ビジネスの武器としての「ワイン」入門
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(本記事は、井上 雅夫氏の著書『ビジネスの武器としての「ワイン」入門』=日本実業出版社、2018年5月31日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

2 赤ワインと白ワインで、色が違うのはなぜ?

黒(赤)ブドウで造るから、「赤ワイン」。
白ブドウで造るから、「白ワイン」。

普通はそう思うでしょうが、実はそうではありません。

シャンパンを例にして説明しましょう。

シャンパンに使われる代表的なブドウ品種は次の3種類です。

  • ピノ・ノワール
  • ピノ・ムニエ
  • シャルドネ

シャルドネ以外は、どれも黒ブドウです。

では、シャンパンの色は?

白ワインと同じ色、ですよね。

黒ブドウも使われているのに、赤くはなくて、白い。

なぜでしょうか?

それは、ブドウの色の違いからくるのではなくて、造り方が違うからです。

実は、「黒ブドウからも、白ワインは造れる」のです。

どうやって?

その説明をする前に、「赤ワインは、なぜ赤いのか」から説明しましょう。

ワインが赤くなるのは、黒ブドウの果皮に含まれる色素成分の「アントシアニン」が染み出すから。

でも、黒ブドウを絞っただけでは「アントシアニン」を十分抽出することはできません。果皮を果汁に浸しながら発酵させる必要があります。ですから赤ワインは、黒ブドウを破砕して、果皮ごと発酵させます。

つまり「赤ワインは、黒ブドウを丸ごと発酵させて造る」のです。

では白ワインはどうでしょうか?

「白ワインは、白黒ブドウを絞って果汁にしてから発酵させて造る」のです。

では、「黒ブドウからも、白ワインは造れる」に話を戻しましょう。

黒ブドウは、果皮は黒いですが、一部の例外を除いて、果肉は白です。

色素は果皮ごと発酵しなければあまり抽出されないので、黒ブドウを絞ると果汁は白くなります(色素が濃い果皮の場合、果汁はうっすらピンク色になりますが、発酵中にピンク色はほぼ消えてしまいます)。

白い果汁からは、当然、白いワインができるので、「黒ブドウからも、白ワインは造れる」というわけです。

最後に、赤と白の中間である「ロゼ」ワインの造り方も説明しましょう。

造り方は二つあります。

代表的な造り方は、フランス語で「血抜き」を意味する「セニエ方式」。

これは、最初に赤ワインと同じ方法で仕込み、発酵中の果汁が適当な色になったところで(通常、発酵し始めてから2〜3日後)、まさに「血抜き」のように発酵中の果汁を抜き取ります。抜き取られた「ロゼ」色の果汁は、発酵途中なので、そのまま発酵を続けて「ロゼ」ワインになります。

もう一つの造り方は、単純に赤ワインと白ワインを混ぜてしまう方法です。ただし、この方法は、地域によっては禁止されているところもあります。安易な方法なので、「セニエ方式」のものよりも格下に思うかもしれませんが、ロゼ(ピンク)シャンパンは、主にこの方法で造られています(瓶内の二次発酵前のスティルワインの段階で赤ワインを加えます)。

いかがでしたか?

ワインの色を決めるのは、ブドウの色ではなく、造り方の違いであるということを、ぜひ覚えておいてください。

【ブドウを搾る方法】昔は素足でブドウを踏んで絞っていたが(今でもやっているところがある)、現在はプレス機、特にプレス機の内部にエアーバッグが内蔵されていて、エアーバッグを膨らませることでブドウをプレス機の側面に押しつけて搾るタイプが主流。

ビジネスの武器としての「ワイン」入門
井上/雅夫
株式会社オリーブプロジェクトJAPAN代表取締役。醸造家、ワイナリーコンサルタント。1957年生まれ。ゴールデンゲート大学院・修了(MBA)。大手旅行会社、百貨店ニューヨーク支店長を経て、カリフォルニアワイナリー、Sycamore Creek Vineyards代表取締役&CEOに就任。ワイン醸造家としても活躍し、2001年国際ワインコンクール(Monterey Wine Competition)にて、自ら醸造したメルローが、赤ワイン部門のグランプリを受賞。2005年帰国後、盛田甲州ワイナリー取締役営業本部長に就任。2007年カリフォルニアワイナリー、KENZO ESTATEの立ち上げ責任者のオファーを受けて、ワイナリーコンサルタントとして独立し再渡米。その後は複数のワイナリーで、醸造、立ち上げのコンサルティングを行っている。山梨県勝沼の老舗ワイナリーの工場長としてもワイン造りに励んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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