展覧会情報から、注目のオークション結果まで。ANDARTとYOUANDARTのお取り扱いアーティストの話題を中心に、2021.11.06-2021.11.12に起こった世界のアートニュースを振り返ってみよう。(1ドル= 113.93円で換算)

目次

  1. 注目の作品
  2. アーティスト
  3. オークション
  4. NFT
  5. 展覧会

注目の作品

▍バンクシーのオリジナルアートワーク、ハリウッド俳優のクリストファー・ウォーケンによって塗りつぶされる

テレビドラマのキャスト
(画像=テレビドラマのキャスト)

画像引用:https://edition.cnn.com/

バンクシーによるネズミのグラフィティが、ハリウッド俳優のクリストファー・ウォーケンにより塗りつぶされた。バンクシーの故郷であるブリストルを舞台にしたTVドラマの撮影で起こったもの。

「ウォーケン演じる主人公が、社会奉仕活動の一環として落書きを消すためにペンキを塗らされる」というドラマのシーンでの出来事であったが、番組の制作会社は「同番組に登場した作品は、オリジナルのバンクシーであり、クリストファー・ウォーケンがこのシーンの撮影中にその作品の上にペイントし、最終的に破壊したことを確認しています」と述べている。

番組は「バンクシーの許可を得て」塗りつぶしたとしている。バンクシーの認証サービスであるPest Control社は、この”コラボレーション”がどのようにして実現したのかについて回答していないが、バンクシーはウォーケンのファンであり、この番組シリーズが彼の出身地を紹介していることを評価しているとのことだ。(artnet news)

▍プラド美術館、世界一高額な絵画 ≪サルバトール・ムンディ≫ をダ・ヴィンチ作から格下げ評価

レオナルド・ダ・ヴィンチの作品であると認証されていた ≪サルバトール・ムンディ≫が、プラド美術館において、ダ・ヴィンチ作ではなく「帰属作品、工房、またはレオナルドが許可・監修した作品」と、格下げの評価となった。同作品は、2017年に500億円超 (4億5000万ドル) で落札され、歴代最高額でされた絵画作品だが、その地位を疑問視する専門家達もいた。今回のプラド美術館の決定は、クリスティーズでのオークション以来、主要な美術館からの最も批判的な反応となったかたちだ。(THE ART NEWSPAPER)

アーティスト

▍ゲルハルト・リヒター、100点の自作をベルリンの国立ギャラリーに長期貸与へ

ゲルハルト・リヒターの≪Birkenau≫の作品群
(画像=ゲルハルト・リヒターの≪Birkenau≫の作品群 © SPK / photothek.net / Xander Heinl/ © Gerhard Richter 2021.)

画像引用:https://news.artnet.com/

ゲルハルト・リヒターは、彼の100点の作品をベルリンの国立ギャラリーに提供する大規模な長期貸与契約に署名した。2026年の完成を目指している「20世紀美術館」の専用ギャラリーに展示される予定だという。このコレクションには、リヒターの絵画40点とオーバーペイントされた写真60点が含まれてるが、特に注目されているのはホロコーストの残虐行為を反映した4枚組の絵画 ≪Birkenau≫ だ。「ビルケナウ強制収容所」の資料をもとに描かれたこの作品は、「決して市場に出てはならない」リヒターが語っている。(artnet news)

▍KAWS とアメリカの国民的シリアル Reese’s Puffs がコラボレーション。シリアルとARゲームを発売

KAWSはアメリカの国民的なシリアル「Reese’s Puffs」とコラボレーションし、限定シリアルボックスとARゲームを発売する。KAWS COMPANIONが描かれ、アメリカ全土のシリアル売り場で入手可能な約450円 (3.99ドル) のオレンジ色のパッケージと、約5,700円 (49.99ドル) の青色の数量限定パッケージの2種類のシリアルボックスが登場。同パッケージに印刷されたQRコードからARゲームにアクセスし、高得点を獲得するとKAWS本人のサイン入りを含むコレクターズボックスが当たるようだ。(businesswire)

オークション

▍サザビーズ、2つのバンクシー作品をライブオークションで初めて暗号通貨で販売へ

サザビーズは、11月18日に開催される「The Now Evening Auction」において、バンクシーの2作品をイーサリアムでリアルタイムに入札して販売することを発表した。同オークションでは、他のアーティストの作品も出品されるが、バンクシーの≪Love in the Air≫ と ≪Trolley Hunters≫ のみが、同社のオークションでは初となるエーテル(暗号通貨)での販売となる。なお、過去にはフィリップスがバンクシーの≪Laugh Now Panel A≫の入札をエーテルとビットコインで受け付けている。(Bitcoin.com)

