恋愛、仕事、就職や転職での面接試験など人生において、一般的にネガティブな思考・行動・発言は良くないものとされています。本来、その人の持つ人格や仕事の遂行能力とは直接的に関係がないのに、ネガティブは消極的、否定的、内向的、引っ込み思案、悲観的、性格が暗いなどのマイナスイメージが強く、避けなければならないと多くの人に思い込まれています。
このような理由から、ネガティブな思考法の持ち主は、性格を改造しようとして無理にポジティブになろうと努力する人もいます。しかし、本当にネガティブ思考は無条件に悪いことでしょうか。いいえ、決して、そんなことはありません。
もちろん、ネガティブ思考には悪い面もありますが、良い面がたくさんあります。そして誰もが知る著名な経営者もネガティブ思考の持ち主です。むしろ、ネガティブ思考こそが経営や優れた製品開発を成功させています。
では、良い面、悪い面のネガティブ思考を知り、悪いネガティブ思考にならないで、良いネガティブ思考ができるようになるには、どのようにしたら良いのでしょうか。それを明らかにします。
ネガティブ思考の良い面
1.ネガティブ思考は練りに練られた優れたアイデアを創造しやすい
一般的に、クリエイターという仕事を行う人で、成功している人はネガティブな人が多いといわれています。正確にいうと、性格がネガティブというわけではなく、性格がポジティブな人であってもクリエイトするときにネガティブな思考法ができる人です。
なぜネガティブ思考が良いかというと、思いついたアイデアについて、これでは、誰もすごいと思ってくれない、人前に出すのが恥ずかしいなどと考えるからです。そして、そのアイデアが、より良くなるように徹底的に考えて作り込むからです。
一方、ポジティブ思考の人は、自己満足が早く改良すべき点があっても、これで問題ないだろうと良い方向に考えるので、どうしてもアイデアの完成度が上がらず、良いものができあがりません。
私達は、優れたクリエイターは能力が高いから、優秀なアイデアを作り出していると思いがちですが、優れたクリエイターほど見えないところで大変な努力をしている人が多いのです。ネガティブ思考で、簡単に満足しないで完璧を目指しているから優れたアイデアが生まれていることを知らなければなりません。
2.ネガティブ思考は経営や製品・サービスの質を高める
また、経営者にもネガティブ思考をする人が目立ちます。経営者がポジティブで、「超強気な行け行け経営」を行うと、好景気のときであれば、あまり大きな問題は生じませんが、不景気なときは、たちまち経営に行き詰ることは目に見えています。
厳しい経営環境のときこそ、ネガティブ思考で、慎重に投資判断を行い、また優れた製品を開発するために、本当にこれで顧客が満足し、競争相手に勝てるのかを徹底的にネガティブに見直さないと、モノが簡単には売れない時代には売れる製品が開発できません。
3.超有名社長のネガティブ思考がもたらした成功
1.ユニクロの例
ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングの柳井正社長は、ユニクロが急激な成長を遂げているころから、常に「崩壊」「未曾有の困難」などのネガティブな言葉を使い危機感を従業員に植え付け続けていたといわれています。
通常、大躍進をしている経営環境では、自身の戒めとすることはあっても、社内への危機感の醸成まではしないものです。柳井社長のネガティブ思考は、自分自身への戒めだけでは済まなかったのでしょう。だからこそ、ユニクロの急成長が成し遂げられたのではと思われます。
2.アップルの例
アップルを創業したスティーブ・ジョブズにはたくさんの名言があります。
「消費者に、何が欲しいかを聞いて、それを与えるだけではいけない。完成するころには、彼らは新しいものを欲しがるだろう」
「絶対にマネのできない、マネしようとすら思わないレベルのイノベーションを続けろ」
これらの名言は、ポジティブな思考からは出てきそうもありません。このネガティブな思考があったからこそ、スティーブ・ジョブズは、圧倒的に差別化された製品を世に送り出すことができたのです。
2人以外にもたくさんの経営者が、程度は違っても、ネガティブ思考法で経営に臨んでいます。どこまで徹底できるかが、企業の成長スピード、あるいは製品の質のレベルを決定します。
ネガティブ思考の悪い面とネガティブ思考の本質
ネガティブ思考には良い面もありますが、言葉の意味が持つような悪い面もあります。また、時間の制約のないときは、ネガティブ思考で満足できるまで改良・改善を加えても問題ないですが、経営においては、常にそのようなときばかりではありません。
