ひとり広報の戦略書
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(本記事は、小野 茜氏の著書『ひとり広報の戦略書』=クロスメディア・パブリッシング、2022年11月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

成果を引き寄せる広報活動「5つの姿勢」

このように、誰もが発信でき、スピード感が求められる時代において、「知識」はかならずしも先に必要なものではありません。

これまでの経験を思い返すと、広報になるうえで重要なのは「知識」で頭でっかちになることではなく、それ以上に求められる姿勢があったと感じています。

それは、次の「5つ」です。

「仮面」をかぶる姿勢
「沼」に片足をつっこむ姿勢
自分を俯瞰できる「冷めた」姿勢
振り向かれるまで「片思い」する姿勢
「フラれて」もへこたれない姿勢

ひとつずつ、見ていきましょう。

コミュニケーション好きの「仮面」をかぶれるか

「はじめに」でもお伝えしたように、「広報」とは「PR=PublicRelations」です。

ステークホルダーとの関係値作りがおもな仕事である広報に、「コミュニケーション能力」は必須と言ってもいいでしょう。

ただ、幼い頃から人懐っこくて友達が多いタイプといった、根本的な性格が問われるかと言えば、そうではありません。

なぜなら、私自身がそうではないからです。

人見知りだし、団体行動は苦手だし、友達が多いタイプではまったくない私は、どちらかといえばひとりでいるほうが好きです。

しかし、仕事という場面においては、コミュニケーション好きという「仮面」をかぶることができます。

ひとり広報の戦略4
会話のときだけ「コミュニケーション好きの仮面」をかぶる

もともと、ひとりでも多くの方に会ってお話を聞き、たくさんの人、情報、機会に触れたいし、そこへの興味関心は人より高いと自負しています。

だからこそ仮面をかぶることで、自ら行動することへの抵抗がなくなるのです。

根っからの話し好き、人懐っこい性格でないと務まらないというわけではなく、「広報としての仮面」をかぶり、スイッチを切り替えられればそれでいいのです。

流行りの「沼」に片足だけをつっこめるか

ひとり広報に必要な姿勢、2つめは「沼に片足をつっこむ好奇心」です。

そもそも情報に疎い人には、なかなか務まらない仕事だと思います。

いい意味でミーハーで、つねにアンテナを張って、気になったことはすぐに試してみる姿勢が必要です。

たとえば、おすすめされた映画はその週末に観に行ってしまうといったフットワークの軽さです。

ひとり広報の戦略5
流行っているものや人気のものは、とりあえず試してみる

くわえて、収集した情報にただ「面白かった」「よかった」とのめり込むのではなく、「なぜ人気なのか」と一歩引いて考えるリアリスティックな面も必要です。

情報を通して見える、世の中の動きや変化に敏感であることも大切なのです。

そういった視点で情報を見ることで、時代観に対するリテラシーが構築され、「いまの時代にどんな文脈をどんな言葉で綴ることが適しているか」が自己判断できるようになります。

熱狂する自分を俯瞰する「冷めた自分」がいるか

ひとり広報として求められる姿勢、3つめは「自分を俯瞰する冷めた姿勢」です。

たったひとりで広報活動をしていると、つい自社が伝えたい情報だけを並べてしまいがちです。

それでメディアに取り上げられて当然だと思っている企業や広報担当者も多く目にしてきました。自身や自社への愛は大切ですし、ついそうなってしまうのも十分共感できます。

しかし、メディアや、そのメディアの読者・視聴者側に立った「客観性」で物事を判断することが極めて大切です。

そのため、落ち着いて「冷めたもうひとりの自分」を呼び出せる人は強いのです。

自社のことを知らない人。商品やサービスに興味がない人。

そんなもうひとりの自分を呼び出して、いま行っている情報発信が「面白いかどうか」を眺められることが重要です。

ひとり広報の戦略6
「それを知らない人が見たらどう思うか」を考える客観性を持つ

情報感度が高ければ、必然的に客観性も身につくと思いますが、案外、この要素が抜け落ちているなと感じることが多いのも正直なところです。

見向きもされない相手を思い続けられるか

4つめの姿勢は、「振り向かれるまで片思いする姿勢」です。

話は飛躍しますが、リレーション作りは片思いの恋愛のようだと考えています。

見向きもされていない相手に、興味を持ってもらうことから始めなくてはいけないからです。

そのためには、お礼のご連絡や季節のご挨拶を送るのはもちろん、知り合いの記者さんやディレクターさんが担当した記事や番組を見て感想を送るなどして、自分の存在を認識してもらえるようにします。

ことあるごとにコミュニケーションをとる機会をつくり、継続的な関係性を構築していくのです。

ひとり広報の戦略7
見向きされなくても、マメに連絡をする

それはまるで、片思いの相手に振り向いてもらおうと必死になる学生のようです。

相談や提案がしやすい間柄になるには、しつこくない程度のマメさで「忘れ去られる」ことのない存在にならなければいけないのです。

成果がでなくてもへこたれない「フラれる勇気」があるか

最後の姿勢は、「フラれてもへこたれない姿勢」です。

先ほどお伝えしたように広報とは、100件アプローチして、1割でもリアクションがあればいい世界です。

片思いする力も持ちながら、フラれることを恐れない心も必要なのです。

どんなに優れた戦略を立て、明確な戦術まで描けたとしても、行動なき者に結果が訪れることはありません。

「慎重に10行動して、8成功する」のならば、「荒削りでも100行動して、30成功する」ほうがいいと私は考えています。

成功率でいえば前者の8割に対し、後者は3割と低いですが、成功数で見れば3倍以上の結果が残せるからです。

さらに付けくわえると、受動的な行動力ではなく、能動的な行動力が大切です。「指示さえあればマルチタスクでもうまく捌けます」というタイプもいますが、指示がないと動けないようでは、ひとり広報としては難しいでしょう。

「ひとり広報」は、自分で判断し、自分で行動し、自分の成果を積み上げなければなりません。

「あれもこれもと手をつけて、いっぱいいっぱいになってしまうんです……」と悩むひとり広報さんもいますが、その行動力は立派な能力です。

どんなに小さなことでもいいので、つねに課題を探し、自らのアイデアで解決しようとする姿勢が、その後の活動を左右する要素となります。

ひとり広報の戦略書
著者紹介:小野茜(おの・あかね)
1981年、千葉県生まれ。カフェ・レストラン・ホテル等の現場経験、外⾷業界向けニュースメディアでの執筆・編集経験を経て、2012年に株式会社ABC Cooking Studioに入社。広報として企業広報および商品・サービス広報全般を担当した後に、新規事業開発・アライアンス担当へ。料理教室をプラットフォーム化し、「作る・食べる・触れる・知る」という体験の場として異業種とのアライアンスに積極的に取り組んだ。約5年在籍した後、2017年1月に独立。あらゆる企業の広報活動を社外から支援する広報パーソンに。2018年から3年間は宮崎県へ移住し地方創生の観点から広報活動に携わり、2021年より東京に戻り多種多様な企業の広報支援に携わる。

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