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近年、ニトリホールディングスの島忠に対するTOB(2020年)、NTTのNTTドコモに対するTOB(2020年)など企業買収のニュースで「TOB」という言葉を耳にする機会が増えています。

本記事ではTOBの概要、買収側、対象企業側それぞれの視点によるメリット・デメリット、国内で行われた事例を解説していきます。

TOB(株式公開買い付け)とは?

TOBとは、“Take-Over Bid”の略で、「株式公開買い付け」と呼ばれるM&Aの手法の一つです。日本では証券取引法上の制度として1971年に導入されました。

TOBは、会社の経営権に影響が生じるような大規模な株式の取引の際に行われます。

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買収企業側(公開買い付け者)は、買収対象企業の株式を保有する不特定多数の株主に対して、事前に「買い付け期間・価格・株式数」を公告し、株式の買い付けを呼びかけます。

対象銘柄を保有している株主は、通常の取引市場ではなく、TOB公告に記載の証券会社などに申し込み、取引所外で株式を売却します。 (株主は通常通り取引市場で株式を売却したり、売却せずに保有し続けることも可能です。)

TOBの目的

TOBの主な目的は、対象企業の経営権の取得や子会社化です。
(その他、自社株を集める目的でも行われる場合があります。)

会社法では持ち株比率により、以下のような権利を取得できます。

持ち株比率/保有権利の一例

持ち株比率 保有権利
100% すべて自分の意志で決定する事ができる(完全子会社化)
66.7%以上(2/3以上) 株主総会の特別決議(※)を単独で成立させられる
(※会社の合併、事業譲渡の承認など)
50.1%超(1/2超) 株主総会の普通決議(※)を単独で成立させられる
(※取締役の選・解任、配当など)
33.4%以上(1/3以上) 株主総会の特別決議を単独で阻止できる
3%以上 株主総会の招集、会社の帳簿等、経営資料の閲覧ができる
1% 株主総会における議案提出権

対象企業の株式を50%超取得して、株主総会の普通決議が単独で成立可能になれば、すなわち経営権を取得したことになります。

TOBが証券取引所外で行われる理由

証券取引市場内で株式の大量の買い注文が行われると、ほかの投資家の注目を集めて株価が急上昇しかねません。
そのため、買い付け者は想定していた価格で株式を購入できないリスクが生じるため、証券取引所外で取引が行われます。

同様の理由により、TOBを行う必要がない買い付けの場合でも、証券取引所内での大量買い付けは避けることが望ましいでしょう。

TOBの買い付け価格について

TOBにおける買い付け価格は、市場価格よりも高めに提示されることが一般的です。この上乗せ分は「プレミアム」と呼ばれます。

対象企業側は市場価格よりも高い価格を提示されることで、売却の判断がしやすくなります。一方で買い手側は、市場価格より割高になるものの、大量の株式を集められる可能性が高くなるでしょう。なおTOBのプレミアムは、市場価格の約30~40%割増が相場です。

TOBとMBOの違い

MBOとは、“Management Buy-Out”の略で、日本語では「経営陣買収」ともいわれます。企業の経営陣が経営の見直しや上場廃止などなどを目的として、既存株主から自社の株式を買い取る手法です。

TOBと同様にM&Aの手法のひとつですが、以下のような違いがあります。

TOB MBO
株式の買い手 外部の第三者 内部の現経営陣
目的 ・シナジー効果を得るため
・売却益を得るため
・経営の見直しのため
・上場を廃止するため
・中堅・中小企業が事業承継を行うため
買収対象の企業 上場企業 上場企業、中堅・中小企業

上場企業の現経営陣がMBOで自社株を買い付けるにあたり、その目的によってはTOBの手法を選択することも考えられます。

TOB実施のルール

金融商品取引法では、一定の大規模な株式の取引によって特定の株主が優遇されたり、不透明な取引が発生することを防ぐため、具体的に次のようなルールを設けTOB実施を義務付けています。

「5%ルール」

証券取引所外での買い付けによって、株式の保有割合が5%を超える場合は、TOBの実施が義務づけられています(金融商品取引法27条2第1項1号)。これを「5%ルール」といいます。株式を5%以上保有すると株価や経営に影響を及ぼすため、この5%ルールが定められています。ただし、以下の場合はTOBを行う義務はありません。

