2021年9月16日〜28日にかけて、クリスティーズ(ロンドン)の「Prints and Multiple」オークションがオンラインで開催。プリント作品を中心に、19世紀後半から現代に至るまで幅広い作品が出品された。本記事は落札額トップ5の作品とANDARTに関連する注目作品をピックアップして紹介。金額は1ポンド=151.01円(9月29日11:30時点)で計算。
5)エドヴァルド・ムンク《On the Bridge》
落札価格:16,988,625円(£112,500)
《On the Bridge》(1912-13年)
画像引用:https://www.artprice.com/
「ムンクの叫び」でお馴染みのノルウェー出身の画家、エドヴァルド・ムンク(1863-1944)の貴重なリトグラフ作品。この作品は、オースゴールストランという町に着陸する蒸気船に通じる桟橋の景色を描いたもの。ムンクはオースゴールストランで家を購入して制作をしていた時期があり、ムンク自身親しみのある景色である。実際、この場所と「橋」はムンクの作品によく登場し、「橋の上の少女たち」というシリーズも制作した。さらには代表作《叫び》の場面も橋の上であることからも、ムンクが強い関心を持って描いていたモチーフであることが分かる。
予想落札価格:約1,510万円〜2,265万円
4)アンディ・ウォーホル《Truck》
落札価格:24,539,125円(£162,500)
《Truck》(1985年)
画像引用:https://www.artprice.com/
ポップアートを代表するアメリカ人アーティスト、アンディ・ウォーホル(1928-1987)が4番目からトップを占める結果に。この作品は、1986年にドイツ連邦運送協会が世界会議を開くにあたって、ウォーホルに制作を依頼したもの。描かれているトラックはヨーロッパタイプのもので、1980年代にドイツでよく見られたMAN F819.361という大型トラックのモデルである。当時、物議を醸していたアメリカのポップアーティストを選ぶことは大きな決断だったというが、ウォーホル、そしてポップアートに対して肯定的であり、可能性を感じていた上での判断だったことは間違いない。
予想落札価格:約755万円〜1,057万円
3)アンディ・ウォーホル《Electric Chair》
落札価格:26,426,750円(£175,000)
《Electric Chair》(1971年)
画像引用:https://www.artprice.com/
1953年、ニューヨークのシンシン刑務所の執行室で撮影された写真を元に制作された作品。これは同年、冷戦中にスパイ行為を働いたローゼンバーグ夫妻を処刑した電気椅子である。ニューヨーク州が死刑制度を廃止した1963年、ウォーホルはこの写真を作品に使い始め、以後10年に渡って構図と色彩の研究を続けた。この「Electric Chair」シリーズは、ポップアートがテーマとする“機械的”な大量生産・消費に、ウォーホルの死への関心が結びついて表現された作品と言われている。
予想落札価格:約1,812万円〜2,718万円
2)アンディ・ウォーホル《Mickey Mouse》
落札価格:28,314,375円(£187,500)
《Mickey Mouse》(1981年)
画像引用:https://www.artprice.com/
ウォルト・ディズニーのキャラクター、ミッキー・マウスがプリントされた作品は、9枚のポートフォリオからなる「Myths(神話)」シリーズのうちのひとつ。生前、ウォーホルは幼い頃からウォルト・ディズニーに魅了されており、自身のアーティストとしての形成にも影響を与えたと語っている。アメリカを代表するスーパースターを使用した、キャッチーでウォーホルらしい作品だ。
ミッキー・マウス(ネズミ)と関連して、ウォーホルが「牛」をモチーフにした珍しい作品《Cow》を制作していたことはご存知だろうか。
予想落札価格:約1,510万円〜2,265万円
1)アンディ・ウォーホル《Queen Elizabeth II, from: Reigning Queens》
落札価格:32,089,625円(£212,500)
《Queen Elizabeth II, from: Reigning Queens》(1985年)
画像引用:https://www.sothebys.com/
「Reiging Queens(統治する女王)」シリーズより、エリザベス女王2世のポートレート作品が本オークションのトップに。このシリーズは他にもオランダ、デンマーク、エスワティニ王国(元スワジランド王国)の3人の女王が含まれている。マリリン・モンローやエリザベス・テイラー、毛沢東など「指導者」や「有名人」などのテーマで描かれた作品は、ウォーホルの中でも一際強い存在感を放ち、常に注目の的だ。特に、このビビットなピンクで描かれたエリザベス女王2世は、女性が持つパワーを可視化したような力強い作品である。
ANDARTでは、エリザベス・テイラーを描いたポートレート作品《Liz》を取扱い中。
予想落札価格:約1,510万円〜2,265万円
ANDART関連作品が大好評の結果に!
アンディ・ウォーホル《Tomato Soup, from: Campbell’s Soup I》
落札価格:16,044,812円(£106,250)
《Tomato Soup, from: Campbell’s Soup I》(1968年)
画像引用:https://www.artprice.com/
アンディ・ウォーホルと聞いて、真っ先にこのキャンベルのスープ缶を思い出す人も多いのではないだろうか。なかでも「Campbell’s SoupⅠ」シリーズは、異なる10種類のキャンベルのスープ缶を描いた10枚組のポートフォリオで、この作品は「TOMATO」を描いたもの。予想落札価格の約755万円〜1,057万円を大きく上回り、全体の7番目に。ウォーホル及びキャンベル・スープシリーズの人気の高さが窺える結果で今回のオークションは終了した。
ANDARTでは、こちらと同シリーズの「PEPPER HOT」を取扱い中。
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文:ANDART編集部