ISRAERUウェブマガジンの読者には、既にイスラエルに何らかの関わりのある方々だけではなく、イスラエルに興味があって機会を見て旅行してみたい、仕事でイスラエルとの関わりができたので色々知りたくなって調べている、というような方々も大勢いるのではないだろうか。そんな方々に役に立つであろう本『ISRAELI《イスラエル人》のビジネス文化』が、イスラエル・ユダヤを専門とする出版社ミルトスから9月12日に出版される。

ISRAELI《イスラエル人》のビジネス文化
オスナット・ラウトマン (著) / 新井 均 (翻訳)
出版社:ミルトス
発売:2022年9月12日
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著者はイスラエル人の組織コンサルタント、オスナット・ラウトマンである。著者は、多くの多国籍企業の経営者などをクライアントとしてコンサルティングを提供するなかで、彼らが“イスラエル人と一緒に仕事をする難しさ”について語ることが多いことに気がついた。既にビジネスでイスラエル人と関わりを持った方であれば多かれ少なかれ経験があると思うが、イスラエルの人々は議論好きであり、熱心に自分の意見を述べたり、質問をしたりする。ともすれば人の話をあまり聞かずに自分の考えを述べる方に力が入ることも多い。また、あまり婉曲な言い回しをすることなく、良いものは良い、悪いものは悪い、と大変ストレートであることもよく知られた特徴の一つである。

また、イスラエル人は、日本人やドイツ人のように仕事の計画をしっかり立ててそれに沿って進めるというよりは、まずはアイデアに基づいてやってみて、それが上手くゆかなければ別の道を探す、というような臨機応変のアプローチを取ることも多く、様々な国籍の人が集まった多国籍企業でのチームなどでは仕事の進め方自体でぶつかることも多いようだ。

このようなケースに関する相談も数多く経験した(自身がイスラエル人である)オスナットは、様々な国のビジネスマンとイスラエル人との比較・分析を行い、イスラエル人が他国人からどのように見られているのかを研究するなかで、彼らを特徴づける文化的な背景を明らかにした。それが彼女が開発したISRAELITMモデルである。その詳細は本書を読んでいただきたいが、ISRAELI(イスラエル人)のそれぞれの文字が

  I Informal《形式張らない》

  S Straightforward《単刀直入な》

  R Risk-taking《リスクを取る》

  A Ambitious《野心的な》

  E Entrepreneurial《起業家精神にあふれた》

  L Loud《声が大きい》

  I Improvisational《即興的な》

という、イスラエル人の特徴をよく表す単語の頭文字になっている。

オスナットは、多くのビジネスパーソンへのインタビューから 得た実例も含めてその一つ一つをわかりやすく解説するとともに、異文化の人々はこれらの特徴にどのように対処すべきか、という処方箋も提示した。いわば他国のビジネスパーソン向けの“イスラエル人の取扱説明書”であるとも言える。同時に、イスラエル人に向けても、それぞれの彼らの特徴が異文化のビジネスパーソンにどのように受け止められているのか、を示すことで、グローバルに活躍するイスラエル人にとって自己を客観視するための参考書ともなっている。

我々日本人にも参考になる一例を紹介すると、本書のパート2でオスナットはイスラエル人と日本人とが対極にある特徴をハーバードビジネスレビューの論文をもとに解説している。それは「交渉」の際にどれだけ“感情を表に出すか、出さないようにするか?”という軸とどれだけ“対立的になるか、対立を避けようとするか?”という2つの軸で、各国の人々をポジショニングした4象限の図である。

本書74ページより
(画像=本書74ページより)

この分析によれば、イスラエル人は“交渉の場では対立を避けることなく感情を素直に表に出す”人々であるのに対し、日本人は“対立することを避けようとし、感情も表に出さない”という対極の位置にあることがわかる。様々な国の人々とビジネスで付き合う場合には、このような理解をもっていることがお互いにより良い関係を構築するための鍵となることが想像できるのではないだろうか。

訳者である私は数年前にこの本のオリジナルに出会い、自身が2007年からイスラエル人・企業とビジネスをしてきた経験を通して直面したことが見事に整理されていることに思わず膝をたたいた。そして、本メディアにも2021年4月に「イスラエルとのビジネスを始める前に読みたい一冊」という紹介記事を寄稿した。その記事が偶然ミルトスという出版社の社長、谷内意咲氏の目に止まり、本書を翻訳する機会を頂いたのである。

これまでいくつかのWEBメディアにイスラエルに関する記事を書く仕事は4年ほど続けてきたが、翻訳を仕事としてしたことはなかった。しかし、15年間イスラエル人・企業との仕事をするなかで本書で解説されているいくつかの論点を実体験していたこと、また、自身がイスラエル人に感化されCHUTZPA(フツパ:大胆さ、厚かましさ)精神が少々身に付いてきたこともあり、未体験の翻訳という仕事を喜んでやらせていただくことにしたのである。

異文化は、一般に自分の文化・経験をものさしとして理解することになる。その意味でも本書を繰り返し読んで日本語化するという作業を進める中で、イスラエルのビジネス文化を学ぶだけではなく、日本の文化や更には自分自身の行動や考え方を再認識することにもなった。大変勉強になる経験をさせていただいたことに感謝している。

本書の核となる ISRAELITM で説明される特徴は、イスラエル人がなぜイノベーションを次々に生み、スタートアップ大国を作り上げたか、という背景を理解する一助となるだろう。イスラエル企業とのビジネスを検討している日本のビジネスパーソンには必ず役に立つだろうと考える。それだけではなく、グローバル化が進んで異文化との接点が多くなった現代社会で、自分とは異なる異文化の人々の考え方や言動の背景を理解し、より良い異文化コミュニケーションを実現することにも役に立つのではないかと期待する。多くの方々に読んで頂きたい。

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