5%ルールが免除される場合
TOBによる買い付けを行う相手方の人数と、TOB実施日前の60日以内に、証券市場外にて買い付けを行った相手方の人数の合計が「10名以下」の場合

「3分の1ルール」

買い付け後の株式の保有割合が3分の1を超える場合も、TOBの実施が義務づけられています。これを「3分の1ルール」といいます。3分の1ルールは証券取引所、内外の取引いずれにも当てはまり、主に3つのケースが存在します。

①証券取引所の市場外の取引で、60日間で10名以下の株式から買い付けを行って3分の1を超える場合
②証券取引所の市場内で「特定売買」(ToSTNeT取引、J-NET取引等を通じて行われる立会外取引)で買い付けを行って3分の1を超える場合
③3ヶ月の間に全株式の10%超相当の買い付けを実施、そのうち5%超を場外または特定売買で買い付けた場合

ただし、以下の場合は3分の1ルールが例外的に免除されます。

3分の1ルールが免除される場合(免除適用の一例)
・企業グループで 3分の1超の議決権を所有する会社の株券等のグループ内での移動
・新株予約権の行使
・「兄弟会社」等からの買い付け等

「友好的TOB」と「敵対的TOB」の違いとは

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TOBは「友好的TOB」と「敵対的TOB」の2種類にわけることができます。 それぞれについて詳しく見ていきましょう。

友好的TOBとは

友好的TOBとは、買収対象企業の経営陣に同意を得てから行うTOBのことです。

主に良好な関係にあった企業同士が、その関係性を維持したまま親会社・子会社になる(子会社化する)ことを目的として実施されます。なお、日本で実施されるTOBは友好的TOBが大半を占めます。

友好的TOBの事例

NTTによるNTTドコモに対するTOB(2020年)
2020年11月、通信事業の競争力強化のため完全子会社化を目的に行われたTOBが成立。公開買い付け額は国内最高額の約4.3兆円にのぼった。
伊藤忠商事によるファミリーマートに対するTOB(2020年)
2020年8月、ファミリーマートの完全子会社化を目的に行われたTOBが成立。ファミリーマートは同年11月に上場廃止になった。
ZホールディングスによるZOZOに対するTOB(2019年)
2019年11月、EC事業強化のためZOZOの子会社化を目的に行ったTOBが成立。買収金額は4007億円にのぼり、ZOZOは上場維持を選択した。

敵対的TOBとは

敵対的TOBとは、買収対象の企業の経営陣から同意を得ないで一方的に行うTOBを指します。
主に対象企業を実質的に支配したり、経営陣を刷新したりする目的で実施されます。

敵対的TOBの事例

コロワイドによる大戸屋ホールディングスに対するTOB(2020年)
2020年9月、コロワイドによるTOBが成立。当初コロワイド側は友好的TOBを予定していたが、大戸屋側の経営陣との意見の相違や、大戸屋側の急速な業績悪化を救うため敵対的TOBに踏み切った。
伊藤忠商事によるデサントに対するTOB(2019年)
2019年3月、伊藤忠商事によるTOBが成立。長年協業関係にあった両社だが、成長戦略の違いから対立を徐々に深め、伊藤忠側は敵対的TOBに踏み切った。国内大手上場企業同士の初めての敵対的TOB事例となる。
米国投資ファンドによるブルドックソースに対するTOB(2007年)
2007年5月、当時筆頭株主だった米国投資ファンドスティールパートナーズの関連会社がTOBを実施。ファンド側がTOB成功後の経営方針や投下資本の回収方法などを明確にしなかったことから、ブルドックソース側はTOBに反対の意見を表明し、買収防衛策を発動。ファンド側は「株主平等原則違反」と「著しく不公正な方法」を主張したが、最高裁はファンド側の許可抗告を棄却した。

敵対的TOBに対する買収防衛策

敵対的TOBに応じても買収対象企業の多くにとってメリットはほとんどありません。そのため、敵対的TOBの対象となった企業は、あらゆる買収防衛策を講じて抵抗します。それでは、敵対的TOBの具体的な買収防衛策について見ていきましょう。

