正しい相続手続き,相続法改正,自筆証書遺言
(写真=ベンチャーサポート法律事務所編集部)

これまで長らく運用されてきました相続法制度が平成30年度に改正がなされました。

これによって、数多くのメリットを享受することができるようになったのですが、この記事では自筆証書遺言の手続き的要件の改正点について少し、皆様にお伝えできればと思います。

相続法改正により手続きが簡素化されました

自筆証書遺言をすでに作成されたことのある方はご存じであると思いますが、自筆証書遺言には想像以上の形式的要件を要求されます。

今回の相続法改正により、具体的にどのように変更があったのかについてみていきたいと思います。

相続法改正前の自筆証書遺言は無効となりやすかった

自筆証書遺言はその名称の通り遺言書の記載内容すべてにおいて、「自筆性」を要求されていました。

すなわち、遺言書の本文が長くなればなるほど手間がかかるということを意味し、パソコンを使用して簡単に作成するということが認められていませんでした。

また、作成した遺言書には、適切に具体的な日付を記載し、ご本人が署名捺印をしなければいけません。

ところが、現在の日本はご高齢の方の人口が非常に多くなり、なかなか遺言を作成される方が長文を最後まで書くということが難しくなってきました。

そのため、現代社会における現状に即して手続きの見直しが検討されたということです。

自筆証書遺言は相続法改正で遺言の作成が容易になった

正しい相続手続き,相続法改正,自筆証書遺言
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それでは、自筆証書遺言に関する相続法制度の改正点を見ていきましょう。

遺言書の本文自体は自筆しなければいけないという要件は残念ながら変更ならずですが、自筆証書遺言という名称のままであるとおり、自筆性を排除することは現状できないのでしょう。

その代わりとして、財産目録の部分に関しては、自筆でなくともパソコンを使用して記載することが認められるようになりました。

これを少しお読みいただいただけでは、財産目録の部分だけパソコンで記載することができても大して変化はないのではないかという疑問を持たれることもあるでしょう。

しかしながら、財産の種類が多い人にとっては、これは非常に有益な改正といえます。

なぜならば、財産の種類が多い人の場合には、遺言の本文よりもはるかに多い枚数になることが少なくないからです。

例えば、現金のほかに、預貯金・株式・不動産・その他権利など様々な相続財産があればあるほど、記載内容が増えますし、万が一訂正が発生した場合も大変です。

本相続法改正は既に施行されています。

したがって、すぐにでも本制度を利用して、このメリットを享受することができますので、是非試してみてください。

自筆証書遺言の保管により紛失リスク予防へ

自筆証書遺言の特徴として、書き終わった遺言書をご自身で保管をしておかなければいけないというデメリットがありました。

遺言書の種類としては、自筆証書遺言のほかに、公正証書遺言と秘密証書遺言とがあります。

公正証書遺言を選択した場合には、遺言書の原本を公証役場にて保管できることになっていますので、万一の紛失リスクについて考慮する必要がありませんでした。

これに対して、自筆証書の場合には、保管をしていた上で、途中で保管場所がわからなくなってしまったり、あるいはきちんと保管していたはずの遺言書が過失なく紛失してしまったりというような場合が起こりえたのです。

これでは、自筆証書遺言を作成していた方にとっていつまでも安心することができません。

そこで相続法制度が改正されて、作成した自筆証書遺言を法務局が保管するサービスがスタートしました。

これによって、公正証書遺言と同じ効果として、紛失リスクの予防が担保されることとなりました。

すでに本制度を利用されていらっしゃる方は、安心される方も少なくないのではないでしょうか。

公正証書遺言の遺言には、亡くなった方の遺言書を発見して開封する前に家庭裁判所にて検認手続きを経ることとなっていました。

相続法改正後には、法務局保管制度を利用することにより、この検認手続きも免除されることになりました。

これまでは、自筆証書遺言よりも信頼性の高い公正証書遺言を作成される例が非常に多くありました。

しかしながら、今後は自筆証書遺言を選択される方もますます増えてくるのではないかと予想されます。

まとめ

今回は、自筆証書遺言の特徴について、相続法制度改正による変更点を中心にお伝えいたしました。

大きく説明すると、作成段階においては自筆性の要件の緩和のメリットが、そして作成後の保管段階としては紛失リスクの予防として法務局の保管制度を利用することで、公正証書遺言に近しい利点を受けられることになりました。

本記事を参考に、自筆証書遺言における相続法制度改正点を踏まえて、ぜひ作成を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:ベンチャーサポート法律事務所