スライム状の物質と有機的なモチーフを組み合わせた人物画で注目を集める新進気鋭の若手画家・友沢こたおの新作展覧会「SPIRALE」がPARCO MUSEUM TOKYOでスタートした。大作を含む新作と一部の過去作を交えて展示するレトロスペクティブな展示をレポート。
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/MATjGlrCyoRvLydtCKOynApAZGhiKEmS/b65da0e8-853d-4fd8-8339-5b94886b823d.jpg)
今回の展覧会「SPIRALE」では20点以上の新作が展示され、これまでに開催された友沢こたおの個展史上では最大規模だという。展示は3つの空間で仕切られ、2メートル近くある大型のキャンバスから小さいものまで、様々なサイズの作品がそれぞれの空間を飾る。
友沢こたおの作品を初めて見る人は、「赤ちゃんとスライム」というその強烈なインパクトに慄いたあと、ひとつの疑問が浮かぶはず。「どうしてスライムを被っているのだろう?」
それは、友沢こたおが東京藝術大学に入学後、思うように絵が描けなくなってしまった時期のこと。たまたま家にあった「スライム」を衝動的に頭から被ったのがきっかけだった。
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/661/OTbTeiPawPegeWvSFfmLspNKIhPQAuGs/a1277f8b-084f-488a-9a54-221f969551f9.jpg)
スライム越しに見る景色、息が止まる感覚やスライムが鼻に入ってくる感覚。スライムを被った時に、自分の肉体を改めて感じることができた友沢こたおは「原始的な生」を実感したという。その時の経験と記憶が忘れられずに描き始めたのが、スライム状の物質と有機的なモチーフを組み合わせた人物画である。作品のモデルになっている人物は、主に友沢こたお自身と、幼少期から大切にしている赤ちゃんの人形「ルキちゃん」だ。
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/676/ekrBbJtCXtRTupErXCVWSdpsBfGpEvUI/268a31c1-e4b0-4223-a5b2-63532ff00ce6.jpg)
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/EiVxiOkdxKTMRZSQVcrZyHSXaDlBuOBv/2ee4f665-328d-4b91-9f65-46fd4934f825.jpg)
会場に入って中央の空間に行くと、雰囲気がガラリと変わる。まるで洞窟に入り込んだかのように、なぜだかこの黒い空間だけ空気がひんやりしているような気がしてしまう。特に透明のスライムを被った大型の人物画3点からは、神聖な雰囲気さえも感じる。スライムを被るという行為は、友沢こたおにとって一つの儀式のようなものなのかもしれない。
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/fYvNwNtVYkyZpKemgLCujJtXeQAYbYRS/546efe26-98a2-4d7a-a50a-f1d9aa039d60.jpg)
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/ILIaTQEPKdFHTxlOzwWtfucBhMxLgWVD/38ef4cbc-1b4b-44db-9be3-01201b943b82.jpg)
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/VNjQWwPYAaUWqsXtoymHLJiuGxNAihnl/29ca6fb8-c04f-4ec5-b453-212e2ad2b79d.jpg)
会場奥では初の立体作品の展示も。友沢こたおの象徴でもある赤いスライムを被ったルキちゃんが並んで出迎える空間は圧巻だ。
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/600/400/IIQvxscIptKuCFJjIfrEtGioTPqlfFAF/29ca1028-0764-4463-a455-24fd213be2af.png)
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/BXWcsPSgZIQViYqrEeSIGQDExCgBOLUr/f8c766b6-c5bf-446f-a335-534160ff0c0d.jpg)
色彩に強いこだわりを持って制作している友沢こたおは、一つの色を決めるまでに数時間かかることもあるのだとか。油絵具で表現されるスライムの透明感や反射する光と影が視覚的に訴えかけてくるのはもちろん、柔らかさや温度、匂いまでもが、ありありと見る人の五感へと突き抜ける。
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/650/ZyFXoXzRrYlJaXvBCTnyhmCYZvdFzWwz/b045382d-8dbc-49b0-8d5e-3ac4fad7bbe1.jpg)
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/BPHCVKlVQkVUwGGETpXiCiBZCZUMfUcH/2520d3d9-417b-4333-943d-c32920dc8d2b.jpg)
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/qRUkVFGMMVQLdYPTTKEQCqfHfnqrWfuW/38f4b9e8-c543-4faf-b229-888c13249ddc.jpg)
![「SPIRALE」展示風景](https://cdn.the-owner.jp/1024/683/qfpeemdlMWGMohuFhNlHZcznCAnBUKhi/6395fff7-fdf9-49c2-b9c2-33c953db367f.jpg)
近づいたり、離れたり、じっくりとスライムを被った人物を見ていると、作品に込められた静かで熱いエネルギーに引っ張られ、まるで自分もスライムを被ったかのように少し苦しくなってしまう没入感がある。しかし、友沢こたおは自身の作品を「安心する絵」だと言う。それはもしかしたら、実際にスライムを被った人、あるいは友沢こたおだけに分かる感覚なのかもしれない。このスライムを被った人物画という唯一無二の芸術を見て、自分が何をどんなふうに感じるか、是非展覧会「SPIRALE」へと確かめに行ってほしい。
友沢こたお作品集『KOTAO』発売
友沢こたおの軌跡が読み取れる主要作品80点以上を掲載した初の作品集が本展覧会にて先行発売(一般発売は10月中旬開始予定)。シルクスクリーン作品を封入したスペシャルボックス入りの作品集は会場にて抽選販売。詳細はPARCO ARTの公式サイトをチェック。
![KOTAO](https://cdn.the-owner.jp/714/1024/ewbxzBvLJyYjBzfagrpQETVQXIUCAJdV/cdb2d139-b3dd-47c5-82ff-ba5979b97141.jpg)
【Kotao Tomozawa Solo Exhibition SPIRALE】
会場:PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)東京都渋谷区宇田川町15-1 会期:2022年9月16日(金)〜 10月3日(月) 11:00-20:00 ※入場は閉場の30分前まで ※最終日18時閉場 ※営業日時は感染症拡大防止の観点から変更となる場合あり 入場料:一般 500円(税込)/小学生以下無料 公式HP:https://art.parco.jp/
ANDARTでは、友沢こたおの作品《slime XCVIII》(2021)を扱っています。無料会員登録でオークション速報やアートニュースをメルマガでも配信中です。この機会にどうぞご登録下さい。
文・写真:千葉ナツミ