える」ことで仕事の幅を広げ多様性のある事務所をつくる(平井氏)。(画像=プロパートナーONLINE)

「走りながら考える」スピード感のある挑戦を

今後の課題は二つ。
一つ目は若手社員の採用です。
現在の平均年齢は43歳。
これまで中途採用が多かったこと、近年離職率が低下したことで、
キャリアもスキルも十分なメンバーが揃っています。
しかし、ベンチャー企業などの支援で若い経営者への対応が増えるなか、
私たちも新しい感性を持ち合わせる必要性を痛感するようになりました。
現在、新たに新卒採用やインターン制度を導入し、
試行錯誤しているところです。

二つ目は、管理職の育成。
現在は、管理職を置かず、
私と白井の2人で全職員をマネジメントしています。
もちろんチームやプロジェクトのリーダーは任命しますが、
業務管理はkintoneなどのITツール活用や複数担当制でうまく回っています。
現体制でも売上目標は達成できる見込みなので、
どのタイミングで管理職を育てるべきか、
そもそも管理職を置くべきなのかも含めて悩んでいるところです。

私は、経営者として、ずっと大切にしている言葉があります。
それは、船井幸雄氏が提唱した「素直、プラス発想、勉強好き」。
このすべての根底に通じる「謙虚さ」を常に心がけています。

また、「長所伸展」も、職員に向き合う際には欠かせないキーワードです。
毎年8回、全員と面談していますが、一人として同じ人間はいません。
それぞれが活躍できるステージを用意するためには、
幅広い仕事をつくることも必要です。
士業は緻密さや慎重さが求められる仕事ですが、
私たちのモットーは「走りながら考える」。
スピードとチャレンジにもこだわり、
多様性のある事務所をつくりたいと考えています。

グループ全体では近年、
「何でも相談できるFPグループを目指す」というビジョンのもと、
経営者を多面的に支援する会社が次々と立ち上がっています。
人事・労務に関わる部分では、人材紹介会社ができたことで、
他社にはない採用支援が可能になりました。

今後も、士業の枠にとらわれず、
何でも相談してもらえる存在になりたいと思います。

プロフィール
平井俊輔氏
平井俊輔氏
社会保険労務士法人総合経営サービス 肥後労務管理事務所 代表社員
1976年生まれ。大学卒業後、金融総合商社に入社。退職後、CFPと社会保険労務士の資格を取得し、
2004年に税理士法人 総合経営サービスに入社。税務担当者として勤務。
2014年、M&Aでグループとなった肥後労務管理事務所の代表社員に就任。
プロパートナー
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