ビジネスの武器としての「ワイン」入門
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(本記事は、井上 雅夫氏の著書『ビジネスの武器としての「ワイン」入門』=日本実業出版社、2018年5月31日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

4 ビジネスシーンでの「最低限のマナー」は知っておこう

せっかくワインの知識を身につけても、ワインマナーを知らなければ台無しです。ワインの知識を鼻にかける「ワイン・スノッブ」として、かえって敬遠されてしまいます。

できるビジネスパーソンは、ワインの知識だけではなくてワインマナーもしっかりと身につけています。

ビジネスシーンでワインをスマートに活用するために、最低限必要であると思われる「七つのマナー」を紹介します。

マナー1 『ワインの知識を必要以上に披露しない』

いわゆる「うんちく」をひけらかす人がいます。お相手がワイン好きだとしても、こちらが「うんちく」を必要以上に披露すれば、お相手にとっては自慢話を聞かされているようなもので、決していい印象は持たれません。

ビジネスシーンにおいては、ワインは話の「きっかけ」にはなっても、あくまで「脇役」であることを肝に銘じましょう。

マナー2 『ワインは無理に勧めない』

ワインは自分のペースで楽しむものです。ビールや日本酒のように注ぎ合う必要はありません。レストランでは基本的に自分では注がずに、ソムリエやお店の人に任せます。

お客が各自で注ぐ必要があるお店では、もし女性がいる場合には、必ず「男性」が女性に注ぐことです。女性に注がせてはいけません。

なお、注がれる時は、グラスを手に持たずにテーブルに置いたままにすること。相手が注ぎやすい位置にグラスを移動させる時も、グラスを持ち上げずにテーブルの上を滑らせるようにするとスマートです。

マナー3 『ワインのあら探しをしない』

ワインは会話の潤滑油です。飲んでいるワインのあら探しをするようなネガティヴな会話内容では、せっかくの潤滑油も切れてしまいます。ワインのいいところ探しを心掛ければ、会話も建設的となって、きっと盛り上がるはずです。

マナー4 『乾杯ではグラスとグラスを合わせない』

乾杯というと、通常グラスとグラスを「カチン」と合わせるのが普通ですが、ワインの場合はやりません。ワイングラスは薄くて繊細なので割れやすいからです。ワインの場合には、グラスを目の高さくらいまで掲げて乾杯します。

なお、グラスの持ち方ですが、日本ではグラスの脚(ステム)の部分を持つのが主流ですが、外国の晩餐会などではボウル部分を持って乾杯するシーンをよく見かけます(エリザベス女王もそうでした)。

どちらを持っても構わないのですが、要はお相手の方がボウル部分を持ったからといって「白い目」では見ないことです。

マナー5 『スワリング(グラスを回す)はTPOをわきまえて』

ワインの香りを楽しむには、スワリングは不可欠です。ただし、ビジネスシーンでは慎重にしなければなりません。

立食パーティー等、グラスを手に持って立っている場合には、こぼしやすいのでやめましょう。テーブル席の場合でも、ビジネスシーンでは、たとえあなたがゲスト側であってもやらないほうが無難です。

スワリングの原則。それはグラスを手前側に回すこと。右手でグラスを持った場合には、時計の反対回り、つまり左にグラスを回します。左手でグラスを持った場合には、その反対の時計回りです。

理由は、遠心力でグラスからワインが飛び出した際、自分のほうに飛ぶことはあっても同席者のほうに飛ぶ可能性が低くなるからです。

マナー6 『音をたてて飲まない』

ワインを口に含み、「ズルズル」と音をたててから飲む。ワインの上級者ほど音をたてて飲む傾向があります。これは、口の中に空気を取り込んで香りをたたせ、鼻に抜ける香りを捉えているのです。香りを楽しむにはスワリング同様欠かせない方法なのですが、ビジネスシーンではご法度です。

どうしても鼻に抜ける香りを楽しみたい場合には、少量のワインを口に含んで口を閉じ、ワインを口全体に広げる感じでしばらく飲み込まずに鼻呼吸してみましょう。

マナー7 『グラスを汚さない』

心がけたいのは、ワイングラスの飲み口をできるかぎり一定にすることです。ワインを口にするたびに飲み口を変えると、グラス一周にまんべんなく飲み跡がついてしまいます。ワイングラスは薄いので、飲み跡がよく見えてしまいます。飲み跡は一か所に集中させたほうがスマートです。

口紅がグラスについた場合には、グラスの飲み口に親指と人差し指を当てて口紅を拭い、その指を手元のナプキンで拭くのがベストです。口紅でなくても飲み跡が汚い場合には同じように指で拭いましょう。

以上はビジネスシーンにおけるワインマナーです。

要は、ワインを楽しむよりも、会話を楽しむことを優先するということです。

プライベートでワインを楽しむ場合には、スワリングも、「ズルズル」音をたてて飲むことも(むせない程度に)、心置きなくとことんやりましょう。

【その他のマナー①】〈接待等でワインを選ぶ際のコツ〉ソムリエに①シチュエーション、②どんな料理にするか、③予算、を伝えて選んでもらう。料理とワインの価格バランスの目安は、コースであれば概ね同額にする。8000円のコースなら8000円相当のワインを選ぶ。料理とワインの味のバランスを考える。

【その他のマナー②】〈ワインの注ぎ方〉注ぐ際はボトルの底か、下のほうを持つ。その時、ラベルは上に向けておく。グラスの少し上から少しずつ注ぐ。注ぐ量は、グラスの4分の1〜3分の1程度まで。グラスはテーブルに置いたままに。

ビジネスの武器としての「ワイン」入門
井上/雅夫
株式会社オリーブプロジェクトJAPAN代表取締役。醸造家、ワイナリーコンサルタント。1957年生まれ。ゴールデンゲート大学院・修了(MBA)。大手旅行会社、百貨店ニューヨーク支店長を経て、カリフォルニアワイナリー、Sycamore Creek Vineyards代表取締役&CEOに就任。ワイン醸造家としても活躍し、2001年国際ワインコンクール(Monterey Wine Competition)にて、自ら醸造したメルローが、赤ワイン部門のグランプリを受賞。2005年帰国後、盛田甲州ワイナリー取締役営業本部長に就任。2007年カリフォルニアワイナリー、KENZO ESTATEの立ち上げ責任者のオファーを受けて、ワイナリーコンサルタントとして独立し再渡米。その後は複数のワイナリーで、醸造、立ち上げのコンサルティングを行っている。山梨県勝沼の老舗ワイナリーの工場長としてもワイン造りに励んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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