新・孫子の兵法
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(本記事は、田口 佳史氏の著書『新・孫子の兵法』=大和書房、2022年2月24日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

負ける理由は組織内部にある

①「走る者」…過度な期待をかけている

走る者とは、逃げ出す者がいるということです。では、会社において社員が逃げるのはどんなケースか。

例えば、社員の能力と、上司が与えた責務のバランスが取れていないケースです。

孫子は「一を以て十を撃つ」と表現していますが、自分の実力の10倍もの過大な責務を与えられたら、本来は優秀な社員であっても「達成できるはずがないな……」と、うんざりするでしょう。仕事を投げ出さないまでも、「仕事をしているふり」だけになってしまうかもしれません。

高い理想を掲げることが悪いとはいいません。しかし、あまり現実離れした理想を掲げても、社員を追い詰めるだけです。

②「弛む者」…規律がゆるんでいる

社員がたるんでいる、だらけている。これは、上司が弱腰で、甘く見られているケースです。

社員がやる気満々でも、上司が的確な指示を出せないとわかると、「こんな無能な上司のいうことは聞いていられない」とそっぽを向く。よくあることです。優秀な部下には、優秀な上司をあてないと、こうなってしまいます。

③「陥る者」…上司の「圧」が強すぎる

弛む者とは逆に、上司からのプレッシャーが強すぎる状態です。

無理な指示ばかりの上司には、部下はとてもついていけない。「パワハラ上司」もこのタイプです。そんな上司のもとでは、モチベーションは上がりません。

④「崩れる者」…気まぐれなリーダーに振り回される

感情的なリーダーが独断で暴走し、社員たちは振り回されてばかり。例えば、競合企業に対するライバル心を燃やすのはいいですが、それが、他人の共感を得られない「私的な恨み」に感じられてしまうと、組織の統率はとれません。

⑤「乱るる者」…リーダーが明確な指針を示さない

上司が、組織としての理念や方針を示さず、場当たり的な命令ばかりをしている状態です。最もよくないのは、数字をあげようと社員同士の競争心をあおる上司。これでは、組織は1つにまとまりません。

⑥「北(に)ぐる者」…現場把握が足りず、見切り発車をしている

リーダーが情報収集を怠り、現場の状況を把握しないままに、戦いに臨もうとしている状態です。戦力の補強もせず、精鋭となる部隊の育成もしない。このような「負けるとわかっている」戦いに駆り出される部下は、いい迷惑です。孫子にいわせれば、「もう勝ったも同然」と言えるまで準備を重ねてから、戦いを挑むべきところです。

これらすべて、リーダーとして人の上に立つ人間の責任です。部下の心情を読み取り、組織にほころびがないか目をこらすのも、上司の務めだと心得ましょう。

新・孫子の兵法
田口 佳史 (たぐち・よしふみ)
1942年東京生まれ。東洋思想研究家。イメージプラン代表取締役会長。新進の 映画監督としてバンコク郊外で撮影中、水牛二頭に襲われ瀕死の重傷を負い入院。生死の狭間で「老子」と運命的に出会い、「天命」を確信する。「東洋思想」 を基盤とする経営思想体系「タオ・マネジメント」を構築・実践、延べ一万人超の企業経営者・社会人・政治家を育て上げてきた。第一人者として政財界か らの信任は厚い。東洋と西洋の叡智を融合させ「人類に真の調和」をもたらすべく精力的に活動中。配信中のニュースレターは海外でも注目を集めている。 田口佳史公式サイト https://www.tao-club.net

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