第三者割当増資
特定の第三者に新株を引き受けてもらうことで、増資する手法です。敵対的TOBの対象となった企業が、友好的な第三者に新株を発行して株式の希薄化をはかり、買収を仕掛けてくる企業の持ち株比率を下げる直接的な防衛策として用いられます。ただし既存の株主から反発を受けやすいというデメリットがあります。

ホワイトナイト
敵対的TOBの対象企業が、友好的な第三者(ホワイトナイト)を見つけて株式を売却し、買収企業が目標株式数を取得できないようにする手法のことです。敵対的な企業に買収されることよりも友好的の傘下に入ることを選択し対抗します。
ホワイトナイトとなる企業にとっては予定外のM&Aとなるため、新株予約権の付与など有利な条件が提示されるケースが多く見られます。

黄金株
黄金株は拒否権付株式と呼ばれる種類株式の一つであり、株主総会の決議に対する拒否権を有する点が最大の特徴です。黄金株が発行されている会社では株主総会に加えて「種類株主総会」を開催し、黄金株を持つ株主に敵対的TOBに対する決議に対し拒否権を行使してもらいます。通常の株式より強力な権限が付加されているため、扱いには非常に注意が必要です。

パックマン・ディフェンス
買収対象業が買収を仕掛けてきた企業に対して、逆にTOBを実施、つまり買収を仕掛ける手法です。同名のテレビゲームのシステムに似ていることから名づけられました。敵対的TOBを仕掛けてくるほどの資金力がある企業を相手にするため、対象企業自身も相応の資金力がないと実行は不可能です。また、市場の注目を集め、買収企業側も第三者からの買収対象になる可能性が生じます。双方にとって非常にリスクの高い手法なので、日本ではあまり例をみません。

ポイズンピル
ポイズンピルは(Poison Pill)は「毒薬」の意味で、企業のM&Aにおいて「毒薬条項」と呼ばれています。買収対象企業が、敵対的TOBを仕掛けてきた買収企業以外の株主に対して新株を発行し、時価よりも安くする新株予約権を与える方法です。買収企業の持ち株比率を下げることを目的とします。ただし新株を発行すると株式が希薄化し、既存の株主から反発を受ける可能性があります。前述のブルドックソースの事例では、国内で初めてポイズンピルによる防衛が成功しました。

ゴールデンパラシュート
一般的に敵対的買収後は、対象企業の経営陣や役員は解任されます。そのことを逆手にとり、あらかじめ多額の退職金等を支払う契約を締結し買収コストを増大させることで、買収企業に買収の意欲を失わせる防衛策です。対象企業から経営陣が脱出する様子からゴールデンパラシュート(金の落下傘)」と名付けられています。

プットオプション
市場価格(時価)に関わらず、あらかじめ決められた特定の価格(権利行使価格)で期間内に株式を売却できる権利のことです。株主にプットオプションを与えておくことで、敵対的TOBを行った買収企業は、権利行使価格で買い取りに応じなければなりません。権利行使価格が買収企業にとって割高な場合は、買収を抑制する効果があります。

TOBのメリット

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「TOBを実施する企業側」と「TOB対象となった企業側」の両面から、TOBのメリット・デメリットをそれぞれみていきましょう。

TOBを実施する企業側のメリット

まずはTOBを実施する買収企業側、つまり公開買い付け者にとってのメリットは以下の3つです。

1. 買収成立までの見通しが立ちやすい
取引市場を通した株式の大量買い付けは、株価が想定外に急上昇してしまうこともあり、最後まで費用の見通しが立たない場合が少なくありません。一方でTOBは、あらかじめ買い付け期間・買取株数・価格を公開してから実施します。買収成立までどれくらいの期間を要するか、見通しが立ちやすいことがメリットです。

2. 株価変動の影響を受けない
TOBはあらかじめ公開した価格で株式を買い付けるので、市場変動の影響を受けません。
一方、通常の取引市場を通して買い付ける場合は、株価の変動によって想定外の費用や時間がかかることもあります。

3. 効率的に株式を取得できる
目標株式数に満たなかった場合はキャンセルができるため、効率的な株式の取得が可能です。TOBでは買い取る株式数に制限を設けることが可能であり、目標株式数に満たない場合は取得しないことも選択できます。
一方で取引市場を通して株式を買い付ける場合は、目標株式数に満たなかったとしてもキャンセルは無効です。