「拙速は遅速に如かず」または「拙速は巧遅に勝る」ということわざがあるとおり、情報化時代には、判断の遅れは致命的な失敗につながります。「完璧な仕事より早い仕事」をしなければならないときがあります。ネガティブ思考では、どうしてもスピードが遅れます。
経営にとって重要なことは、スピードか完成度かを見極めて対処することです。一番悪いのは、考えすぎて何もしないことです。ネガティブが行き過ぎると、現状維持になってしまいます。
良いネガティブ思考とは、現状維持ではなく現状否定です。現状否定は、今より良いものを産みだす必要があるので、現状維持に陥ることを避けることができます。
つまり、ネガティブは、ポジティブと表裏一体で、ネガティブな思考でポジティブに行動することであり、同時にポジティブな思考で、ネガティブに行動することでもあります。
いくら熟慮をしても、経営の世界では、これで100%はありえません。常に判断には、リスクが伴います。ネガティブでも、ある時点でポジティブな判断が必要です。経営の世界では、スピーディにやるとポジティブに決断し、実行は、ネガティブに検討に検討を重ねた万全な計画で臨まねばなりません。
ネガティブ思考、ポジティブ思考を性格だからと諦めていけない
どんな人でも、ある程度は、ネガティブ思考とポジティブ思考を自然に使い分けることができるものです。嫌いな上司やいやな仕事には自然とネガティブ思考による対応をします。逆に、好きな女性や好きな趣味には、自然とポジティブ思考で行動します。
しかし、どうしても性格・気質によってネガティブ思考になりやすい人、逆にポジティブ思考になりやすい人に分かれます。そのまま、性格だから改善できないと諦めていては、経営には役に立ちません。
嫌いな取引先の担当者との商談や納期の迫った仕事を命じられた時にも、全力で前向きに対応できるようにポジティブ思考する。あるいは、成功するために、成功の阻害要因をネガティブ思考で徹底的に考えて、それらを取り除く方法や解決する方法を考え出せるようにする。経営者はそうならなければなりません。
また、逆に誰もがこれは儲かる話だという商談などを持ちかけられたときには、本当に儲かる話かをじっくりネガティブに思考する必要があります。いきなりポジティブに行動してしまっては、詐欺のような被害あう恐れがあります。そうしたものから会社を守らなければならないのです。
では、どうすればネガティブ思考やポジティブ思考を、より意識的に、自在に使い分けられるようになるのでしょうか。
真のネガティブ思考、ポジティブ思考を身に付けるには
人は一般的に「精神的に弱っているな、落ち込んでいるな」と思うと、自然に「これでは、良くない。前向きになろう」と気持ちを意識的に切り替えようとします。これはこれで非常に重要なことです。しかし、その前に「ネガティブな自分、精神的に弱っている、落ち込んでいる自分を受け入れる」ことがもっとも重要です。
つまり、気持ちを切り替えるだけでは、現状から逃げていることになり、真の自分とは向かっていないので、本当に必要なポジティブ思考は生まれてきません。
では、どうすればいいのでしょうか。
自分を乗り越えることで、ネガティブ思考を克服するポジティブ思考が可能になります。
簡単ではありませんが、できないことではありません。性格や気質は生まれつきなので、そう簡単に変えられませんが、思考は生まれたときからついてくるものではないので、性格や気質に依存するとはいえ、切り離すことができます。思考パターンは変えていくことができます。
なお、人や企業は、誰にも負けない得意な土俵や強みを持っています。自分や経営に真摯に向かい合うことによって、その土俵や強みが明確に見えてきます。そして、負けない土俵や強みで勝負するという、ポジティブ思考ができるようになります。経営にはそれが必要です。いくらポジティブであっても負ける土俵では、ネガティブに熟慮しても成功は難しくなります。
まとめ
ネガティブ思考は「悪」という考えがありますが、経営の厳しい時代には、むしろポジティブ思考よりもメリットが大きい考え方です。ネガティブ思考が優れている理由と、ネガティブ思考にあるマイナス面を避けて、ポジティブ思考をうまく利用する方法を説明しています。
参考:
ネガティブこそが成功への近道!「ポジティブ病」を抜け出し成果を出そう
http://laugh-raku.com/archives/804
「脱・ポジティブ」で結果を出す! ネガティブシンキングのススメ
http://www.lifehacker.jp/2013/01/130123negative_thinking.html
(提供:ベンチャーサポート税理士法人)