2021年10月14日、サザビーズ (ロンドン) の「Contemporary Art Evening Auction」が開催された。世界的に有名なアートフェア「フリーズ」と「フリーズ・マスターズ」に合わせて開催され、20世紀、21世紀を代表する巨匠たちの作品が取りそろえられた注目のセールだ。
バンクシーの”シュレッダー”作品が出品された話題で持ちきりとなったが、そのほかにもゲルハルト・リヒター、サイ・トゥオンブリー、アリギエロ・ボエッティ、草間彌生、エイブリー・シンガー、フローラ・ユクノビッチ… と、著名なアーティストから新進気鋭のアーティストまで、世界中の話題の現代アートが一堂に会したセールとなった。
本記事は落札額トップ5の作品を紹介する。落札価格は手数料込み、1ポンド=157.10 円で計算。
5) ≪Mappa≫ / アリギエロ・ボエッティ
落札価格:約4億7,800万円 (3,040,000 GBP)
画像引用:https://www.sothebys.com/
イタリアのコンセプチュアル・アーティスト アリギエロ・ボエッティの作品がランクイン。1978年に制作された本作≪Mappa≫は、鮮やかな色彩で刺繍された作品。ボエッティのキャリアの集大成とも言えるものだ。世界地図を各国の国旗で表現し、その鮮やかな色彩と非常に細密な描写で、刻々と変化する世界の風景を表現している。
本作は予想最高落札価格 約3.76億円 (220万ポンド) を大きく上回る 約7.48億円 (304万ポンド) の値が付き、同作家のオークションでの史上2番目の落札価格となった。
4) ≪Abstraktes Bild≫ / ゲルハルト・リヒター
落札価格:約9億3,370万円 (5,943,000 GBP)
画像引用:https://www.sothebys.com/
今回のオークションには、35年前にドイツのコレクターであるヘルガ&ワルター・ラフ夫妻が購入したゲルハルト・リヒターの絵画3点が出品されたが、そのうちの1枚。3枚の作品は、1985年の作品制作からわずか1年後に購入されたもので、リヒターの60年のキャリアの中で、卓越した技術を身につけた瞬間を示す重要な作品群だ。
鮮やかな原色を用いた本作《Astraktes Bild》は、複雑な構成の作品となっている。キャンバス地に筆で一様に塗られた無地の連続は、独特の平面性を醸し出しているが、湿った絵の具の層をスキージーや細い筆で擦ることで、この時代の「Abstraktes」シリーズ特有の立体感が生まれている。
3) ≪Abstraktes Bild≫ / ゲルハルト・リヒター
落札価格:約12億4,050万円 (7,896,300 GBP)
画像引用:https://www.sothebys.com/
4位と同じシリーズのゲルハルト・リヒターの3作品のうちのひとつが3位となった。鮮やかな深紅、セルリアン、オレンジ、エメラルド・グリーンの色調が集約され、リヒターの絵画に対するコンセプチュアルなアプローチの中心である、意識的なコントロールと偶然性との間の揺らぎが表現されている作品。予想最高落札価格である約11.0億円 (700万ポンド) を上回る約12.4億円 (約790万ポンド) での落札となった。
2) ≪S.D.≫ / ゲルハルト・リヒター
落札価格:約15億1,130万円 (9,619,800 GBP)
画像引用:https://www.sothebys.com/
4位、3位に続き、今回出品されたリヒターの3作品すべてがtop5にランクインする結果となった。2m ✕ 2mと、3作品の中では最大サイズの作品。熱狂的な色彩と堂々とした美しさのシンフォニーである、ヘルガ&ワルター・ラフ・コレクションの3点の絵画は、現代美術におけるリヒターの先見性のある貢献の大きさを示しているものだ。予想最高落札価格である約14.1億円 (900万ポンド) を超える約15.1億円 (約920万ポンド) での落札となった。
リヒターの絵画3点は今回のオークションの目玉のひとつであり、これら3点の作品が売れてしまった後には、一部の観客たちは会場を後にしていったという。
1) ≪Love is in the Bin≫ / バンクシー
落札価格:約29億1,930億円 (18,582,000 GBP)
画像引用:https://www.sothebys.com/
今回のオークションで最大の注目を集めたバンクシーの≪Love is in the Bin≫。2018年10月のサザビーズでのオークションにおいて、落札のハンマーが叩きつけられたのと同時に、額縁に仕込まれたシュレッダー機構によってキャンバスが裁断され、史上はじめてオークションの最中に「制作」された作品だ。
サザビーズによれば、オークションにおいて9人もの人が10分以上にわたって入札合戦を繰り広げたといい、落札者はアジアのコレクターだったという。今回のオークションで、オークショニアのオリバー・バーカー氏はハンマーを叩く準備をしながら、またいたずらが起きるのではないかと「心配している」という冗談も交えていた。
裁断前の価格の約18倍、予想最高落札価格の3倍以上の価格で落札され、バンクシー作品の落札価格としては史上最高額となった。
アジアのコレクターによってバンクシーの作品が落札されたことにはじまり、今回のオークションはアジアの購買力の影響が大きく感じられる結果となったという。
また、今回のオークションでは、今市場で最も注目されている若手アーティストの作品が次々と高額落札された。ロンドン在住の31歳の英国人アーティスト フローラ・ユクノビッチの抽象画 ≪I’ll Have What She’s Having≫ が、10人の候補者による10分間の競り合いの末、予想最高落札価格の約3倍である約3.6億円 (230万ポンド) で落札されたほか、28歳のイギリス人アーティストで、テートのコレクションの中で最年少のアーティストであるジャデ・ファドジュティミの ≪The Barefooted Scurry Home≫ も、予想価格の3倍以上の約1.3億円 (82.6万ポンド) で落札。南アフリカの35歳の画家、シンガ・サムソンの ≪Lift Off≫ でも予想の5倍近い約5,027万円 (32.1万ポンド) の値をつけた。
画像引用:https://www.sothebys.com/
サザビーズによれば、この夜の登録バイヤーの約4分の1は40歳以下であり、「20代、30代の若いアーティストと若いコレクターがマッチしている」と、アジアのモダン&コンテンポラリーアート部門のチェアマン アレックス・ブランジックは述べている。
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文:ANDART編集部