▍2020年以降初のクリスティーズ ニューヨークでのライブオークションで新記録が続出。

2021年11月9日、クリスティーズオークション「21st Century Evening Sale」がニューヨークで開催された。出品した全作品が落札となる「ホワイトグローブセール」となり、”アート市場のリトマス試験紙” とも言われる2週間のニューヨークオークションの好調な幕開けとなった。

バスキアの《The Guilt of Gold Teeth》がトップロットとなり、10名のアーティストの記録が更新されたほか、NFTで有名なアーティストBeepleの初の物理的作品《HUMAN ONE》は史上2番目に高額で購入されたNFTとなった。

ANDARTでは、落札価格トップ5の作品とANDARTに関連するアーティストの落札情報をピックアップして紹介している。

NFT

▍サザビーズとクリスティーズ、現代アートオークション売上の約5%がNFTに

アートオークションにおいてもNFT作品の高額落札のニュースが多く見られるが、2021年はサザビーズが約74億円 (6,500万ドル)、クリスティーズが約114億円 (1億ドル) のNFTを販売したと、ロイターが報じた。Art Market Research社のデータによると、これらの販売額は、両社の現代美術の販売額の約5.5%を占めるという。(PYMNTS.com)

▍NFTの売上のうち、女性アーティストの比率はわずか16%

ArtTactic社の新しいレポートによると、過去21ヶ月間のNifty Gateway社のNFT売上のうち、女性アーティストの占める割合はわずか16%だったと報じられている。しかしながら、この男女間の不均衡は従来のファインアート市場と比べれば解消されている方向であり、2008年から2019年6月までの間の美術品オークションの総売上高に占める女性アーティストの寄与はわずか2%にすぎないという。男女間の差だけでなく地域の差も生じるなど、従来と比べて改善は見られているものの、NFTにおいても白人男性優位な状況は続いているようだ。(artnet news)

展覧会

▍パブロ・ピカソ、クロード・モネらの作品と若手アーティストがコラボレーション。「吉野石膏コレクション meets コンテンポラリー・アート vol.1」展

吉野石膏の所蔵する絵画コレクションから、クロード・モネ、パブロ・ピカソ、葛飾北斎、岸田劉生など、東西の絵画32点を公開する展覧会「吉野石膏コレクション meets コンテンポラリー・アート vol.1」が開催中だ。会場は表参道ヒルズ 本館地下3階 スペース オー。本展では同コレクションとともに、吉野石膏美術振興財団が支援した若手作家6名の作品とのコラボレーション展示が試みられる。また、解説付きのオンライン会場も11月19日にオープン予定だ。(会期:2021年11月13日~11月28日)(吉野石膏コレクション meets コンテンポラリー・アート vol.1)

▍東京都現代美術館で「Viva Video! 久保田成子展」と「MOTコレクション Journals 日々、記す vol.2」が開幕

東京都現代美術館で、映像と彫刻を組み合わせた「ヴィデオ彫刻」で知られる久保田成子(1937-2015年)の没後初、日本では約30年ぶりの大規模な個展が開幕した。代表作「デュシャンピアナ」シリーズをはじめ、ヴィデオ彫刻、映像作品、それらのためのスケッチやアーカイヴ資料などにより、久保田の仕事を多角的に見る展覧会となる。(会期:2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水・祝))(Viva Video! 久保田成子展)

同時に、同美術館のコレクションを紹介する「MOTコレクション Journals 日々、記す vol.2」も開幕。私たちの生活を一変させたコロナ禍や、世界規模で開催されてきたオリンピック、なにげない日常などを背景に日々制作された作品を2フロアにわたって展示。大岩オスカールがニューヨークでの隔離生活中に制作したドローイングをもとにした版画作品20点も展示される。同作品はYOUANDARTでもお取り扱い中。(会期:2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水・祝))(MOTコレクション Journals 日々、記す vol.2)

▍コレクターとしてのジュリアン・オピーの展覧会が、イングランドで開幕。

Newlands House Galleryでの展示風景
(画像=Newlands House Galleryでの展示風景)

画像引用:https://fadmagazine.com/

イングランドにあるNewlands House Galleryで、11月6日より、ジュリアン・オピーのプライベートコレクションの展覧会がスタートした。本展では、イギリスの現代アーティストであるジュリアン・オピーが個人的に収集した、古代から現代までの100点以上の作品を、彼自身の彫刻、絵画、映像作品とともに展示している。

作品は年代順に並べられているわけではなく、アーティストの探究心を反映してキュレーションされており、喜多川歌麿が描いた日本女性の日常的なシーンの作品を、オピーのアニメーション液晶ポートレート「Ruth smoking 2」(2006年)と並べて展示するなど、ユニークな組み合わせの展示が行われている。(FAD magazine)

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文:ANDART編集部