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(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

倒産したJALを再生させた稲盛和夫の「アメーバ経営」とは

京セラの創業者稲盛和夫は、資本金300万円、従業員28名でスタートしたベンチャー起業家です。その後、起業から約半世紀で京セラを、資本金が1,157億円{2013年3月期}、従業員がグループ全体で7万人を超える大企業に成長させました。また、電話事業の第二電電(後のKDDI)を立ち上げ、最近では、経営破綻したJALを世界の航空会社でもダントツに高収益の会社へと再生した名経営者です。

JALの再生に関しては、官僚主義で固まったエリート集団から反発を受けながらも、破綻企業だった同社を15%とダントツの高収益を誇る航空会社へ変身させました。欧米の名だたる国際線の航空会社の営業利益率が5%前後なので、これは驚くべき数字です。これにも威力を発揮した、稲盛和夫の「アメーバ経営」とはどんな手法なのかを探ってみたいと思います。

利益を増大させるアメーバ経営とは

稲盛和夫の経営手法は、「アメーバ経営」と呼ばれていて、よく雑誌などのメディアにも取り上げられています。しかし、その「アメーバ経営」の正確な内容を理解している人は少ないことでしょう。

「アメーバ経営」とは、社内に少人数のチームを作り、各チームが1時間あたりの採算値を算出し、その値の最大化を目指す経営方法です。目的は、社員全員に経営に関わっているという当事者意識を持たせ、経営者意識の高い人材を育成することです。

「アメーバ経営」では、部門単位やチーム単位で損益が1カ月単位で明確になります。少し、組織が大きくなると、どの部門がどれだけ利益を生み、逆にどの部門の生産性が悪いかは見えにくくなります。しかし、「アメーバ経営」では、小さな組織単位での問題点が分かり、1カ月単位で結果が現れるので素早い対応が可能になります。

加えて、小さなグループ全員で問題点を明らかにするため、社員に経営参加・当事者意識が芽生え、モラルアップにつながります。そして、社員全員にコスト意識が高まり、無駄のない業務遂行が可能になります。この結果として、利益の絶対額と利益率が上がっていきます。

「アメーバ経営」を導入することが難しい理由

「アメーバ経営」は、理想的な経営手法ですが、その導入・実践はかなり難しいといえます。成功するには、社員1人ひとりが、同じ方向に向かって進むための価値判断基準を持っていなければなりません。「船頭多くして船山に登る」のことわざがあります。指示者が多くて、言うことがそれぞれで異なっていると向かう方向がバラバラとなり、成果はあがりません。また、組織の単位を小さくしていくと、さまざまな事務処理が増加し、全員参加で問題点の解決を図るために会議時間が増えるなどの無駄が生じます。

アメーバ経営を成功させるには、社員全員が同じ方向に向かうための経営理念を明確にして社員に植え付ける必要があります。経営理念が浸透することで、皆が同じ方向へ向かうので、例えばバラバラな意見を同じにするために会議を開くなどの無駄をなくせます。

アメーバ経営のエッセンスを中小企業経営に活かすには

稲盛和夫は、アメーバ経営について著書で次のように述べています。

・「アメーバ経営」とは、確固たる経営哲学と精緻な部門別採算管理をベースとした経営手法である。
・企業を長期的に発展させるには、正しい「経営哲学」を全社員と共有することが必要である。
・「アメーバ」と呼ばれる小集団に分け、社内からリーダーを選び、その経営を任せることで経営者意識を育成することができる。
・「アメーバ経営」では、各リーダーが中心となって計画を立て、全員の知恵と努力により目標を達成していくことで、社員1人ひとりが主役となり、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現できる。

形式的に「アメーバ経営」を導入しても人間を相手にした場合は、100%成功しません。「アメーバ経営」もトヨタの「カンバン方式」も経営哲学があって成功します。その上で、「アメーバ経営」の本質を理解し、自社にアレンジして導入することが重要です。

参考:
稲盛流アメーバ経営を中小企業に導入する方法とは!
http://www.attax.co.jp/column/detail/00739.html

(提供:ベンチャーサポート税理士法人