2022年前半、国内の新規公開株(IPO)が相次いで公開価格以上の初値を付けるなど、市場の活況ぶりが見て取れた。中には3倍以上の初値が付いた企業もある。今回は、7月上旬までに新規上場した銘柄のうち特に騰落率が高かった企業や、IPO市場の現状に加え、今後の見通しを探る。
IPOのメリットは?
IPO(Initial Public Offering)とは、未上場企業が新規株式を証券取引所に上場し、投資家が株式を取得することである。企業にとっては上場によって広く資金調達でき、知名度や社会的信用が上昇するといった利点がある。
投資家にとっては、上場後の株価が大きく上がる可能性があったり、企業の今後の業績拡大に向けて投資できたりする点が魅力だ。期待の高いIPO銘柄は購入希望者が多く、抽選が行われることも多い。ただし、IPO株は価格が安定しにくいなどのリスクもある。
2022年前半のIPO市場動向
2022年に新規上場した銘柄は7月20日現在、30社以上ある。1〜5月は、新規25銘柄のうち、19銘柄で初値が公募価格を上回った。特に、6月に上場したANYCOLORは公開価格の3.1倍の初値を付け、IPO市場の活況ぶりが話題になった。
初値騰落率が高かった銘柄
2022年に新規上場した銘柄のうち、公開価格と比較して初値がどれだけ上昇・下落したかを表す「騰落率」がプラス50%を上回った銘柄は以下の通りだ。
初値が公募価格の2倍以上になった銘柄も
騰落率がプラス100%を超え、初値が公募価格の2倍以上になった企業は6社あった。
ANYCOLOR
バーチャルユーチューバー(Vtuber)グループ「にじさんじ」などのマネジメントや関連グッズ販売を手掛けるANYCOLORは、6月に上場した。上場初日には買い注文が集まり取引が成立せず、翌日に付いた初値は公開価格の1,530円に対し、4,810円だった。その後は制限値幅の上限(ストップ高上限)に至る高騰ぶりだった。
トリプルアイズ
金融や流通など多様な業界でAIソリューション事業を行うトリプルアイズも、5月の上場初日には多くの買い注文が入って売買が成立しなかった。初値騰落率は150%だ。
BeeXなどAI、IT関連企業に期待が高まる傾向
騰落率の高い銘柄には、AIの活用やIT関連分野の企業が目立つ。前述の2銘柄のほか、企業の基幹システムのクラウド移行などを扱うBeeX (ビーエックス)や、AIプロダクト事業のセカンドサイトアナリティカも高い初値を付けている。
ペットのヘルスケアに特化したネット通販を行うペットゴーも、公開価格の2倍以上の初値だった。ECサイトに登録されたペット情報と購入履歴から、顧客の属性に合わせたマーケティングを行って販路を拡大している。
2022年後半はセカンダリー投資のチャンス?
6月には12銘柄が上場するIPOラッシュだったが、そのうち5銘柄で初値が公開価格を下回る「公募割れ」となった。米国の金利上昇などを契機に新興企業株の価格が落ち込み、その影響がIPO市場の株価下落を招いた。
一方で、この状況を「セカンダリー投資」の好機とする見方もあるようだ。セカンダリー投資とは、IPO銘柄を初値で購入した後、価格が上昇したタイミングで売却する方法だ。
初値が高かったもののその後下落が続く銘柄や、企業の潜在能力が高いのに売り出しや地合いの悪さから初値が伸びなかった銘柄が狙い目と考える投資家もいる。
2022年前半に活況を見せたIPO市場は現在やや軟調だが、今後再び回復を見せる可能性もある。有望な銘柄を割安で購入して伸び代に期待する、セカンダリー投資のチャンスとなり得るかもしれない。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)