TOB対象となった企業側のメリット

TOB対象となった企業側のそれぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。

1. 市場価格よりも高く株式を売却できる
TOBでは、市場価格に30~40%のプレミアム分が上乗せされた価格を提示されることが一般的です。対象企業にとっては、直近の市場価格よりも高く売却できるというメリットが得られるでしょう。さらに、TOBで高いシナジー効果が認められる場合は、プレミアム分がより上乗せされたり、より高い価格を提示する別の買収企業があらわれたりします。

2. 経営状況の改善に期待できる
友好的TOBでは、買収企業からの資金が投入されることにより、経営基盤の安定および経営状況の改善に期待できます。買収対象の企業は、今まで資金不足で着手できなかった事業拡大や設備投資も見込めるようになるでしょう。

TOBのデメリット

「TOBを実施する企業側」と「TOB対象となった企業側」には、以下に挙げるようなデメリットもあります。

TOBを実施する企業側のデメリット

TOBを実施する企業側のそれぞれのデメリットについて、詳しく解説していきます。

1. 取引市場で買い付けるよりも高いコストがかかる
TOBでの買い付け価格は、市場価格にプレミアム分を上乗せすることが一般的です。したがって、TOBを実施する企業側は、取引市場を通して株式を買い付けるより高いコストがかかります。

2. 敵対的TOBは買収の成功率が低い
過去の事例をみても、敵対的TOBは友好的TOBよりも買収の成功率が低い傾向にあります。なぜなら、敵対的TOBを仕掛けられた買収対象企業は、防衛策を講じて抵抗してくるからです。たとえ買取が成立しても、想定外の買収費用がかかったり、目標株式数を取得できないことが多いでしょう。

TOB対象となった企業側のデメリット

TOB対象となった企業側のそれぞれのデメリットについて、詳しく解説していきます。

1. 経営権を奪われる
TOBを行う企業の目的は、買収対象の企業の経営権を取得することです。逆にいえば、買収対象の企業の経営陣は、経営権を奪われることになります。経営権を奪われれば、当然ながら経営陣は買収企業の経営方針に口を出せません。敵対的TOBの場合は、今まで推進してきた事業を縮小されたり、望まない経営方針に転換されたりするリスクもあるでしょう。このようなリスクを回避するため、敵対的TOBを仕掛けられた企業は防衛策を講じて、何としてでもTOBを阻止しようとします。

2. 防衛策が株主に反対される可能性がある
敵対的TOBの防衛策を講じたとしても、株価が下がるなどの理由から既存株主の反発を受ける可能性もあります。たとえば、新株を発行する「ポイズンピル」は株価の低下を招くため、既存株主に損失を与えるリスクをはらんだ防衛策といえます。また、防衛策が成功して敵対的TOBを阻止したとしても、結果的に株価が下がって株主が損失を被るリスクも考慮しなければなりません。

保有株式がTOBの対象になった際の対応(対象企業の株主)

自分が保有する株式がTOBの対象となった際に、TOBに応じる場合、応じない場合それぞれの対応について紹介します。

TOBに応じる場合

「TOBに応じる」場合は、上述のとおり市場価格よりも高値で株式を売却できるメリットがあります。プレミアムは市場価格よりも30~40%程度高いことが一般的であるため、お得に株式を売却したい場合におすすめです。

TOBに応じる場合は、取引市場を通して株式を売却する際にかかる売買手数料もかかりません。ただし、買収企業が買い付ける株式数に上限を定めている場合は、上限に達した時点でTOBに応じても売却できない場合がある点に注意が必要です。

TOBには応じない場合①(取引市場経由で売却)

「TOBに応じない」場合の1つ目の選択肢は、取引市場経由で株式を売却することです。一般的にTOBが公開されると、対象銘柄はTOBでプレミアム分が上乗せされた価格付近まで値上がりする傾向にあります。

したがって、タイミングを見計らって取引市場経由で株式を売却すれば、市場価格でも十分に売却益を得られます。
取引市場経由であれば、目標株式数に達しなかったために買い付けがキャンセルされる事がないため、株式を確実に売却して利益を得たい場合におすすめです。

TOBに応じない場合②(保有し続ける)

