(本記事は、ポーポー・ポロダクションの著書『ゼロからわかる知らないと損する行動経済学』=日本文芸社、2022年3月9日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
認知的不協和
ブラック企業を辞められない理由
◉「効果がない」なんて受け入れられない
安いお守りよりも、高いお守りに効果があると感じる理由のひとつとして、下記があります。
もし、高いお金を出して買ったものなのに、効果がないと感じたらそれは大きなショックです。高いお守りを買った人は、効果がないと認めづらく、効果がないはずはないと不合理な判断をするようになります。
効果がないところを無視して、小さな効果を探し始めるという、確証バイアスを高めてしまう傾向があるのです。これを「認知的不協和の解消」といいます。心の中に2つの矛盾した認知をもつと、不快な気持ちになってしまいます。そのため、どちらかを解消しようと考えや行動を変化させようとします。
◉なぜブラック企業に勤め続けるのか
たとえばブラック企業で働き続けてしまう心理は、「認知的不協和の解消」が関係していると思われます。
仕事内容が激務で報酬が安い状態だと、人はその不協和を解消しようとします。激務や報酬は自分の力で変えられないので、「やりがいがあって楽しい」と考えるようになったり、「他と比べたら給料は悪くないかも」と思い込むようになったりします。特に「楽しい」「つらい」は感情的な部分であり、気持ちを動かしやすいので、「楽しい」と思い込むことで、ブラック企業に勤め続けてしまうようになるのです。
ハロー効果
人はイメージで商品を買っている
◉イメージで買っている
みなさんは卵を買うときは何を基準に選んでいますか?
無意識に選ぶ方も多いと思いますが、じつはパッケージ写真などの黄身の色が販売量に大きな影響を与えています。黄身の色は餌の色であり、栄養価とは直接関係ありませんが、濃い黄色やオレンジの色みは栄養価が高そうというイメージがあり、よく売れるのです。
化粧品も同様です。化粧品は40代、50代では値段と効果など現実的なもので決める人が多く、20代では商品の形、イメージなどの情報が重要視される傾向があるようです。前者の層はより文字情報を重要視し、後者の層は視覚情報を重要視する傾向があるのです。
◉原価よりイメージ価格を重視する商品も
商品には原価があり、それに販促費などの経費に利益を乗せて価格を決定するのが一般的です。ところがあるメーカーは先にブランドとしての販売価格を設定し、そこから原価や経費を割り振るという商品開発をするといいます。
ブランドとしての価値を前面に出して、このブランドだから、この値段だから効果があるに違いないという戦略をつくるのです。成分を見て価格を吟味するのではなく、価格やブランドから効きそうだと判断して購買に至る人も多くいます。これを「ハロー効果」といいます。ブランドの名前、値段などが高いことで、中身もいいに違いないと思わせる心理効果です。
BGM と購買の関係
音楽は私たちの購買行動を操っている
◉ 音楽には人を動かす力がある
社会心理学者のノースとハーグリーヴスは、スーパーマーケットのワイン陳列棚の上にスピーカーを設置し、音楽の種類が客の購買行動に与える影響について実験を行ないました。ドイツの曲が流されたとき、ドイツ産ワインはフランス産ワインよりも2倍売れました。一方、フランスの曲が流されたとき、フランス産ワインはドイツ産ワインよりも5倍売れました。曲の影響を受けて異なる産地のワイン販売量が大きく変化したのです。そして、購買者のほとんどが音楽の影響を受けた自覚がありませんでした。
◉BGMは逆効果になることも
1991年に水産庁の魚食普及事業の一環として制作された「おさかな天国」という曲がスーパーや百貨店などで流されました。オリコンチャートで最高3位を記録するほどの人気になり、魚の売上も増加しました。そしてこの勢いに続けと商品BGMをつくり、取り扱い品目を増やした例もあります。
ところが長時間、長期間流していると、逆効果になることもあります。日本やアメリカの調査・実験でもBGMとして曲を使った場合、2〜3時間が有効であり、疲労感や退屈感がなくなるという結果があります。ところがそれ以上になると耳に残るなど悪影響が出てくることもあったのです。スーパーでも長期間聞いていると悪影響が出る可能性も考えられます。
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