今回のブログでは、巨大な日本人マーケットを持つタイの現状についてご紹介したいと思います。
※本記事は2022年5月に執筆されました。
日本人に会わない日はない
ASEANには多くの日本人が住まれており、活動範囲も限られていることが多く、日本人界隈は比較的狭くあります。友達の友達は知り合いということもよくあります。特にバンコクで暮らしていると、日本人に会わない日は、家から一歩も外出しなかった日くらいになるのではないでしょうか。
2021年10月に外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」によると、国別在留邦人数は米国・中国・オーストラリアに次いでタイは世界4位です。都市別でみるとバンコクはロサンゼルスに次ぐ2位となっております。
この順位は過去5年間不動です。日系の食材を扱うスーパーや日本語話者が多い点などが、日本人にとって住みやすい環境を作り上げているのではないかと感じております。
出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」(外部サイト)
日系企業界隈は?
日本とタイは古い昔から多くの経済交流がありました。600年ほど前から御朱印船で交易があり、旧首都であるアユタヤには日本人町がありました。国交は1887年の「日暹修好と通商に関する宣言」条約で正式に開始されました。これは東南アジア諸国と結んだ最初の条約となっています。戦後には自動車の製造業が進出したことをきっかけに多くの日本企業が進出しました。
またプラザ合意の急激な円高で製造業の進出はさらに加速しました。しかしここ最近はコロナ禍の影響はあるかもしれませんが、右肩上がりであったバンコク商工会議所会員数も減少に転じています。
出典:盤谷日本人商工会議所ホームページ(外部サイト)
どのような問題を抱えているか?
大企業と中小企業では悩みの種は同じではありません。これまでにいろいろな会社様にヒアリングさせて頂いた結果として以下のように認識しております。
【大企業】本社からの数値目標のプレッシャー・JV先との連携不足など
【中小企業】人材不足・大口取引先依存・後継者不在など
大企業だから問題がないかと言えばそうでもなく、JV先と想像していたシナジーが描けていない、顧客を日系に依存しておりじり貧になっている、等の問題を抱えているようです。中小企業においては、Tier1やTier2についてくるような形で進出してしまい、戦略も無ければ人材もいなく、大きな決断をすべき状況に陥っている企業が多く散見されます。
他国の状況は?
2019年に初めて直接投資申請額が中国に抜かれました。米中の貿易摩擦で一時的ではあるものの、タイの経済界ではある程度の存在感を感じることが出来ます。またここ数年ではEV(電気自動車)の追い風を受け、中国メーカーの進出が相次いでいます。
昔は街中をTOYOTAやNissanばかり走っていましたが、MGなどの新興EVメーカーを見かけることも多くなりました。モーターショーでもブースの混雑は年々拡大しているように感じます。それに伴い中国人ビジネスマンも多くタイへ移住しており、数年以内には日本人を抜く予想をしております。
また、タイの大学入試における第二外国語選択において、2022年に初めて韓国語が日本語を抜きました。(1位中国語:34.8%、2位韓国語:17.6%、3位日本語:17.1%)※タイの韓国教育院調べ
まとめ
タイの日系企業は先行者利益で多くの経済メリットを享受してきました。しかしながら、グローバル化の波に乗る柔軟性や決断力が他国より遅れており、これからはますます厳しい状況が予想されています。悪いことばかり紹介しましましたが、私も必死に皆様と日系企業界隈をさらに発展・拡大していきたい所存です。
著者
2018年にシンガポールに赴任し、現地の会計事務所ネットワークを構築。タイの中堅・中小企業と日本企業の海外M&A支援を担当。バンコクで海外拠点開設の準備に従事。2021年11月より現職。