ひとり広報の戦略書
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(本記事は、小野 茜氏の著書『ひとり広報の戦略書』=クロスメディア・パブリッシング、2022年11月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

一度の接点を「繋がり」に変える3つの「コミュ力」

じつはいま、月に数回、スナックで副業をしています。

スナックは、立場や肩書き関係なく、その場での会話を目の前のお客様と楽しむ一種の独特な空間です。

ここは私にとって、自分のコミュニケーション能力を鍛錬する場になっています。

広報がつくるべきリレーションとは、つまり人間関係です。

そのため、コミュニケーション能力は不可欠です。

とはいえ、私のコミュ力はお世辞にも高いとは言えません。

人見知りはするし、会話も苦手だし、愛想がいいわけでもありません。

いつも笑顔で話の中心にいる人を見ると、心底羨ましいなと思ってしまいます。

しかし苦手意識があるからこそ、自分なりに、そう見せない工夫や研究をしてきました。

そのひとつが、スナックでの副業だったのです。

ここでの経験は、コミュ力強化にかなり役立っていると感じます。

そんな特殊な経験のなかで見出した、広報に必要だと思う3つのコミュ力があります。

それは、「マメさ」「印象付け」「誘い上手」です。

ひとつずつ、ご説明していきますね。

人は「自分の知らないところ」で思い出してもらえると嬉しい

人間関係は、築くことよりも維持することのほうが難しいと思っています。

一度できた仲を保つためには、継続的にコミュニケーションを取り続けることが大切です。

そのためには、マメであることが欠かせないのです。

私が尊敬する広報の大師匠は、日に数十通のメールを送り、毎日数通の手紙や資料などを送っています。

それが強固なリレーションにつながっているところを目の当たりにすると、やはりマメなコミュニケーションと、それを楽しむことが、広報にとって成功への近道だと思い知らされます。

でも、心のこもっていないマメな連絡はむしろ逆効果です。

定型的な告知や一斉連絡、あるいは一方的な告知などを仮にこまめにもらっても、嬉しくはなりませんよね。

第4章で、苦手なことは習慣にしてしまうのがいいとお伝えしましたが、それはタイムマネジメントにおける工夫であって、単なる作業になってはいけません。

相手を想ってコミュニケーションしなければ、良好な関係にはなり得ないのです。

そこで私は、誰かを思い出したときには、たとえ一言でも連絡を入れるようにしています。

気の利いた言葉をかけるというより、挨拶をするくらいのものです。

「ご無沙汰していますが、お変わりないですか? ニュースを見ていて〇〇さんのことを思い出しました。その節は本当にお世話になりました」

みたいな感じです。

ひとり広報の戦略65
誰かを思い出したら、一言でいいから連絡をする

知らないところで自分を思い出してくれるのって、ちょっと嬉しいですよね。

こうした一言からやりとりが始まり、「じつはこんな企画があって、何か情報ありませんか?」と、メディア露出の話に進展することもありました。

話題や情報がなくても、誰かを思い出して「話したい」と思ったら、ぜひ連絡してみてください。

「私から聞いた話」だと思い出してもらうためにできること

広報にとって何よりも悲しいのは、「忘れられる」「認識されていない」ことです。

それでは成果にならないばかりか、次にもつながりません。

そのため誰か新しい人に出会ったら、「〇〇さんはこんな人だったな」と印象付けて、記憶に残すことが重要です。

広報は商品やサービスなどを世に出していく役割なので、自分自身の露出やブランディングは不要。

そう思っている方もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。

情報を伝搬させるために「何を言うか」も大事ですが、「誰が言うか」のほうがさらに大事な時代だと思っているためです。

たとえ同じ情報でも、誰がどんなふうに言うかで記憶に残りやすくも、つまらなくもなります。

だからこそ、「小野さんが言ってたことが興味深くって……」と、私から聞いた話だということをしっかり印象付けることが、情報が伝搬する確率を高めると確信しています。

そのために心がけることは、「見た目の印象」と「話題の印象」のマッチングです。

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自分の「見た目」と「話題」の印象をマッチさせる

たとえば私の場合、ゴルフにハマっているのですが、いい歳して日焼け対策をあまりしていません。

グローブをはめる左手と、日焼けした右手の肌の色がまったく違うので、名刺交換で手を差し出すとよく「ゴルフするんですね?」と気づかれます。

そこで、ゴルフ話をひとつ挟むんです。

すると「小野さんはゴルフする女性だったな」と記憶に残るため、後日に連絡したときも思い出してもらえる確率が高まります。

この「見た目×話題」をリンクさせることが、自分を印象付けるコツです。

さりげない「誘い上手」を目指す

直接だろうが間接だろうが、相手との「接触」が人間関係を深めます。

不快にさせず、さりげなく、受けたくなるように誘う。

そんな誘い上手が、広報においては有利なのです。

誘い上手と言うとなんだかモテテクニックのように聞こえますが、話を聞いてもらう、会ってもらうという約束を取り付けるためには、絶対に必要なことです。

プレスリリースをメールや郵送でひたすら送り続けるだけでは、メディア露出への道はなかなか拓けません。

「断られてもいいからお誘いしてみる」という気持ちを持つことが大切です。

とは言いつつも、お誘いするのはやっぱり少し緊張しますよね。

そこで私は、メールでも対面でも、共通の話題で盛り上がったり、共感し合えたりしたタイミングで「よかったら今度ランチでも……」と、会う約束を提案するようにしています。

たとえばオフィスが近いとか、趣味が同じとか同郷とか、何か共通点が見つかるとその話題で盛り上がりますよね。

そこが狙い目です。共通の話題に関するお誘いをしてみましょう。

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共通の話題をきっかけに、リアルで会うお誘いをしてみる

真っ向からアポイントを取りにいけるメンタルを持っている人は、どんどん攻めていいと思います。

ですが苦手意識のある方や、難しさを感じる方は、せめてこのタイミングでだけでも誘える意識をもっておくとよいでしょう。

そのためには、自分の持っている話題に付随したアポイントの口実を持っておくのがおすすめです。

たとえばワイン好きなら、ワインにこだわったお店の情報。

地方出身者なら、郷土料理を食べられるおすすめのお店などです。

そこまでセットで用意しておけば、共通の話題で盛り上がったときに「いいワインをセレクトするお店があるのですが、よかったら今度行ってみませんか?」と、自然にお誘いできます。

日頃からアンテナを張り、アポイントに使えそうな情報を集めてみましょう。

マメに連絡して覚えてもらい、印象付けによって記憶に残し、さりげないお誘いで会ってもらう。

この3つの力を意識できれば、徐々にリレーションは構築されていくでしょう。

一度できたご縁を一度で終わらせず、大切に繋いでいきましょう。

もちろん、フラれてもへこられない姿勢は忘れないでくださいね。

ひとり広報の戦略書
著者紹介:小野茜(おの・あかね)
1981年、千葉県生まれ。カフェ・レストラン・ホテル等の現場経験、外⾷業界向けニュースメディアでの執筆・編集経験を経て、2012年に株式会社ABC Cooking Studioに入社。広報として企業広報および商品・サービス広報全般を担当した後に、新規事業開発・アライアンス担当へ。料理教室をプラットフォーム化し、「作る・食べる・触れる・知る」という体験の場として異業種とのアライアンスに積極的に取り組んだ。約5年在籍した後、2017年1月に独立。あらゆる企業の広報活動を社外から支援する広報パーソンに。2018年から3年間は宮崎県へ移住し地方創生の観点から広報活動に携わり、2021年より東京に戻り多種多様な企業の広報支援に携わる。

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