ひとり広報の戦略書
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(本記事は、小野 茜氏の著書『ひとり広報の戦略書』=クロスメディア・パブリッシング、2022年11月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

情報のインプットでは「時代観」をとらえる

メディアからの情報をインプットする際に私がもっとも重視しているのは、「時代観」をつかむことです。

変化の激しいいまの時代においては、流れてくる情報にも日々変化があります。

そうした「時代の流れ」を見極めることは極めて大事な任務です。

時代の波に乗り遅れてしまえば、「いまさらそれ言う? もう遅いよ」と、勘所の悪い企業という印象を与えてしまいます。

また、時代を読み間違えれば、たちまち炎上の種となり、ファンを作るどころかファンが離れていくきっかけになってしまうこともあります。

逆に、時代観がとらえられると、「いまこそ、この会社にインタビューしたい」「この社長に話が聞きたい」と、興味を持ってもらえます。

自社の見え方が変わり、広報のチャンスは大きく広がるのです。

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世の中の情報を見て「いまがどんな時代か」をとらえる

とはいえ、「時代観」をとらえることは簡単ではありません。

広報にとって重要な「時代観」のとらえ方について、私なりの方法をお伝えしようと思います。

「ん? 」の意識でアンテナを張る

日頃の生活や仕事の習慣を大きく変えなくとも、意識を変えるだけで、感じられることは格段に増えます。

そもそも私はズボラな性格で、ストイックに様々なことに取り組むのが苦手です。

そのため、ダラっとした生活の中でも必要な情報を吸収し、学べるようにと、アンテナだけは張り巡らせています

私なりのやり方は、日々触れる情報に対して「ん?」と気を留めることです。

それはなんでもいいのですが、たとえばテレビを見ていて、

「この会社のCM新しくなったな」
「なんでこの人がコメンテーターに選ばれたのかな?」
「この番組、長寿だよな。視聴率取れるのかな」

とか、ぼんやり気に留める程度でかまいません。

それを日常で、極力自然に繰り返しています。

電車に乗ったら乗車した時間と混み具合に目を向けてみたり。

スーパーに行ったら、在庫が少なく売れている商品が何なのか見てみたり。

居酒屋に入れば、「どんな客層が多いのかな?」と見渡してみたり。

好奇心旺盛な子供のように「なんで? どうして?」と疑問を持つのです。

ひとり広報の戦略20
あらゆることに「なぜ?」「どうして?」と疑問をもつ

気になるときは、スマホを取り出してそこからさらに調べることもありますが、気に留めて置くだけでも十分です。

後々、その点と点がつながって線になり、世の中の変化やトレンドとしていち早く察知できるようになるでしょう。

周りにいる人の「行動の理由」を聞いてみる

アンテナを張ることに慣れてきたら、もう一歩踏み込んで「聞いてみる」ことをおすすめします。

いわゆる身の回りの「口コミ」を、意識的に、かつ自然に集めるのです。

じつはこれが、メディアの方々とお話しする際の「いいネタ」になるのです。

たとえばネイルを変えた友人には「今回はどんなネイル? なんでこれにしたの?」と聞いてみます。

ほかにも「夏休みはどうして海外に行くの?」とか「そのスカートかわいいね、流行ってるの?」とか。

他愛もない会話のようですが、私はここで聞いた情報を会話に活用します。

「最近の20代にはネイルサロンに行くより、セルフネイルのほうが主流だそうです」
「今年の夏はサウナ旅が流行っているらしいですね」

こんなふうに、生の声をちょこちょこ話題に出しながら、会話を膨らませたり、取材のきっかけをつかんだりしています。

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周囲の人の行動から時代の「流れ」をつかみ、コミュニケーションに役立てる

あまりになんでも聞きすぎるとうるさい人だと思われそうですが、相手を褒めたり羨んだりしながら行動の理由を尋ねれば、素直に答えてくれるはずです。

こうした小ネタ情報をたくさん持っていると、メディアの人にも「この人からは面白い話が聞けるかも」という印象をもってもらえることでしょう。

事象から「現象」に変わる瞬間をとらえる

もうひとつ大事にしているのが、その事象が「現象」になる瞬間をとらえることです。

とくにマスメディアは、社会のいまを切り取って報道することが多いと思います。

そのため、それが単なる出来事なのか、それとも多発的に起きることなのか、ゆくゆく広がりそうな「現象」なのかで、メディアにとっての価値が大きく変わります。

私も、この「事象から現象への移行」については気をつけて見ているつもりです。

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事象が同時多発し、「現象」に変わる瞬間を見極める

周りの人の声を拾い集めていくと、「あの人もこう言ってた」「この人もそうなんだ」と、複数の意見から「もしかしたら世の流れなのか?」といった仮説を立てられる情報が見えてきます。

あるいは、ウェブメディアで見かける特集やテーマが重なってきたりすると、「この後、テレビに取り上げられるかも」と予想がつくわけです。

先ほど紹介した2つのポイントで「事象」の種を拾い集めて脳にストックしておくと、それが「現象」へと潮目が変わる瞬間がなんとなくつかめるようになります。

これが「時代観を読む」ことだと、私は考えています。

こういった手法によって「現象」がキャッチできたときは、自社のもつ情報と関連づけられないか、考えてみましょう。

自社のSNS 投稿やプレスリリースなどの内容や言葉遣いをあらためてチェックし、その「現象」の一部として自社の情報を提供できないか考えてみます。

あるいは、何か企画を考える際にも、こうした時代観を念頭に置いたうえで考案してみてください。

「現象」に乗れそうな自社のサービスや商品があれば、すぐさま記者さんにネタを持ちかけてみるのです。

セミナーのタイトルひとつとっても、その時代観を上手に駆使することで集客や注目度を左右することもあるため、馬鹿にはできません。

ただの「マネジメント研修セミナー」よりも、「出社とリモートのハイブリッドな時代の社員マネジメント」と言われたほうが、「いま、聞きたい」と純粋に思えますよね?

現代は、社会の潮目が変わる周期がどんどん短くなり、多様な変化が訪れる時代です。

目に見えない情報の渦やうねりをしっかりと感じ取れるようになっていきましょう。

ひとり広報の戦略書
著者紹介:小野茜(おの・あかね)
1981年、千葉県生まれ。カフェ・レストラン・ホテル等の現場経験、外⾷業界向けニュースメディアでの執筆・編集経験を経て、2012年に株式会社ABC Cooking Studioに入社。広報として企業広報および商品・サービス広報全般を担当した後に、新規事業開発・アライアンス担当へ。料理教室をプラットフォーム化し、「作る・食べる・触れる・知る」という体験の場として異業種とのアライアンスに積極的に取り組んだ。約5年在籍した後、2017年1月に独立。あらゆる企業の広報活動を社外から支援する広報パーソンに。2018年から3年間は宮崎県へ移住し地方創生の観点から広報活動に携わり、2021年より東京に戻り多種多様な企業の広報支援に携わる。

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