中間管理職に必要な四つのこと

中間管理職の皆さんは、「所属する組織によい影響を与えている」と自信を持って言えますでしょうか。もしかすると、あなたの何気ないマネジメントが悪影響を及ぼしているかもしれません。今回は、組織に欠くべからざる中間管理職になるために必要な四つのことについてお伝えしていきます。

目次

  1. 「社長の代理執行者である」という認識を持つ
  2. どんどん権限を行使する
  3. ただの伝言者にならない
  4. 上だけを見て仕事をする
  5. 理想の中間管理職になるのは簡単ではない

「社長の代理執行者である」という認識を持つ

自分の指示に従う部下たちを前にして、中間管理職の皆さんは彼らにどう映りたいと思いますか。

憧れの人、尊敬できる人、頼りになる人。もちろんこれらが間違っているとは言えないでしょう。ただ、それは大前提を踏まえているのであれば、です。

大前提とは何か。それは、「中間管理職とは社長の代理執行者である」という認識です。

社長からすれば、もし自分に十分な時間があれば全社員の面倒を自分で見た方が、業績が伸びる確率は高くなるでしょう。しかし、会社が大きくなってくるとそれができません。社長には、他にやらなければならないことがたくさんあるからです。そこで、社長の代わりに社員たちを管理してくれる人が必要になります。それが中間管理職という存在です。

組織に悪影響を与えてしまう中間管理職にはこの認識がありません。この認識を持っている中間管理職は、常に「社長が望んでいることは何か」を念頭に置いた上で行動を起こします。

例えば、そういう意識を持った中間管理職は会社や上司の悪口を言ったり、ライバルを蹴落とそうとしたりしません。都合の悪い事実を隠蔽することもないのです。実績が上がらないときに自分の目標を簡単に諦めることもしないでしょう。

どんどん権限を行使する

日本人は奥ゆかしいとか、思っていることをはっきりと伝えないとよく言われます。それは間違いないのでしょうが、活躍できない中間管理職は本来意見を言うべきときでさえ黙っていることがあるのです。

・指示された計画が無謀だと思ったのに黙って部下に実行させる
・分からないことがあっても人に尋ねようとしない
・経費を投じればうまくいきそうなのに申請しない

これらは明かに間違っています。会社にとってよい結果をもたらそうと思い、行動するとしたら、

・指示された計画が無謀だと思ったので代案を作成し、上申した
・分からないことがあって先に進めなかったので上司に時間をとってもらいやり方を聞きに行った
・より多くの集客をするためには投資が必要と考えたので経費を申請した

となるはずです。こうなると、急に「やらなければならない」という感覚が強くなるでしょう。また、行動を起こすことによって、組織におけるその人の注目度も強くなります。このように、権限を行使するということは、自らに責任を課し、その責任から逃れられない状況をつくり出すことになります。

中間管理職になったということは、これまでとは比べものにならないくらい大きな権限を手に入れているはずです。どこまで自分に権限があるのかを確認したら、とにかくそれをどんどん行使していきましょう。

ただの伝言者にならない

「社長がこう言ったから」や「部長が決めたから」という発言をする中間管理職をよく見かけます。この発言をしている上司を、部下はどう見るでしょうか。

少なくとも、「この人を信頼して付いていこう」とは思えないでしょう。部門の責任が自らにあるという意識が希薄であることを上司自らが表明しているようなものだからです。

こういう中間管理職は、うまくいかなかったときに、「社長の指示だったし」とか「決めたのは部長だから」という言い訳をするために、仕事に取りかかる前の段階から責任を回避する態勢を取っているのです。これでは、中間管理職ではなく「中間にいるだけの人」です。この人がいるせいで上司と部下の間に余計な隔たりを生んでしまっていることになりますので、むしろいない方がよい存在になってしまいます。

中間管理職は、ただの伝言者になってはいけないのです。

上だけを見て仕事をする

「上ばかり見て仕事をする」と言われ、非難されてしまう人がいます。これは、上司の顔色を窺い、結果を出すことよりも上司の機嫌を取ることに躍起になっている人です。

もちろん、こういう人を見習うべきではありません。そうではなく、上司から頼りにされる存在になるために「上だけを見て」仕事をしていきましょう。

本来、組織においては常に下位者は上位者に対して「いかに頼られる存在になるか」を考え、動く立場でなければいけません。ところが、中間管理職が一生懸命部下から頼りにされる存在になろうと頑張ってしまっているケースがよくあります。

社長が従業員からの人気取りをしているのも同様です。彼らの言い分は「部下は自分を頼りにしているから、いざというときに力を貸してくれる。だから自分は常に部下から頼られ、好かれていなければならない」というようなもの。

社長が従業員の側を向いて仕事をしている企業は市場から頼りにされません。社長は常に市場だけを見て、いかに世の中から必要とされる企業になるかということのみを考えていなければならないのです。市場が社長のために動いてくれるなんてことはあり得ませんよね。

この姿勢の向きは組織における血流のようなものです。血流が逆になれば生物は死んでしまいます。

組織も同じです。その部下である上司は、社長と同じ方向だけを向いていなければなりません。

血流がしっかりと一定に保たれていれば、中間管理職の部下も同じ方向を向いて「いかに上司から頼りにされる部下になるか」を常に考えてくれるようになります。そして、それが続くと、「誰が上司から最も頼りにされる部下になれるか」を競い合うようになるのです。

理想の中間管理職になるのは簡単ではない

ここまで、中間管理職としてどうあるべきかについて述べてきました。

あなたの身近にも一人や二人はご紹介した中間管理職の悪例のような人がいることでしょう。そういう人が上司や部下からどのように評価され、そしてどういう結果を出しているかを考えてみてください。ご自身がどのように立ち振舞うべきか見えてくるはずです。

ただ、なぜそのような中間管理職が大勢いるのかということは考えてもよいでしょう。本記事で理想として述べた中間管理職になることは、一筋縄ではいかない難しさがあるからなのです。

常に社長の代理執行者としての意識を忘れずに身を正し、自らにあえて強烈に責任をはめ込み、部下に言いにくい類の会社や上司の決定もあえて自分の言葉として伝え、そして部下におもねることなく組織のために活動し続ける、それが中間管理職に求められる姿です。

ぜひ、一つひとつ実践を積み重ねてもらえればと思います。