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(本記事は、ポーポー・ポロダクションの著書『ゼロからわかる知らないと損する行動経済学』=日本文芸社、2022年3月9日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
利用可能性
コンビニと美容室、どちらが多い?
◉よく見るものは確率が上がる
日本全国におけるコンビニエンスストアと美容室はどちらが多いと思いますか?
この質問をすると「コンビニ」と答える方が多くいます。日本フランチャイズチェーン協会の2021年のデータによるとコンビニエンスストアは全国で約5.6万店、厚生労働省のデータでは美容室にいたってはその5倍近い25.4万店あります。この印象の違いは、私たちはいつも見るもの、思い出しやすいものの確率を高く感じる傾向があるからです。これを「利用可能性ヒューリスティック」といいます。
コンビニは毎日のように利用する人が多いので、店舗も多い印象をもってしまうのです。
◉ニュースで触れる頻度も影響
では殺人事件と自殺者数の差はどれくらいあると思いますか?
私たちはよくニュースで殺人事件を目にします。そのため、人が亡くなる原因として他殺での数を多く感じてしまう傾向があります。2020年のデータで自殺死亡者は約2.1万人、他殺死亡者は約250人です。自殺はほとんどの場合、ニュースで報道されません。そのため実数値を低く感じる傾向があるのです。
こうした傾向はテレビで殺人事件のニュースを見た直後に、より強く出ると考えられます。自殺は社会問題のため、多いと思ってもここまで差があるとは意外と感じた人が多いはずです。
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代表性
人は典型的な人物像をつくる
◉人は先入観でものを見る
人は先入観でものを見て、「この人はこういうタイプ」「あの国の人たちはこんな人たち」と偏見をもちやすい傾向があります。たとえば血液型性格診断の「A型は几帳面」「B型は自己中心的」のような診断は科学的根拠が乏しく、典型的な先入観のひとつといわれています。
職業に対する偏見、男女差による偏見などもそうした先入観のひとつです。こうした先入観を「代表性ヒューリスティック」といいます。
◉リンダ問題
みなさんに問題を出します。「リンダは31歳の独身で、意見を率直にいう非常に知的な人。大学では哲学を専攻して、学生時代には差別や社会主義の問題に深く関心をもち、反核デモにも参加していました(カーネマンとトヴェルスキーによるリンダ問題)」。リンダの将来についてもっともありそうな選択肢はどちらですか?
A:リンダは銀行員の出納係である
B:リンダは銀行員の出納係でフェミニスト運動の活動家である
この質問を47人にしたところ64%の人が「B」と答えました(ポーポー・ポロダクション調べ/2021年)。実際にはBはAに含まれる回答なので、Aの回答のほうが多くないといけません。しかし、余計な情報のついたBのほうが典型的なイメージが膨らみ、確率を超えて判断してしまいがちになるのです。
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フレーミング効果
その手術は危険か安全か?
◉問題の出し方で解答は大きく変わる
私たちの判断は質問や問題の印象に強い影響を受けて変化することがあります。
たとえば、あなたがある病気になってしまい、医師から手術をすすめられたとします。医師が提案したのは次の2つのプランです。どちらの手術を受けたいと感じますか。
A:手術を受けた100人の患者のうち、1年後に90人が生存している手術
B:手術を受けた100人の患者のうち、1年後までに10人が亡くなってしまう手術
冷静に考えるとAもBも同じことをいっています。ところがAは「生存する人」、Bは「亡くなる人」に焦点を置いています。
ポーポー・ポロダクションでこの質問を47人にしたところ、Aを選択した人は約89%で、Bを選んだ人に比べて圧倒的な数字でした。
生存者の数を聞くと安心しますが、死亡者数を聞くと不安な気持ちになってしまいます。結果的には同じことでも、見せ方(フレーム)次第で印象が大きく変わってしまうのです。これを「フレーミング効果」といいます。
合理的な判断は冷たいと思われることもありますが、「合理的な判断ができる人(フレームに影響を受けない)は、感情がないのではなくコントロールがうまくできる人」と主張する研究者もいます。
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