「敷かれたレールを走るのではなくて、自分でレールを敷いてみたい」と、
大手商社勤務から、社会保険労務士に転身した
社会保険労務士法人WILLの山本 達矢氏。
近年は、“メディア系社労士”として積極的にメディア露出も行っています。
その目的や、仕事をするうえでのポリシー、今後の展望などをインタビュー!
Q. 社労士を目指したきっかけを教えてください。
大学卒業後は一般企業に勤めていたのですが、
28歳くらいで、何か先が見えてしまった気がしたんです。
大手商社で繊維関係の商材を扱っていて、国内のシェアも高く、
海外勤務も経験しましたが、
「この会社で働き続けたとして、10年後に自分が38歳になったら、48歳になったら……」
と考えたときに、自分の立場や収入をはじめ、
良くも悪くもいろいろな未来が想像できてしまった。
でも、人生は一回きり。
「敷かれたレールを走るのではなくて、自分でレールを敷いてみたい」、
「新しいフィールド、新しい世界を見てみたい」と考えるようになりました。
たまたま義父と義兄が社労士で、社労士事務所を営んでいたので、
私もその世界で勝負をしてみようと決めました。
Q. 社労士になって、やりがいや嬉しさを感じるのは、
どんなときですか?
税理士や弁護士、司法書士など、
ほかの士業の先生から相談やお客様の紹介をいただけたときです。
もちろん、お客様から直接のご依頼も嬉しいのですが、
一般企業の場合、社労士を選ぶ際にそれほど選択肢はなくて、
ピンポイントで当社を選んでいただくことが多くあります。
でも、税理士、弁護士、司法書士の先生は、
社労士の知り合いがたくさんいる方も多い。
そのなかで当社を選んでいただけたということが嬉しいですよね。
数多の社労士と一緒に仕事をされているなかで、
WILLの仕事ぶりを評価いただけた結果なのかなと。
そもそも私たちは、同業の先生と自分たちを比べる機会が少ないのです。
例えば飲食店であれば、ほかのお店と比べてうちの味がどうかというのを
比較しやすいと思うのですが、士業の場合はサービス内容での比較がしづらい。
ですから、他士業の視点から見てうちの事務所を指名してもらえたというのは、
特に嬉しいのです。
Q. 他士業の先生にも選んでいただける事務所の強みは、
どのあたりにあると感じていますか?
当社は重視していることが二つあって、
一つが「気持ち」。もう一つが「商品開発」です。
「気持ち」というのは例えば、
ほかの事務所に負けない丁寧な対応やフットワークの軽さなど、
「目には見えないけれど持っていなければいけないもの」です。
特に、当社は「スピード=品質」と考えていて、
レスポンスを早くすることが品質に直結すると思っています。
ここは、お客様に説明してもわかりにくいところですが、大切にしています。
そして、商品開発とは、ほかの事務所がやってないサービスを提供することです。
例えば、新しい給与設計システムを入れて、
顧問先の給与がその業界の平均と比べて高いのか低いのか、
粗利に対して適正な人件費の比率なのかなどをシミュレーションする。
あるいは、これから働き手がどんどん減っていくことを見越して、
「採用定着支援」を行う。
さらに、従業員が本音では会社にどんな不満を持っているのか、
退職の可能性が高い人がわかるような調査を行って
「労務リスクの見える化」をするなど。
採用から入社後の給与設計、退職の防止までを
サポートできる体制をつくりたいと考えています。
中小企業の経営者は、そこまでなかなか手が回りませんから、
「かゆいところに手が届く」ではなく、そのもっと先の、
「かゆくなりそうなところに手を置いておく」
サービスを提供したいと思います。
Q. 山本先生は近年、積極的にメディア露出をしていますが、
その狙いを教えてください。
まずは、「規模は大きくなくても強い事務所」をつくりたいということが大きな目的です。
事務所の代表として、規模の拡大を目指すのか、
内容の充実を目指すのかなど、目指すべき方向はいろいろあると思いますが、
私がつくりたいのは「規模は大きくなくても強い事務所」です。
強くなろうとしたときにどうすればいいかというと、
「有名になる」というのが一つの方法です。
例えば、「日本で一番有名な弁護士」が所属する事務所が
「日本で一番大きな弁護士事務所」というわけではありません。
でも、「日本で一番有名な弁護士」のほうが、
一般の方への影響力があったりします。
そして、個人が有名になるためには、メディア露出が効果的だと考えました。
メディア露出をして、「あの社労士さん、頑張ってるよね」と目立ってくると、
いろいろな相談が来るようになって、難易度の高い案件も来る。
そのハードルを越えることで、さらに難易度の高い案件が来る。
それを繰り返していくことで、社労士として強くなれば、
もっとお客様の役に立てる事務所になれると考えています。
机の上で勉強することもとても大事ですが、実務を積んでいくことも重要です。
特に、難易度の高い仕事を経験するためには、
自分が表に出て多くの人とつながって、
さまざまな相談を受けることが有効だと感じています。
その経験を通して、社労士としての強みが増していくのではないでしょうか。
あとは、お客様のためというのも大きな目的です。
「うちの顧問社労士が、今度テレビに出るみたい。雑誌にも出ているんだって」
と言えるのって、たぶん嬉しいことだと思うんです。
ですから、新しいお客様に出会えるという点だけではなく、
既存のお客様に喜んでもらって満足度を高めるということも、
メディアに出る理由です。
ただ、「メディアに出始めたら忙しくなって会う機会が減った」
と思われてしまわないよう、
むしろ接触頻度を高めるように心がけています。
目立てば目立つほど、新しいお客様からも、既存のお客様からも、
中身が伴っていないとがっかりされてしまいます。
そういう意味では、メディアに出ることは、
自分にプレッシャーをかけることにもなっています。
Q. 仕事をするうえでモットーにしていること、
心がけていることは何ですか?
「精一杯やらない」ということです。
「100%、120%精一杯やっている!」と思いながら仕事をすると、
それがうまくいかなかったときや手が回らなかったときに、
「俺は精一杯やったのに」という言い訳ができてしまう。
「精一杯やっているから、これ以上できない」となるのが嫌なんです。
「まだ余裕だよ」「まだ精一杯じゃない」と思って仕事をしたほうが、
「もっとできる」「まだまだできる」と、
自分自身の成長が止まらないと思うのです。
そう思えるためには、精一杯やらなくてもミスをしない仕組みをつくることも必要です。
システムなどをうまく取り入れて、
“無駄な精一杯”をなくす工夫をしていかないといけない。
汗水たらさなくても、完璧は目指せるのではないかと考えています。
また、精一杯な感じが出てしまうと、
「山本さんは忙しそうだから、仕事を頼めないな」
と思われてしまう可能性があります。
レスポンスの早さを心がけているのも、
「頼みやすい」と思ってもらえるための工夫の一つ。
「忙しくてなかなか返事をくれない」と思われないよう、
スピードを重視しています。
Q. 今後、どのような事業展開を考えていますか?
次に活躍するスタッフをどんどん生み出していきたいと考えています。
現在は、私自身が積極的にメディアに出ていますが、
この先私が50歳、60歳になったときに、
30代の起業家が仕事を頼みたいかというと、
年齢的に難しい部分が出てくると思います。
当社は、山本事務所ではなく『社会保険労務士法人WILL』ですから、
いつまでも私が四番バッターで、エースで、監督で、
というのはおかしな話です。
だから、私だけではなく、どんどんエースを育てていかないといけない。
「山本もいるし、〇〇さんもいるし、△△さんもいる。すごい人がたくさん集まっている」
という、みんなが主役の事務所をつくりたいと思っています。
そういった意味でも、今後は自分のメディア展開とは別ラインで、
スタッフのメディア露出も展開したいと考えています。
Q. 次のエースを育てていくために、
職員育成で心がけていることはありますか?
まずはゴールの話をすることを心がけています。
「みんなが強い事務所、二枚看板だけではなく三枚看板、
四枚看板の事務所をつくりたい。その看板になることを目指して欲しい」
という話をするんです。
それで、スタッフが「その看板を目指します」となったら、
そのゴールに向かって自分のペースで進んでもらいたいと伝えています。
目標を設定して、そこから逆算して
「3年後までに何をして、1年後までに何をして、
1カ月後までに何をして、今日は何をしないといけない」
というやり方がありますが、それって結構しんどくて、
自分のペースより早いスピードを求められると心が折れてしまう。
進むペースは人によって違いますから、歩いてもいいし、
自動車でもいいし、新幹線でもいい。
ゴールを目指して自分のペースで一歩一歩確実に進んでいって欲しいんです。
だから、方向性と、そうなったときの未来と処遇を共有して、
プロセスの重ね方は個々に任せています。
Q. 「精一杯やらない」という話がありましたが、
その余裕を持つためのリフレッシュ法を教えてください。
週5くらいでジムに行って筋トレをしています。
「精一杯やらない」と言いましたが、
筋トレに関しては自分を追い込んでいます(笑)。
本当は、布団のなかでYouTubeを見るのが一番好きなんですが、
布団でYouTubeを見ている自分と筋トレに行く自分を想像したときに、
筋トレに行く選択をする自分でありたい。行かない理由はいくらでも言えるんですが、
それを言った時点で、なりたい自分にはなれないと思っています。
だから、「まだ精一杯じゃないよね」って毎日自分に言い聞かせて、
週5回通っています。
あとは、食べ歩きが好きで、インスタグラムによく投稿しています。
「メディア系社労士」で検索していただくと出てきますので、
フォローお待ちしております(笑)。
Q. 最後に、座右の銘を教えてください。
「知識は消えない」という言葉を大切にしています。
お金やモノは使ったらなくなってしまいますが、知識はなくなりません。
そういう意味では、本当の財産というのは、
自分の頭の中にある知識だと思っています。
- プロフィール
大学卒業後、大手商社勤務に勤務。2008年、濱労務管理センター(現・社会保険労務士法人WILL)入社。2010年に社労士試験に合格。2015年1月に、労務コンサルティング業務に特化した会社株式会社nexusを設立し代表取締役に就任。同年10月、社会保険労務士法人WILL共同代表に就任。「メディア系社労士」として、テレビ、ラジオへの出演、Webメディアへの寄稿など積極的にメディア露出を行っている。