ひとり広報の戦略書
(画像=Zerbor/stock.adobe.com)

(本記事は、小野 茜氏の著書『ひとり広報の戦略書』=クロスメディア・パブリッシング、2022年11月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「リリースを出して終わり」にしないための目標設定

広報活動における「ゴール」を決めると、そのために必要な「露出」と「行動」が見えてきます。

広報活動はメディアへの露出を通じてゴールを達成するものなので、やはり露出における目標は持っておくべきだと思っています。

そこで、業務における「露出目標」と「行動目標」を立ててみましょう。

そして「露出目標」を立てる際は、定量と定性の両面で測ることが非常に重要だと考えています。

なぜなら、いくらメディア露出が多くても、出かたが悪ければ企業にとってはプラスにならないからです。

「質の低い露出」には要注意

上場企業であれば、露出内容によっては株価に大きな影響を与えるネガティブインパクトにつながる恐れもあります。

たとえばよくあるのは、自社の活動が部分的に切り取られてしまい、誤解を招くケースです。背景や意図などが正しく表現されておらず、読み手や視聴者に十分な解釈がされないことがあります。

このような記事が流れたことによってファンが離れ、炎上したり、株価が下がったりという悪影響が出ることは少なくありません。

「メディアに出られればいい!」という安易で粗雑な情報発信や広報活動が、結果として会社に不利益を招く可能性もあることは理解しておかなければなりません。

そのためにも、露出した記事や放送内容が自社を良い方向へ導くものなのか、定性的な分析を怠らないことが大切です。

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メディア露出の目標は「量」と「質」で立てる

そこで私は、メディアに露出した際、次の点をチェックしています。

自社にとってプラスになる媒体だったか?
伝えたいことが伝わる尺・枠だったか?
情報は正確で、ニュアンスは正しかったか?

ファーストステップとして、これらを3段階評価でチェックし、目標との差を確認することをおすすめします。

「3つの数字」を意識して日々の行動目標を決める

行動目標については、おもにプレスリリース配信数・アプローチ数・コミュニケーション数の3つで立てます。

項目はこの限りではありませんが、日々の行動指針になるよう、定量的に定めるのがポイントです。

1つめはリリース配信数です。世の中に何の情報も発しない状態では、「取材」どころか、メディアに存在すら気づいてもらえません。

知ってもらう、興味を持ってもらうきっかけを作るためにも、月に2〜5本くらいのリリースは出せるとよいでしょう。

「そんなにネタがない!」と悩まれる人もいるかもしれませんが、ネタの見つけ方については、第3章で詳しくお伝えします。

そして、大事なのはここからです。

リリースを出すだけではなく、やはりメディアには個別にきちんとコンタクトをとりましょう。

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リリース配信本数だけでなく、アプローチ数の目標も立てる

媒体の記者さんにしっかりと情報を届けることで、取材獲得の確率も格段に上がります。

私の場合は、メディアに対してアプローチした数と、先方から返事があったり、やりとりができたりしたコミュニケーション数も、目標数値に置いています。

リリースを配信したことに満足して、「あとは取材依頼を寝て待つ」という人も多いのですが、リリースの一斉配信だけではなかなか取材獲得は難しいと思います。

闇雲に動くのではなく、ゴールを定め、そこから逆算して日々の行動に落とし込んでいくと、自ずとやるべきことがクリアになってくるでしょう。

その行動の積み重ねが露出につながり、露出の積み重ねがゴールへとたどり着く道筋となります。

メディアとのコミュニケーションについては、第5章で詳しくお伝えします。

広報活動の「効果」は広く捉えよう

メディアに露出して、どれだけ有名になったか。

この視点のみを持ち、広報活動をなんとなくの肌感覚で断片的に評価してしまうことも往々にしてあるのではと感じます。

広報効果の対象は、「顧客」「潜在顧客」「パートナー企業」「金融機関」「社内・会社関係者」「株価」「企業ブランド」「採用」「売上」など、多岐にわたります。

広報活動がもたらす効果も、それだけ多様になります。

たとえば私は、会社員時代にこんなことがありました。

日本へのインバウンド誘致を目的に、海外のインフルエンサーを日本に招き、国内のアグリ(農業)ツアーを企画・実施し、広報活動も大々的に行ったときのことです。

このときのゴールは、アグリツアーに参加したいインバウンド(海外からの旅行者)が増えることでしたが、思わぬ成果が得られました。

この活動のプレスリリースを見たとある県の自治体から、同じような企画を実施したいと問い合わせをいただき、県庁と新たなプロジェクトがスタートしたのです。

その後何年にもわたり、大掛かりなプロモーションを受注・担当することになり、会社にとっても大きな利益創出に貢献することができました。

本来はインバウンド需要の増加への直接的な貢献というゴールを定めていましたが、インバウンド誘致を願う自治体や団体ごとにプロモーションを企画実施するという点で、プロモーション事業の拡大に貢献できました。

このように、直接的な反響があまりなかったとしても、別の利益を得られる可能性もあります。

「あの記事を読んで入社を決めました」と採用につながることもあれば、「リリースの商品を弊社でも取り扱わせてもらえませんか?」と販路拡大につながることもあります。

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直接的な数字だけでなく、広報の効果を広く捉える

メディア露出はただでさえ狭き門であり、成果も未知数です。

それだけを追い求めると、いずれかならず息切れしてしまいます。

露出は重要な目標のひとつにはなり得ますが、それだけに一喜一憂するのはやめましょう。

大切なのは、「あらゆる点から効果を探る」ことと、「一定時間かけて効果を見つめること」です。

ひとり広報だからこそ、自分の気持ちを支えてあげられるのも、自分だけです。

広報という仕事の効果を広く捉え、その重要性を感じながら、長期的な目線で取り組んでいきましょう。

ひとり広報の戦略書
著者紹介:小野茜(おの・あかね)
1981年、千葉県生まれ。カフェ・レストラン・ホテル等の現場経験、外⾷業界向けニュースメディアでの執筆・編集経験を経て、2012年に株式会社ABC Cooking Studioに入社。広報として企業広報および商品・サービス広報全般を担当した後に、新規事業開発・アライアンス担当へ。料理教室をプラットフォーム化し、「作る・食べる・触れる・知る」という体験の場として異業種とのアライアンスに積極的に取り組んだ。約5年在籍した後、2017年1月に独立。あらゆる企業の広報活動を社外から支援する広報パーソンに。2018年から3年間は宮崎県へ移住し地方創生の観点から広報活動に携わり、2021年より東京に戻り多種多様な企業の広報支援に携わる。

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