学校給食が食材高騰の影響を受けて揺れ動いている。学校現場では、従来あったデザートがなくなり、唐揚げが3個ついていたものが2個になるなど品数減が実際に起きているようだ。
東京都内の小学校栄養職員の方に食材費高騰の影響について話を聞くと、「今まで自分が経験したなかで、最悪の事態だ」と危機感を示した。昨年と比べ、同じ献立でも1食約40円上昇している場合もあり、全体で15%ほど値上がりしているという。
現行の対策を尋ねると、「安心安全で、かつ安価な新しい食材を探そうと数社から見積をとり、検討している。例えば、ミミガー(豚の耳介)は今まで使っていなかったが、比較的安価な食材だから、沖縄料理の献立の日に野菜と一緒に和え物を作る予定。また缶詰や水煮などの加工品は使わず手作りにしたり、あんこも乾物からゆでて手間をかけることでコストダウンを図っている」と語った。
さらに頭の痛い問題が、油の値上げだ。「お手頃価格の肉や魚は、どうしても焼いたり煮るだけではパサついてしまう。揚げ物にするとおいしくなるが、それが難しくなってきている」と、価格面から給食をおいしくできないことに苦渋をにじませた。
そのような中、文科省は物価高騰に伴う学校給食費の値上げを防ぐため、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(以下、臨時交付金)を活用し、各自治体の判断で給食費値上げなど保護者の負担増加を抑えることを可能にする事務連絡を4月に通知した。
同省が9月9日に公表した調査結果によると、学校給食費の保護者負担軽減に向けた取り組みを「実施または予定している」と回答したのは、1,793自治体のうち1,491自治体となり、全体の83.2%。そのうち、臨時交付金を活用を活用しているのは1,153自治体で77.3%となった。
先述の学校栄養職員の方の市では、1学期まで1ヶ月当たり1人100円の補助が出ていたが、2学期からは臨時交付金から210円の補助が決まった。しかし「これでも安心とは言えない」と不安を募らせる。コストカットの取り組みは続けていくという。
学校に給食用食品を届ける卸企業の代表は、「給食現場では、従来あったデザートがなくなる、主菜や副菜についても品数減が起こるなど影響が出ている」と現状を語る。今後について、「価格を抑えるために栄養価を下げたり、国産食材から外国産へ切り替わることがあってはいけない。これまで築き上げてきた学校給食を守り、高い品質を維持するために、臨時交付金の活用が広がるよう自治体・学校を訪問したい」と語った。
文科省は、物価高騰に対する学校給食費の保護者負担を軽減するため、臨時交付金を積極的に活用するよう、全国の学校給食担当部局に依頼している。