共創のリーダーシップ
齋藤 勝己(さいとう・かつき)
1964年5月生まれ、中央大学経済学部卒。小中高生を対象とする個別指導塾を直営で252教室展開。東証一部上場。経済同友会会員、日本ホスピタリティ推進協会理事。トレードマークは満面の笑顔と腹の底から出る大きな声。曾祖父は落語家の初代三遊亭圓歌。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます

問い:どうすればチームのやる気を引き出せるのか?
答え:アルバイトを最強の戦力とする「貢献実感」と「成長実感」がカギ

先述しましたが、当社の個別指導塾の講師は1万1000人。約85%が現役の大学生です。

大学生は学校で学ぶことのできない大切なことをアルバイトで学びます。

当社は人ビジネス。働く人の活力が事業成長の源泉です。1万1000人の講師の活力は、教室をイキイキと輝かせてくれます。

「働く」とは何でしょうか。「働」という字は「人」が「動く」と書きますね。

人に寄り添って動く。誰かのために動くという価値の提供です。

働くことには、大きな2つの喜びがあります。

一つは自分の仕事が誰かのためになったという「貢献実感」

そしてもう一つは仕事を通じて自分自身が成長できたという「成長実感」です。

「貢献実感」と「成長実感」を得られることが、大学生が当社に集まる理由となっています。したがってこの2つをどう高めるかがカギとなります。

大学生が当社に集まる理由、その代表的な取り組みが『TEACHERS' SUMMIT』。全教室の講師が、仕事の実践を通じて学び、共に成長する1年間のプログラムです。

教室がチームとなって年間計画を立てて実践する。
他教室へ年間計画のプレゼンテーションをするナレッジ共有。
約4か月ごとに振り返りを行い、PDCAサイクルを回す。
年度終わりでは、およそ3000人が2会場に集い、「最も学びがあった教室」を投票で選出。

このようなビジネススクール顔負けのプログラムを、現役大学生である講師たちが行っているのです。

『TEACHERS' SUMMIT』の1年間のおおまかな流れは次のとおりです。

まず、4月は教室年間計画の作成からスタートします。教室がチームとなり、取り組むべき課題を洗い出して分析。具体的な目標を立て、達成までの道筋を組み立てます。

5月、キックオフです。計画を近隣の教室と共有します。同じような課題を持つ他の教室の計画を聞き、分析や取り組みを学びます。初めて人前でプレゼンテーションする講師が多く、初々しい光景です。

そして9月、中間報告会。近隣の教室が再び集まり、計画の進捗をプレゼンテーションします。ナレッジ共有の機会です。他教室の学びを得たうえで、自分たちの計画の振り返りをします。例えば、なぜ情報の共有がうまくいかなかったのか、なぜプランの進行が遅れたのか―さまざまな方向から振り返りを行います。ときには「自分たちは本気でやろうとしていたのか?」といった厳しい問いが投げかけられるほどです。成長のカギは、「誰が」ではなく、「なぜ」を振り返ること。こうして計画はしっかりとPDCAを回していきます。

翌年1月、近隣の教室が集まり、各教室の年間計画の成果を報告します。1年間を振り返り、できたことやできなかったことをプレゼンテーションします。このとき、「最も学びがあった教室」を地域代表教室として投票で選出します。

ラスト3月には、東京と関西のイベントホールに合わせて約3000人が集結し、地域代表教室による大総括会を華やかに開催します。「最も学びがあった教室」を投票で選出し、1年間の活動は幕を下ろします。

『TEACHERS' SUMMIT』はもともと関西の小さなエリアの取り組みでした。5年ほど前に全教室に広げたとき、働く人が主体的に成長する共創のプログラムに進化しました。

多様な価値観を持つ仲間と助け合い、生徒のために心を働かせながら、講師一人ひとりが自身のホスピタリティを磨いていく。同時に、コミュニケーション能力、主体性、リーダーシップなどを、仕事の実践を通じて身につけていくのです。

一方、社員である教室長や副教室長も、講師を支えることでマネジメント能力を伸ばしていきます。関わるすべての人が成長する共創のプログラムです。

問い:「成長実感」をどう醸成するか?
答え:集う人々が共創する場、成長が連鎖する場を提供する

さらに、リーダーシップに富んだ大学3年生の講師を対象に、「社会が求める力」を学ぶ連続講座『リーダーシッププログラム』を開催しています。

例えばプレゼンテーション能力は、就職活動中の大学生がただちに必要とするスキルの一つです。バックキャスト思考は、マネジメントに欠かせません。こういったスキルが身につき、就職活動や仕事に役に立つと口コミで人気となり、2年目で対象者の数を倍にしました。

大学を卒業して社会人となった講師のOB・OGたちも、「アルムナイ」(英語で「同窓生」の意)として現役講師の支援に関わってくれています。

ボランティアで「業界研究セミナー」を開き、自分たちが働く業界について講師にレクチャーしてくれています。講師にとって、企業の話を聞く貴重な機会になるのはもちろんですが、参加したOB・OGにも喜びがあるそうです。

「キャリアを振り返るきっかけになった」「知識の棚卸しができた」「自分自身も気づきがあった」――教えることは二度学ぶこと。教えることで教わるのです。

「学習者」と「支援者」の立場を交互に経験して、それぞれが学び合う、充実した学びの空間を共創しています。

私は、このような共創の場を創造していきたいと考えています。「一生学び合い、高め合えるプラットフォームづくり」が私の夢の一つです。

講師は一人ひとりさまざまな夢にチャレンジしています。その研究や仕事の成果は、将来の私たちの生活を根底から変えるかもしれません。世界の未来を切り拓く存在である大学生が自信を持って夢にチャレンジしていけるよう、今後も応援していきたいと思います。

スキルが身につき、就職活動に活かせる。「貢献実感」「成長実感」を圧倒的に高いレベルで満たし、大学生の「働く喜び」を生みだす。従業員満足度(ES)の充実が顧客満足度(CS)の向上を生みだしています。