「TOBに応じない」場合の2つ目の選択肢は、TOBが公開されてからも対象銘柄を保有し続けることです。ただし、TOB成立後には株価が元の水準に戻る傾向にあります。

保有し続ける場合の注意点は、TOB成立後に買収対象の企業が上場廃止となった際に、TOBの買い付け価格で強制的に株式を売却しなければならないことです。これを「スクイーズアウト」といいます。

そのほか新聞などで公告された後、対象銘柄を市場で購入してTOBに申し込めば応募することが可能です。(ただし、対象銘柄がTOBの買い付け価格よりも安く購入できた場合に限ります。)

TOBの手続き

TOBは、買収企業による情報開示(公開買い付け開始の公告、株式売却の募集)によって始まります。それを受けた買収対象会社の意見表明等を経て、買い付け期間が終了すると買い付け数量等が確定され、株式の買い付け代金の決済が行われて、TOBが終了します。

実際は、買い付け期間中に対象企業が前述のような買収防衛策を講じるなどの状況が生じ、買い付け条件の変更やTOBの撤回等の検討を迫られるケースもあります。ここでは主な手続きの流れを見ていきましょう。

①公開買い付けの公告・届出書の提出

株主に公平に売却機会を与えるため、買収企業はまず公開買い付けの目的、買い付け期間、買い付け価格、買い付け予定株式数等を公告する必要あります。公開した同日、公告内容を記載した公開買い付け届出書の提出も求められます。

なお、買い付け期間は、株主が売却を検討するために必要な期間として20~60営業日と定められています。
公告は、金融庁が運営するEDINET上の電子公告と新聞公告のいずれかを選択できますが、いつでも内容を確認できる電子公告が普及しています。

②意見表明報告書の提出・回答

買収対象会社は、公告日から10営業日以内に公開買い付けに対して賛成か反対か立場を表明した「意見表明報告書」をEDINETを通じて内閣総理大臣に提出する必要があります。意見表明報告書の写しは、買収企業や金融商品取引所等に送付します。

報告書には意見のほか、公開買い付け者に対する質問を記載することもできます。
買収企業側は報告書に質問が記載されている場合、5営業日以内に報告書に回答を記載し、同様にEDINETを通じて内閣総理大臣に提出、対象企業や金融商品取引所等へ写しを提出する必要があります。

両社の主張・反論を明確に示す意見表明報告書は、株主がその後投資判断を行う際の重要な手掛かりとなるため提出が義務づけられています。

③公開買い付け説明書の作成・交付

公開買い付け届出書の内容に加えて、公益または投資家保護のために必要な事項を記載した内容の公開買い付け説明書を作成し、売却予定の株主に対してあらかじめまたは買い付けと同時に交付を行います。

④TOBの結果公表

公開買い付け者は、買い付け期間の最終日の翌営業日に「応募があった株式数」「その他所定事項」を公告、もしくは新聞やテレビなどメディアを通じて公表する必要があります。そして公告または公表と同日に、その内容を際した公開買い付け報告書を提出します。

そのほか:公開買い付け撤回届出書の開示

原則的に、公開買い付け開始公告をした後は撤回することは認められていません。ただし、開始公告や公開買い付け届出書に撤回条件が記載されている場合は、撤回が認められます。

終わりに

以上、TOB(株式公開買い付け)の概要やメリット・デメリット、手続きについて紹介してきました。 TOBは企業の経営権の取得や子会社化が主な目的ですが、日本の中小企業のTOBは友好的TOBが成立しやすい傾向にあります。敵対的TOBはハイリスク・ハイリターンの手法であることや、友好的TOBと比べて買収の成功率が低いことが理由として挙げられます。

また、日本の企業の特徴である「株式持ち合い」も理由として考えられるでしょう。株式持ち合いは、複数の企業がお互いの株式を保有する状態のことです。
日本では外資による株式買い占めや経営乗っ取りへの対処として、株式持ち合いが定着した背景があるため敵対的買収が採用しにくい要因の一つとも言えます。
TOBを検討されている買い手企業の経営者の方は、経験豊富な専門家と連携し、どの手法を採用するか慎重に検討するようにしましょう。

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著者

M&Aコラム
M&A マガジン編集部
日本M&Aセンター
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