(本記事は、田口 佳史氏の著書『新・孫子の兵法』=大和書房、2022年2月24日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
できるだけ、戦わずして勝つ
戦わずして勝つためにはどうすればよいのか。孫子はここで、4つの戦いのパターンをあげています。
①情報戦で勝つ
まずはライバル企業の中で、あなたの会社と戦おうか、どうしようかと議論が起こる。その段階で「あの会社は手強いぞ」と思わせられたなら、戦いを未然に防げるかもしれません。
具体的に何をするかというと、広報宣伝活動です。「うちの会社は強いよ、新商品はこんなに好調だよ」といった評判を社外に発信し、強さを見せつけて、相手企業の参入を食い止めます。
②交渉で決着をつける
ライバル企業の参入を、交渉によって防ぎます。交渉といっても、ライバル企業まで直接出向く必要はありません。これも、情報戦を通じて「あの会社は強い」という世論を喚起し、「これでは勝ち目はない、別の市場を攻めよう」と、ライバル企業に白旗をあげさせればいいのです。
簡単にいうと、ライバル企業に「舐められてはいけない」。舐められるのではなく、恐れを抱かせるのです。
それは国同士の外交でも、同じのはず。あまりお人好しな外交をしていると、舐められ、攻め込まれる一方です。むしろ「怒らせたら怖い国だ」と思わせたほうが、平和を保てるのです。
孫子は続けて③兵を討つ、④城を攻める、という2つの戦い方をあげているのですが、これはどちらも「悪い例」です。なぜなら、「実際に兵を動かしている、実際に戦っている」からです。
特に、城攻めは一番の下策です。そもそも城とは「守る」ためにつくられるものであり、これを攻め落とすのは至難のわざ。たとえ勝ったとしても、大きな犠牲は避けられないでしょう。
ビジネスに置き換えるなら、城とはライバル企業の得意領域、本丸にあたります。わざわざ相手の強いところを攻めるなど、愚劣極まりない。それより、自分がオンリーワン企業になれる可能性のある、新しいマーケットをつくったほうが、よほどいいのです。
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