共創のリーダーシップ
齋藤 勝己(さいとう・かつき)
1964年5月生まれ、中央大学経済学部卒。小中高生を対象とする個別指導塾を直営で252教室展開。東証一部上場。経済同友会会員、日本ホスピタリティ推進協会理事。トレードマークは満面の笑顔と腹の底から出る大きな声。曾祖父は落語家の初代三遊亭圓歌。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます

問い:会社を1万人の大学生が「働きたい」と熱望するアルバイト先にするには?
答え:働くすべての人が「共創のリーダーシップ」を実践する

昨今の日本のサービス産業は未曽有の人手不足に陥っています。

「募集をかけても人財が集まらない」と営業時間の短縮や店舗の閉鎖を余儀なくされる企業もあるほどです。

ところが当社には「ぜひ働きたい」と志望する大学生が多数押し寄せています。

講師の在籍数は2015年から年間1000人のペースで増え続け、2019年にはついに1万1000人を超えました。そのうち大学生が85%を占めます。

その1万人の大学生は生徒にひたすら教科を教えているわけではありません。

対話を通じて心通う関係性を育み、生徒の心に寄り添い、目標達成まで伴走しているのです。

しかも、教室という職場が取り組むべき課題を自ら見つけ出し、計画を立てて主体的に運営に取り組みます。そこでさまざまな気づきを得て成長していきます。

そこで学んだ生徒が大学に入学してから、初めてのアルバイト先として選んでくれるケースも増えています。なかには、小学生から大学受験までを生徒として通い、大学生になると今度は講師として4年間通って、「もはや本籍が東京個別指導学院ですよ」と笑い飛ばす講師もいるほどです。

こうして、教室には学ぶ喜びと働く喜び、そして成長する喜びが満ちあふれています。

なぜ、個別指導塾という事業でこんなことができるのでしょうか。

答えは、「心通う関係性」を育む「共創のリーダーシップ」にあります。

「共創のリーダーシップ」を実践するのは、当社に集い働くすべての人たちです。
大学生アルバイトの立場でも、主体的に行動することでみるみる成長していきます。

ここでまず最初に、「リーダー」と「リーダーシップ」についての考え方から説明していきましょう。

問い:「リーダー」はいつ生まれるのか?
答え:ビジョンに共感し「フォロワー」が生まれたとき、リーダーも生まれる

リーダーとはどんな人を指すのでしょうか。

「〇〇長」と、何か役職がついていればリーダーと呼べるのでしょうか。それとも部下や後輩がいればリーダーなのでしょうか。

私は、「リーダーとはフォロワーがいる人」と捉えています。
一人でもフォロワーがいればリーダーです。

では、フォロワーとはどんな人を指すのでしょうか。

「フォロワーとは、ある人が語るビジョンに共感し、実現のために共に歩むと決めた人」と私は捉えています。

フォロワーがいるからリーダーが生まれるのです

このように、リーダーは相手との「関係性」において初めてリーダーとなりうるのです。この関係性は、職場の上司・部下を問わず、家族でも、友人同士でも生まれます。

では、フォロワーが生まれるのはどんな瞬間でしょうか。

それは、ビジョンが言葉としてアウトプットされ、共感が生まれたときです。

「いつかあの山に行きたい」ではなく、

「あの青く輝く山を見てほしい。あの山の頂には、私も君もまだ見たことのない美しい花が咲いているという。道は険しくとも、その花を共に見に行こう」

このように語られ、共感が生まれたときです。

偉大な黒人解放運動のリーダーとして知られる、アメリカのマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師。1963年、リンカーン記念館の階段で20万もの大観衆を前にした演説「私には夢がある」(I Have a Dream )は、迫害の現状に対し強い闘志を表明した後、彼の「夢」を語ったものです。

    

 私には夢がある。それは、いつの日か、この国が立ち上がり、「すべての人間は平等に作られているということは、自明の真実であると考える」というこの国の信条を、真の意味で実現させるという夢である。
 私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。
 私には夢がある。それは、いつの日か、不正と抑圧の炎熱で焼けつかんばかりのミシシッピ州でさえ、自由と正義のオアシスに変身するという夢である。

(アメリカ大使館の広報・文化交流部サイト「AMERICAN CENTER JAPAN」より)

キング牧師は自分ひとりの夢として語っています。しかし夢のすべては、目の前にいる20万の聴衆が、そして虐げられていた民衆が実現したいビジョンそのものなのです。

このようにビジョンとはありありと描くものです。そして、ビジョンを言葉にして届けることでフォロワーが生まれ、関係性としてのリーダーが生まれます

組織を束ねる立場にある人は、後輩や部下がいますよね。関係性の意味で彼らのリーダーになるには、ビジョンを言葉にして届けましょう。

まずは、以下の3つについて深く思考し、そのビジョンをありありと描いてみましょう。
そして、はっきりと言語化しましょう。

「私たちは何を大切にしていくのか」
「私たちはどこを目指すのか」
「目指す理由はなぜなのか」

この3つをしっかりと言葉にできましたか?

さあ、あなたの「関係性」におけるリーダーシップのスタートです。

問い:リーダーの生き方とは何か?
答え:自分自身を導くリーダーシップ「リード・ザ・セルフ」

「リード・ザ・セルフ」とは、「自分で自分自身を導く」という生き方です。私にとって最も共感できるリーダーシップの根本思想であり、生きるための根幹です。自身のあるべき姿やありたい未来をビジョンとして描き、実現に向かってチャレンジすることです。

「lead」は目的語を伴う他動詞。何を導くのかをはっきりと言葉で定義する必要があります。「lead the people」は人々を導くことです。「lead the society」なら社会を導くこと。人や社会といった外在するもの、いわば他者を導く前に、根本に置きたい目的語が「the self」です。

生きることは自分自身をリードすること。「リード・ザ・セルフ」は生き方。立場や役割を問いません。リーダーかフォロワーかを問わず、誰でも実践できます。もし根幹として持つことができれば、困難に直面しても自ら立ち向かうことを選択できるでしょう。

何にチャレンジし、何を実現させたいのか。自分自身のありたい姿はどんなものか。

未来へ自分を連れて行きましょう。

見つめてほしいのは「自分らしさ」です。自分らしさを知り、自分らしさを追いかけてこそ、他者をリードすることができるのです。

今まで「私は社長になる」と決めて自分をリードしてきたことはありません。私はビジネスパーソンとしての自分のありたい姿を「チームに良い影響を与えるリーダーになること」だと決めました。チームに良い影響を与え、チームの未来を笑顔にするリーダーになる。この姿に向かって自分を導き、チャレンジを続けてきました。

チームの規模は年々大きくなり、今は一つの会社となっています。