ゼロからわかる知らないと損する行動経済学
(画像=ASDF/stock.adobe.com)

(本記事は、ポーポー・ポロダクションの著書『ゼロからわかる知らないと損する行動経済学』=日本文芸社、2022年3月9日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

損失回避実験
成績を上げるならボーナスは先に渡す

◉ ボーナスを先に渡すメリット

ボーナスは企業が利益を出したときに、その利益を従業員に一時金として分配するものです。本来は一時金ですが、報酬の一部として根付いており、従業員にとってなくてはならないものとなっています。一般的には「頑張った報酬」という意味合いが強いものですが、じつは効果的なのはボーナスを先に渡すことです。

◉ 一度受け取ったお金は返したくない

シカゴ大学のリスト教授らは、教員組合の協力を得て、教師たちを2グループに分けました。

Aグループの教師には、最初に4000ドルのボーナスを支払い、学年末までに生徒の成績が向上するほど返金額が減る条件にしました。

一方、Bグループでは学年末の生徒の成績に応じて、最大8000ドルを支払う条件にしたのです。するとAグループの生徒の成績は10%向上しましたが、Bグループの生徒の成績は変わらなかったのです。これは教師の「お金を返さないといけない」という損失回避の感情のため、生徒をより真剣に指導した結果だと推測されています。

このことからプロジェクトなどでの報酬は先に払い、一定の効果が出ない場合には返却を求める契約をすると、損失回避の効果から強い効果が見込めます。一度受け取った金銭を返すのは大きなダメージを受けるため、人はそれを回避するために最善を尽くすようになるのです。

頻繁に会うことで好感度アップ=ビジネスでも有利に?

ザイオンス効果
繰り返し「会う」「見せる」ことで好感度アップ

◉繰り返し見るものに好感をもつ

毎朝見るテレビのアナウンサーは爽やかで、親しみやすく好感がもてる……そう感じる人は多くいます。じつは、誰でも朝の番組の司会をすると好感度が上がってしまうのです。

アメリカの心理学者ザイオンス(ザイアンス)は、顔写真を目にする回数で好意がどう変化するかを調査しました。すると、写真を見た回数が多いほど相手に好感を抱きやすい傾向があることがわかったのです。写真だけでなく人に会っても結果は同じでした。これを「ザイオンス効果」といいます。この効果は、人だけでなく「もの」にあることもわかっており、繰り返し見ることで好感度が上がるのです。

◉頻繁に「会う」「見せる」

この効果を応用すると、ビジネスを有利に進められます。「まず営業は顔を売る」という言葉がありますが、それは科学的に理にかなっていて、毎回顔を見せる営業には仕事を振ってあげたいという感情がわき上がるものです。

オンラインにおけるビジネスも同じであり、短い時間でよいので、できるだけ自分の顔を見てもらうことが大事です。隔週で1時間の打ち合わせをしていたら、30分でもよいので毎週打ち合わせをするほうが好意をもってもらえることにつながります。また、広告も同じであり、短いものでも十分なので回数を見てもらうような施策を考えるとよいでしょう。

頻繁に会うことで好感度アップ=ビジネスでも有利に?

同調行動・ハーディング効果・バンドワゴン効果
「同調」と「不安」があると人は動く

◉人は他人と同じことをしたくなる

人は他人と同じことをしたくなる本能があり、違うことをすると強い不安を感じるようになります。このような「同調行動」については126ページで解説しました。同調行動をすると安心感をもち、しないと大きな不安感を覚えます。人が他人と同じ行動をとって安心感を得ようとする傾向を「ハーディング効果」といいます。災害などで特定商品が品薄になると買い占めをしている人の映像をテレビで見て、自分も行動しなくてはと思うのはこの効果です。

◉勝ち馬に乗りたくなる心理

この効果と似たものに「バンドワゴン効果」というものがあります。これは選挙期間中にある候補者が有利であるという話を聞くと、自分もその候補を応援したくなる心理が生まれることです。他人の行動に自分が合わせたくなるという点で、「同調行動」と同じです。

この効果はビジネスやマーケティングに活用できます。たとえば「今話題の商品」「口コミ高評価」「お気に入り登録10万件」といったコピーはこの効果を狙っているものです。

これらの効果を知って無闇に不安にならないことが大事です。短期的にはこの効果は強いものがありますが、企業側も利用者に不安を仕掛けるのではなく、安心感を提供していくことを目指すほうが長期的に利用してもらえる信頼感をもたらしやすくなります。

頻繁に会うことで好感度アップ=ビジネスでも有利に?
ゼロからわかる知らないと損する行動経済学
ポーポー・ポロダクション
「人の心を動かすようなおもしろくて楽しい良質なものを作ろう」をポリシーに、遊び心を込めた企画を考え、映画・ゲーム・アミューズメント・ファッション・スポーツなど多様な業種と関わりを持ちながら、書籍などを手がけている。心理学・色彩心理学・行動経済学を研究、様々な学問を横断的に活用し、商品開発や企業のコンサルティングなども行なう。著書に、『「色彩と心理」のおもしろ雑学』(大和書房)、『マンガでわかる色のおもしろ心理学』『マンガでわかる人間関係の心理学』(以上SBクリエイティブ)、『色と性格の心理学』『決定版色彩心理図鑑』(以上日本文芸社)などがある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます