(本記事は、井上 雅夫氏の著書『ビジネスの武器としての「ワイン」入門』=日本実業出版社、2018年5月31日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
4 既成概念にとらわれずにマリアージュを楽しむ
「肉料理には赤ワイン」
「魚料理には白ワイン」
もはや定説と化していますが、実はこのことが長年ワインを気軽に飲む機会を奪ってきたと言えるのかもしれません。
例えばです。夏の日の屋外でのバーベキュー。
暑いので冷たく冷やした白ワインでも飲もうと思ったとします。
「あっそうだ。肉には赤ワインだったっけ。でも赤ワインは冷やしてはいけないっていうからな。じゃあビールにするか」
こんな感じでワインはあっさりと選択肢から外されてしまいます。
実際は、赤ワインでも夏は少し冷やして飲んだほうがおいしい場合もあるし、ボージョレ・ヌーボーのようなフルーティーで軽いタイプの赤ワインなどは、逆に冷やして飲んだほうがおいしく感じることもあります。
そして肉です。一口に肉と言っても、赤身の牛肉もあれば白身の鶏肉や豚肉もある。実は白身の鶏肉や豚肉は、どちらかと言うと赤ワインより白ワインのほうが合わせやすいとも言えます。
このように、実際は定説通りではないこともあるのです。
ただ、そうは言っても、「じゃあワインと料理はどう組み合せればいいのか」と迷うかもしれません。
定説などは無視して、料理にかかわらずその日飲みたいワインを飲みながら試行錯誤を重ねていければ一番なのですが、やはり失敗はしたくないもの。そこで、大きくは外さないワインと料理の合わせ方のヒントを、ご参考までに少し紹介しましょう。
・料理の色とワインの色を合わせてみる
料理の色ではなく素材の色と合わせるという人もいますが、例えば白身魚の照り焼きなどは、素材の色に合わせて白ワインというよりは、ライトな赤ワインのほうが合いそうです。
料理の色を赤系、白系、ロゼ(ピンク)と3色で色分けするのが難しい場合には、濃い色→赤、薄い色→白、中間色→ロゼとしてみるのもいいでしょう。
・「香り」や「味わい」に合わせてみる
料理に使われた香草や香辛料に近い風味のワインを合わせてみます。例えばハーブを利かせた料理には、ハーブのアロマが特徴のソーヴィニヨン・ブラン(白ワイン)が合うでしょう。スパイスが効いた料理には、スパイスのニュアンスがあるシラー(赤ワイン)との相性がいいはずです。
・調味料の役割としてワインを考えてみる
カキフライにタルタルソース。あとはレモンをすこし搾るだけ。仕上げにレモンなどの酸味が欲しい料理には、柑橘系のアロマを持つ白ワインをレモン代わりに合わせてみます。もちろんレモンを搾った後でも相性は変わりません。他にもタンニン豊富な赤ワイン(カベルネやシラー等)をスパイスと捉えて料理と合わせてみるのもいいでしょう。
いかがでしょうか?
これらのヒントはほんの一例です。要は「肉料理には赤ワイン」「魚料理には白ワイン」という呪縛から解放されて、まさに自由な発想で「好きなワインに、様々な料理を合わせてみる」または「好きな料理に、様々なワインを試してみる」ことを、周りがなんと言おうとやってみればいいのです。
すると、ワインと料理のベストマッチ、これを結婚に例えて「マリアージュ」と言うのですが、自分なりの「マリアージュ」を発見できるようになります。
既成概念には一切とらわれずに、「マリアージュ」をたくさん発見することができて、ワインも料理もどちらも心底楽しむことのできる人。そういう人こそ本当の「ワイン通」と言えるでしょう。
【マリアージュ】マリアージュ(mariage)はフランス語で「結婚」の意味。ここから2つの別々のものが1つになって調和した状態になることをマリアージュという。ワインの場合は、ワインと様々な食材や料理との相性が良いことをいう。
【シラー、シラーズ】フランスのローヌ地方原産とされる赤ワイン用ブドウ。オーストラリアではシラーズとも呼ばれる。ヨーロッパではスパイシーで繊細な味わいのワインになる。オーストラリアでは果実味が濃縮されたワインになる。南米やカリフォルニアなど新世界(ニューワールド)での栽培が増えている。
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