2020年の国内ウォッチ市場はコロナ禍により大幅な減少
~これまで市場を支えてきたインバウンド需要の消失により前年から約3割減~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の時計(ウォッチ、クロック)市場を調査し、製品セグメント別の動向、注目すべき動向、将来展望を明らかにした。ここでは、国内ウォッチ(腕時計)市場の分析結果を公表する。
国内ウォッチ小売市場規模と予測
1.市場概況
一般社団法人日本時計協会データによると2020年の国内ウォッチ市場規模は小売金額ベースで、前年比70.2%の6,227億円であった。新型コロナウイルス感染拡大の影響による店頭における販売機会の減少やインバウンド(訪日外国人客)需要の消失により、前年から約3割の大幅減となった。
しかしながらコロナ禍においても実物資産として高価格帯ウォッチの需要は高まっており、ソーシャルディスタンスの生活様式のなか、高級ウォッチをオンラインで購入するというトレンドが生まれた。これまで浸透してこなかった高級ウォッチのオンライン販売がコロナ禍をきっかけに伸長する結果となった。但し、一部の特定ブランドに人気が集中するなど二極化が進んでおり、優勝劣敗の傾向が強まっている。
2.注目トピック
日本人富裕層へのアプローチ強化
インバウンド需要が消滅し、集客イベントの実施が制限され新規顧客の開拓がままならない中で2020年のウォッチブランドの業績を支えたのは国内富裕層の存在であった。近年、株高になっている状況に加え、コロナ禍により海外旅行や会食などを制限されたことで富裕層の消費がブランド品購入に向いたことが大きな要因である。
そのため富裕層を顧客に持つブランドや、富裕層が好む商品を展開するようなブランドには追い風となった。ブランドサイドも改めて顧客との関係を見直し、今まで以上に手厚いフォローを行うブランドが増加した。ブランド側からの百貨店の外商顧客へのアプローチも強化しており、外商催事への積極的な参加に加え、ブランド独自のおもてなしプランを提供するなど、富裕層の取り込み戦略は活発化している。
一方、百貨店サイドも従来の外商顧客より更に若い30代~40代といったニューリッチ層の取り込みを始めており、こうした世代の好むブランドとの関係強化を図っている。
但し、たとえ富裕層でなくても、そのブランドのファンといえる顧客の存在に助けられたブランドも多く、その消費力が今回のコロナ禍で失ったインバウンド消費や休業期間分の売上をカバーするには至らないまでも、大きな落ち込みには至らないということが証明された。今回のコロナ禍で改めて、“顧客” の存在を認識し、重要な存在としてコミュニケーションを図っていこうとする動きが広がっている。
3.将来展望
2021年の国内ウォッチ市場(小売金額ベース)は前年比114.0%の7,100億円と予測する。新型コロナウイルスの影響によるインバウンド需要の消失で引き続き厳しい状況にあるものの、コロナ禍を前提とした施策の遂行でプラスに推移することが見込まれる。
今後はさらにDX対応が進展し、オンライン上での接客やイベント、ファンミーティング、ライブコマースなどで顧客接点の多様化が進む見通しである。このような取り組みにより会員組織などファンコミュニティなどでの日本人富裕層への手厚いサービスや、インフルエンサーの起用による若い世代へのアプローチがより強化されると考えられる。
また、商品はウォッチとしての王道を追求した保守化の傾向が強まっているため、原点回帰をコンセプトに各々のブランドの特徴を打ち出したシンプルなデザインの商品ラインナップが増えている。一方で、テクノロジーの競争は激化しており、新素材や新機構の採用がより活発化していくことを予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2021年11月~2022年1月 2.調査対象: 時計関連企業(メーカー・卸売業・小売業)、関連団体等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用 |
<国内ウォッチ(腕時計)市場とは> 本調査における国内ウォッチ(腕時計)市場は、国産ウォッチ、インポートウォッチ、スマートウォッチ等を対象とし、2014年~2020年の市場規模データ(実績値)は一般社団法人日本時計協会の資料から引用している。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 国産ウォッチ、インポートウォッチ、スマートウォッチ、並行輸入ウォッチ、リユースウォッチ等 |
出典資料について
資料名 | 2022 時計市場&ブランド年鑑 |
発刊日 | 2022年01月27日 |
体裁 | A4 496ページ |
価格(税込) | 137,500円 (本体価格 125,000円) |
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