注目のオークション結果から、NFTの話題まで。今週、アートマーケットを賑わせたトピックを振り返ってみよう。(1ドル= 114.38円, 1ポンド=157.22 円で換算)
注目の作品
▍ポール・スミス所有のバンクシー作品がオークションへ。ゴッホにインスパイアされた作品。
画像引用:https://www.thenationalnews.com/
ファッションデザイナーのサー・ポール・スミスが、≪Sunflowers From Petrol Station≫と題されたバンクシーの絵画をオークションにかける。ゴッホの「ひまわり」に着想を得たこの絵画は、オークションハウスのクリスティーズによって約13.8億円 (880万ポンド) から約20.8億円 (1,320万ポンド) の値がつくと予想されている。この作品は、ゴッホの”ヒマワリ”の絵画を、花びらを落とした枯れたヒマワリの束に変えたもの。
ポール・スミスは、「私が最初にバンクシーに惹かれたのは、何かをありのままに伝える自信と明快さでした。世界で起こっていることを観察する彼の姿勢にとても感銘を受けましたし、それは現在の彼の作品にも当てはまります。」とバンクシーの作品から受けた影響を語っている。オークションは11月9日に行われる。(The National)
▍1998年に40万ドル以下で落札されたバスキアの絵画、11月のクリスティーズで46億円 (4000万ドル) 以上になる可能性。
ジャン=ミシェル・バスキアの1982年の作品 ≪The Guilt of Gold Teeth≫ が、11月9日のクリスティーズ・ニューヨークの21世紀イブニングセールに出品され、4,000万ドル以上の値がつく可能性を示唆されている。
カンタロープとクロリンブルーで描かれたこの巨大なキャンバスは、4m以上の大きさで、オークションに出品された絵画の中で最も高額な作品の一つとなっている。もともとは1998年のオークションで38万7,500ドル(約4,400万円)という価格でこの作品を購入されており、想定の価格で落札されれば、100倍以上という驚異的な価値の向上といえる。(artnet news)
▍ナチスに押収されたゴッホの水彩画がオークションへ。予想落札価格は3,000万ドル。
第二次世界大戦中にナチスに押収され、1905年以降は公に展示されていなかったフィンセント・ファン・ゴッホの水彩画が、来月ニューヨークで開催されるクリスティーズのオークションに出品される。約23億円 (2,000万ドル) から約34億円 (3,000万ドル) で落札される可能性があると見積もられている。
出品されるのはゴッホが1888年に制作した水彩画 ≪Meules de Blé≫ (小麦の束)。この水彩画は、ドイツがフランスに侵攻した際にナチスに没収されたもの。売却益は、現在の所有者であるテキサス州の石油ビジネスマン、エドウィン・コックスの家族と、第二次世界大戦中にこの作品を所有していたユダヤ人2家族の相続人とで分けられることになっているという。(The New York Times)
オークション結果
▍バンクシーの ”シュレッダー” 作品、裁断前の約18倍、バンクシー史上最高額で落札。
2021年10月14日、サザビーズ (ロンドン) の「Contemporary Art Evening Auction」において、2018年のオークションでの落札直後に裁断されたバンクシーの作品≪Love is in the Bin (愛はごみ箱の中に) ≫が競売にかけられた。
本作品は、約28.9億円 (1,858万ポンド)という高額で落札された。2018年の裁断前の落札価格と比較して約18倍となり、バンクシー作品の落札価格としては史上最高額となった。
ANDARTでは、本作品についての解説と、近年のバンクシー作品の市場動向について解説している。
▍ゲルハルト・リヒターが席巻! サザビーズ (ロンドン) 「Contemporary Art Evening Auction」
2021年10月14日、サザビーズ (ロンドン) の「Contemporary Art Evening Auction」では、上記のバンクシー作品以外にも、著名なアーティストから新進気鋭のアーティストまで、世界中の話題の現代アートが一堂に会した。中でも目玉となったのが、35年前にドイツのコレクターであるヘルガ&ワルター・ラフ夫妻が購入したゲルハルト・リヒターの絵画3点。3点は同オークションの落札価格2-4位を占め、合計約37億円 (2350万ポンド) の売上となった。(Artnet news)
ギャラリー・アートフェア
▍フリーズ・ロンドンが開幕。国際的なアートトレードがCovid-19以前に近づく。
世界最大級の国際的な現代アートフェアのひとつ、フリーズ・ロンドンが10月13日に開幕。2年ぶりに対面式での開催となった。アジアのバイヤーは、公衆衛生への懸念や旅行規制の影響で、ほとんどいなかったものの、フェイスタイムや現地のアートアドバイザーを介して、積極的に作品を購入していたという。初日のはじめの数時間は、例年よりもやや遅いペースでの売り行きとなり、時間制限のある入場方法が影響しているのではないかといった意見もあったが、午後の半ばになると、完売するブースも出てくるなど、活気を取り戻している様子が見られているようだ。(artnet news)
▍フリーズ・ロンドン2021を記念した、ダミアン・ハーストの未公開作品を紹介する展覧会。
2021年のフリーズ・ロンドンを記念し、ロンドンにあるプライベートメンバークラブAnnabel’sは、ダミアン・ハーストと協力して彼自身のキュレーションによる未公開作品を特別に展示している。会員とゲストは、10月24日まで、プライベートメンバーズクラブ内に展示されたハーストの彫刻作品を見ることができる。
ハーストは今回のプライベートなプレゼンテーションのために、未公開の作品を厳選。東アフリカ沖の架空の難破船から出土した彫刻遺物を展示している。ロンドンで最も象徴的なメンバーズクラブの中心で文化と創造性を祝うことができる展示だ。(FAD magazine)
NFT
▍サザビーズ、デジタルアート専用プラットフォーム「Metaverse」を開設。
サザビーズは、デジタルアートのコレクターを対象とした独自のプラットフォーム「Sotheby’s Metaverse(サザビーズ メタバース)」を開設した。オークションハウスのスペシャリストが厳選したNFTを提供している。サザビーズは、この取り組みを「業界初」と呼び、「サザビーズは、NFT販売の目的地となる独自のカスタムNFTマーケットプレイスを構築した唯一のオークションハウスです」とアピールしている。(artnet news)
▍ダミアン・ハーストのNFT作品を展示する画期的な展覧会を開催。
ダミアン・ハーストは、LG社とのパートナーシップにより開催される展覧会「LG x Damien Hirst: A History of Painting」で、彼の主要な作品をデジタルで再現し、LG社の有機ELテレビで展示する。本展では、ハーストの「Kaleidoscope」と「Spin」シリーズの作品を、デジタル複製品としてLGの有機ELテレビで展示するという。また、今年初めに発表されたダミアン・ハースト初のNFTシリーズ「The Currency」を有機ELテレビで展示するという。(HypeArt)
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文:ANDART編集部