2021年10月21日から22日にかけて、クリスティーズ「Prints & Multiples」がニューヨークで開催された。アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ロイ・リキテンスタインなどポップアートの人気アーティストを始め、近現代を代表するアーティストの作品がプリント中心に出品された。本記事では、落札額TOP5の作品と、ANDARTに関連する注目作品をピックアップして紹介する。落札価格は手数料込み、1ドル=113.46円(10月22日終値)で計算。

5)デイヴィッド・ホックニー《Afternoon Swimming》
落札価格:約5,673万円($500,000)

《Afternoon Swimming》(1979年)
(画像=《Afternoon Swimming》(1979年))

画像引用:https://www.christies.com/

デイヴィッド・ホックニー(1937年〜)はイギリス生まれのアーティストで、イギリスのポップアート運動に貢献したことで知られる。1960年代に活動拠点をロサンゼルスに移したこともあり、アメリカでも高い人気を誇る。スイミングプールを題材にしたシリーズは、カリフォルニアの家庭に設置されているスイミングプールから着想を得たもの。初期の作品に特徴的だった暗い色調は息をひそめ、陽光が感じられる明るい作風に移行した。本プリント作品を出版した「Tyler Graphics」の設立者ケネス・タイラーの家にもプールがあり、ホックニーも昼食時に訪れては泳いでいたという。予想最高落札価格の3倍を超える高値での落札となった。

予想落札価格:約1,134万円〜約1,701万円($100,000 – 150,000)

4)アンリ・マティス《Jazz》
落札価格:約8,781万円($774,000)

《Jazz》(1947年)
(画像=《Jazz》(1947年))

画像引用:https://www.christies.com/

フォーヴィスムの旗手アンリ・マティス(1869〜1954年)による、カットアウト(切り絵)の手法を使った作品。マティスの初期作品は激しい色彩が特徴的でフォーヴィスム(野獣派)と呼ばれたが、しだいに形態が簡略化されていき、晩年には身体が不自由になったこともあってカットアウトによるコラージュ作品がメインになった。20のパターンがセットになった本作は、250部の書籍と100部のポートフォリオとして出版された。今回出品されたのは製本されていない書籍版で、予想最高落札価格を大幅に上回る結果となった。

予想落札価格:約3,403万円〜約5,673万円($300,000 – 500,000)

3)エドヴァルド・ムンク《Madonna》
落札価格:約9,973万円($879,000)

《Madonna》(1895-1902年)
(画像=《Madonna》(1895-1902年))

画像引用:https://www.christies.com/

19世紀末に活躍したノルウェーの画家エドヴァルド・ムンク(1863〜1944年)。《叫び》が有名だが、マドンナも繰り返し描かれた代表的なモチーフで、複数のバージョンの油彩画と版画が存在する。本作のように、版画版にはマドンナの周辺に精子が漂うような模様のフレーム、左下に胎児が描きこまれた。「マドンナ(聖母)」というタイトルではあるが、聖母マリアとしては珍しい表現であることや、ムンクが宗教的な作品をあまり描いていないことから、理想の女性に対する崇拝を聖母像に重ねているのではないかとも考えられている。

予想落札価格:約7,942万円〜約1億211万円($700,000 – 900,000)

2)アンディ・ウォーホル《Myths》
落札価格:約1億551万円($930,000)

《Myths》(1981年)
(画像=《Myths》(1981年))

画像引用:https://www.christies.com/

2位にはポップアートの旗手アンディ・ウォーホル(1928〜1987年)がランクイン。約96.5cm四方のスクリーンプリント10点がセットになっている。「Myths(神話)」と名付けられたこのシリーズでは、歴史的・文化的なアイコンともいうべき有名なイメージをそれぞれポートレートにしており、1点を除いてダイヤモンドの粉が織り込まれている。写真上段左から時計回りに、グレタ・ガルボ、アンクルサム、マミー(特定のキャラクターではなく、アメリカの映画やアニメに登場するイメージ)、ハウディー・ドゥーディー、スーパーマン、自画像、サンタクロース、ミッキーマウス、ドラキュラ、魔女。

予想落札価格:約6,807万円〜約9,076万円($600,000 – 800,000)

1)パブロ・ピカソ《Séries 347》
落札価格:約2億4,847万円($2,190,000)

《Séries 347》(1968年)
(画像=《Séries 347》(1968年))

画像引用:https://www.christies.com/

1位に輝いたのは20世紀最大の巨匠パブロ・ピカソ(1881〜1973年)。ピカソは2021年上半期のオークション総売上高第1位のアーティストでもある(Artprice調べ)。本作は最晩年の銅版画で、この頃すでにパリを離れて郊外に移り住んでいたピカソは、絵画やドローイングや彫刻を差し置いて版画制作に没頭していた。本作は1968年の7ヶ月間に制作された347点の版画のひとつで、プリントの日付によって死を意識するピカソの思考の変遷を追うことができる記録ともなっている。当初から高額での落札が予想されていたが、それをさらに上回る結果となった。

予想落札価格:約1億3,615万円〜約2億422万円($1,200,000 – 1,800,000)

ANDART編集部が落札情報をピックアップ!

アンディ・ウォーホル《Pepper Pot, from Campbell’s Soup I》
落札価格:約921万円($81,250)

《Pepper Pot, from Campbell’s Soup I》(1968年)
(画像=《Pepper Pot, from Campbell’s Soup I》(1968年))

画像引用:https://www.christies.com/

ANDARTでも取り扱いのあるウォーホルの作品が登場。ANDART取り扱い作品のオーナー権総額(600万円)の約1.5倍、今回のオークションでの予想最高落札価格の4倍以上となる好成績を記録した。ウォーホルといえば真っ先に思い浮かべる人も多いであろう紅白のスープ缶は、大量消費される大衆文化をテーマにしたウォーホルを代表するモチーフ。サイン入りの限定版プリントは、今なお人気のため高額で取り引きされる。

予想落札価格:約170万円〜約226万円($15,000 – 20,000)

アンディ・ウォーホル《Cow》
落札価格:約312万円($27,500)

《Cow》(1971年)
(画像=《Cow》(1971年))

画像引用:https://www.christies.com/

同じくアンディ・ウォーホルの《Cow》は、色違いで3点の出品があった。このシリーズは1966年から1976年までの間に、配色を変えて制作されており、上の画像の青色の背景に茶色の牛の作品は、黄色の背景にピンクの牛の作品に続き、1971年につくられたもの。状態や来歴によって価値は変わってくるが、ANDARTでは特に希少性の高い、ウォーホル財団の鑑定が付いた《Cow》を取り扱っている。

予想落札価格:約56万円〜約79万円($5,000 – 7,000)

ダミアン・ハースト《Mickey》
落札価格:約468万円($41,250)

《Mickey》(2014年)
(画像=《Mickey》(2014年))

画像引用:https://www.christies.com/

イギリスを代表する現代アーティスト、ダミアン・ハーストが、ディズニーからのリクエストによりミッキーマウスをモチーフにした作品。2018年にはミッキーマウス生誕90周年を記念し、「Swatch(スウォッチ)」とのコラボレーションで、同様のイメージをデザインした限定腕時計が発売された。世界的な人気キャラクターを、ハーストが好んで用いるポップなドットで表現したゆかいな作品だ。

予想落札価格:約226万円〜約340万円($20,000 – 30,000)

アレックス・カッツ《Anne》
落札価格:約425万円($37,500)

《Anne》(1990年)
(画像=《Anne》(1990年))

画像引用:https://www.christies.com/

近年マーケットでの評価が急上昇している90代の現役アーティスト、アレックス・カッツ。カッツが1950年代の終わり頃から手掛けた、薄い板に描いた肖像を切り出す手法は「カットアウト」と呼ばれ、本作はアルミニウム板にプリントしたもの。約1.7×0.6mで、等身大よりも大きいサイズとなっている。

予想落札価格:約170万円〜約283万円($15,000 – 25,000)

ANDARTでは、オークション速報やアートニュースをメルマガでも配信中。無料会員登録で最新のアートニュースをキャッチアップできます。この機会にどうぞご登録下さい。

文:ANDART編集部